週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

ドジャース、ムーキー・ベッツに独占インタビュー 「データよりも大切なもの」イチローと重なる野球観とは?

丹羽政善

大谷翔平とともにドジャースを牽引するムーキー・ベッツ。イチロー氏の話をきっかけに、ベッツの野球観について聞いた 【撮影:丹羽政善】

 話は去年8月――ドジャースのセントルイス遠征まで遡る。

 練習前、少し早めにフィールドに姿を見せたムーキー・ベッツは、カージナルスの打撃練習を見つめていた。カージナルスは打撃練習のとき、トラックマンのデータをセンターの大型モニターと連動させ、1球1球、ランチアングル、打球初速、飛距離などを表示している。

 ベッツに後ろから、「ああいう数字を気にしている?」と声をかけると、「自分の数字は、ことごとく下位だから、まったく気にしない」と振り向きながら苦笑した。

「打球初速が速いからといって、必ずしもヒットになるわけじゃないし」

 かつて、同じような言葉を聞いたことがある。それを口にしたのは、イチローさん(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)だった。

ベッツに聞いたイチローさんの印象

 2017年7月、ちょうどSTATCAST(メジャーリーグ独自のデータ解析ツール)のデータが徐々に浸透し、打球初速や打球角度を選手が口にし始めていたが、イチローさんは苦々しい思いで、その流れを見つめていた。

「(スイングスピードを速くするだけなら)頭を使わないやつにもできる」

 さらにこう言ったのだった。

「スイングスピードや、いま(球場によっては)打球のスピードが出るところもあるけれど、あんなこと、なんの役にも立たないことかがわかるわけだよね。やっている選手にとっては」

 そのことをベッツに伝えると、「えっ、イチローが、そんなことを言っていたの?」と興味を示した。

 残念ながら、それからすぐに練習が始まったため、会話は中断。その後、ゆっくり話す機会がないまま、1年が過ぎた。

 先月、ニューヨーク州クーパーズタウンで米野球殿堂入りセレモニーが行われ、イチローさんのユーモア溢れるスピーチが話題になったが、先週月曜日、デンバーでベッツと雑談しているとき、その話になった。

「映像を見たわけじゃないけど、すごいユニークなスピーチだったって聞いた。でも、驚かないかな。イチローを知っている人はみんな、『あいつは、ユーモアのセンスがあって、野球に対してストイックに見える反面、話をするとすごい面白い』って言うから」

 そのベッツに、現役時代のイチローさんはどう映っていたのか? ベッツは2011年にドラフトされ、2014年にメジャーデビュー。同時期にプレーしていたことになるが、「ほとんど接点はない」と振り返った。「自分がレッドソックスでデビューしたとき、イチローはヤンキースにいたけど、話をした記憶はない」。

 しかし、「はっきり覚えていることがある」という。

「やはり、広角に打ち分ける技術、バットに当てる技術は、芸術的だった」

 イチローさんが打撃練習を始めると、思わず見入った。

「やろうとしていることに明確な意図が感じられたし、何球も連続でスタンドに打球を放り込んでいた。彼がもし、本塁打を狙っていれば、30本は打てたと思う」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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