週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

749日ぶり勝利の投手・大谷翔平が語った残す課題とは? 自らのボブルヘッドデーで逆転の口火を切るなど投打で躍動

丹羽政善

8月27日(※日時はすべて現地時間)のレッズ戦に先発し、749日ぶりの勝利を挙げた大谷翔平 【Photo by Luke Hales/Getty Images】

この1勝はどんな意味を持つのか?

 球数は3回を終えて59球。これでは五回を投げ切るのは、難しいかもしれない――。誰よりもそれをマウンド上の大谷翔平自身(ドジャース)が、感じていた。

「今日に関してはちょっと球数もかさんでいるので、五回投げ切れるかどうかギリギリのところだった」

 その3回まで9つのアウトのうち7つが三振。長いイニングを投げるには、決して効率的とはいえないパターン。これまでとは配球を変え、この日は全球種の中でカーブが最多の23球(26%)。リハビリの一環ではあったものの、よくも悪くも効果的で、カーブで4つの三振を奪っている。「(今日のテーマとして)カーブとスプリットを多めに投げるというのは、もともと決めていた」そうだが、結果として、目標としていた五回を投げ切ることが微妙になったのは、皮肉でもあった。

 五回という目安は、単にリハビリの一過程ではなく、勝ち投手の権利に関わってくるからでもあるが、そもそも相手先発のニコラス・ロドロが快調にゼロを並べ、四回表を終わってドジャースは1点のビハインド。仮に五回を投げきったとしても、勝ち投手の権利を有して、リリーフにバトンを託せるかどうか、不透明だった。

 ところが四回裏、それまでパーフェクトだったロドロから大谷が右前安打を放つと、1死からポテンヒットが2本続いて満塁。その後、今週月曜日に復帰したキケ・ヘルナンデスとダルトン・ラッシングに適時打が出て鮮やかに逆転。4対1となって、大谷にとっては2023年8月9日以来となる勝利が見えてきた。
 もっともメジャーにおいてあまり勝敗は、評価として重視されない。試合後のお祝いも「いつも通り」と大谷。それが投手の能力というより、運、不運に左右されうるからだ。極端な例だが、味方が打てなければ、8回1失点でも負け投手になる。一方、小笠原慎之介(ナショナルズ)がメジャー初勝利を挙げたときのように、4球で勝ちが転がり込むこともある。

 大谷も、「勝ち星は打線との兼ね合いがあるから、あんまり気にしてもしょうがない」と話したが、2度目の手術からの復帰。本人曰く、「本当に元通りに投げられるようになるのかな、という不安みたいなものはあった」という中での初勝利。もちろん、ドジャースのユニフォームでの初勝利でもあり、バックグラウンドを考えれば、ただの1勝ではない。大きな節目であり、2度目のトミー・ジョン手術を克服したという証なのだ。実際、五回を投げ切ったときの大谷は、何かを達成したときのような、充実感を表情に漂わせている。

 ところが、この1勝はどんな意味を持つのか? という問いに対する答えは、あっさりしたものだった。

「前回と前々回、5イニングを投げ切りたいなという中で、球数もかさんで、ヒットも打たれて、投げ切ることができなかったので、今日は改めて、五回まで投げ切ったというところが、一ついいことかなと思っています」

 地区優勝をパドレスと僅差で争っているいま、自分のことに安堵というよりは、チームが優先。「自分の役割としては、与えられたイニングをしっかり投げ切って、勝てる確率を少しでも上げ、ブルペンの負担を減らすこと」。大谷はそれを目標にマウンドに上がり、リードしてマウンドを降りたことに安堵した。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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