最年少ヒロイン、日本のメダル候補、世界の怪物たち――世界陸上・注目トピックス5選
世界新記録の瞬間をその目で。期待がかかる有力選手たち
まず、一番に挙げたいのが、男子棒高跳のアルマンド・デュプランティス(25歳・スウェーデン)。現在の世界記録保持者(6m29)で、年齢別でも多くの世界記録を持っている、棒高跳界はもちろん陸上界全体で見ても最もスーパーなアスリートの1人と言えるだろう。24年のパリ五輪で6m25で優勝すると、2025年の世界陸連コンチネンタルツアー・ゴールドのハンガリーGPでは、自己記録をさらに伸ばす6m29で優勝。東京2025にもその勢いを引っ提げての出場となる。前人未到となる6m30超えの大記録が、この東京で現実のものとなるか、要注目だ。
2人目は、男子砲丸投げのライアン・クルーザー(32歳・アメリカ)。投てき距離23m56の世界記録保持者であり、16年リオ大会から五輪を3連覇、世界陸上も22年・23年を連覇するなど、世界大会では向かうところ敵なしの圧倒的強さを誇っている。今シーズンはこれまで目立った成績は残していないが、今大会では世界陸上最多タイとなる3連覇を狙ってくるだろう。
3人目は、男子400mハードルのカールステン・ワーホルム(29歳・ノルウェー)。21年の東京五輪の金メダリストで、この時マークした45秒94の世界記録は今も破られていない。24年パリ五輪では銀メダルとなったが、今シーズンはここまで世界ランク1位を保持。ゲンの良い東京・国立競技場で東京五輪の再現が見られる可能性は十分にある。
海外女子では、走高跳のヤロスラワ・マフチフ(23歳・ウクライナ)を挙げたい。24年7月にそれまでの世界記録を37年ぶりに更新する2m10を記録すると、翌月のパリ五輪でも金メダルを獲得した。ウクライナの妖精とも呼ばれ、モデル活動も行っているという180cmの長身と長い手足が躍動するその姿は、フィールドで人一倍目を引くに違いない。
日本選手で忘れていけないのが、世界記録保持者である男子20km競歩の山西利和(29歳・愛知製鋼)だ。また、35km競歩には今年エヴァン・ダンフィー(34歳・カナダ)に抜かれるまでは世界記録保持者だった川野将虎(26歳・旭化成)もいる。世界記録更新という面では、まだ暑さの厳しい9月の東京では、コンディション的に厳しい面もあるが、ハイレベルな争いに期待したい。
世界陸上は世界中からトップレベルの選手が集結するだけに、今回ピックアップした選手以外でもあっと驚くような記録が生まれる可能性は高い。どの競技も期待してその時を待ちたい。
無観客の東京五輪を経て、いよいよ大観衆で埋まる“新”国立競技場
東京五輪は、この国立競技場での初の国際ビッグイベントとして大いに盛り上がるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で開催が1年延期。そして、無観客での開催となってしまった。シーンと静まり返ったスタジアムで、選手たちの声が響く様子をテレビ等で観たことが印象深く残っている人も多いだろう。
だが、この時テレビ等の画面を通して見た国立競技場の観客席が一般的なスタジアムの無観客の様子とはちょっと違ったと感じた人も多かったのでは。国立競技場の観客席は、「白」「黄緑」「グレー」「深緑」「濃茶」の5色で構成されており、これらのアースカラーをモザイク状に配置することで、森の木漏れ日をイメージした景観を創出しているとのことだが、設計者の隈研吾氏は、空席が目立つことを防ぎ、楽しさや賑わいが感じられるようなデザインに、とも考えたそう。まるでコロナ禍での無観客開催を予見していたかのようだが、設計はコロナ禍のずっと前なので、その発想がまさしく功を奏したということなのだろう。
国立競技場の収容人数は67,750席。開催を目前に控えた現時点でかなりの前売りチケットが売れており、セッションによっては完売となっているものもある。今度こそ、観客で膨れ上がるスタンドを見ることができるだろう。東京五輪で国立競技場を経験した選手たちも、2021年とは全く違う光景と大声援の中、競技に挑むことができるはず。満員のスタンドが放つエネルギーが、選手たちを後押ししてくれるに違いない。
(企画・編集/リファイド)