8年ぶりの9秒台が示す桐生祥秀のリアル かつての「天才スプリンター」から「勝負師」へ
日本人初の9秒台ランナーが再びその価値を示す
洛南高校時代に10秒01を記録し、2017年には日本人として初の9秒98をマークした桐生。その後は度重なるケガや体調不良、フォーム修正の苦闘により、表彰台から遠ざかる時間が続いた。だが30歳を目前にした2025年、再びトップスプリンターの座へと駆け上がってきた。
「個人(種目での出場)も久々なので、今年のレースの最高(の力)を出せれば、しっかりラウンドを踏んでいけると思っています」
東京での世界陸上。桐生にとって “時差のない地元開催”は、調整面でも精神面でもかつてない好条件となる。そして「9秒99」という自信を手にした今、「通過点」としてこの舞台に挑もうとしている。「かつての名スプリンター」ではなく、「現在の勝負師」として。
「桐生=9秒台」は、過去の話ではない
そこに8年ぶりの9秒99で戻ってきたのが桐生である。この記録が特別なのは、「かつて速かった選手」が一過性の奇跡で出したものではないという点だ。2025年のシーズンを通じて練度を上げ、実戦の中で着実にタイムを縮めた結果でもある。桐生自身も「自己ベスト更新」に固執しているわけではなく、「勝負できる位置」に身体の状態を戻すことに集中してきた。世界陸上に向けて、「自らに期待することは何か」と問われた桐生は、こう答えた。
「より一層活躍することじゃないですか。やっぱり桐生祥秀という名前を広めるために、この大会はすごく大事だと思います」
自国開催の世界陸上において、男子100mは多くの注目を浴びるレースとなるだろう。桐生にとっても、ベテランと呼ばれる年齢ではあるが、その走りに終焉のムードはない。むしろ「もう一度始めるための勝負」――そんな気迫が、スタートラインから漂ってくる。