【8月集中連載】広島“街なかスタジアム”誕生秘話

新スタジアムは地域経済に何をもたらしたのか? 【8月集中連載】広島“街なかスタジアム”誕生秘話(29)

宇都宮徹壱

「このスタジアムで、どんなことができるのか」

国内のサッカースタジアムでは最大級の大きさを誇るEピースの大型スクリーン。実はサッカーの試合以外でも、さまざまな場面で活用されている 【宇都宮徹壱】

 森重に与えられたミッションは「スタジアムの価値を最大化して利益をつくる」こと。街なかにスタジアムを建設したことで、単にサッカーの試合開催のみならず、サッカー以外での活用による「にぎわいの創出」も求められている。

「スタジアムがオープンして以降、さまざまなイベントやパーティーで活用したいという声をいただきました。そうしたご要望に、ひとつひとつ答えていく中で、われわれも経験を積んできたわけですが、どちらかというと受け身となることが多かった。今後は『このスタジアムで、どんなことができるのか』をゼロベースで見直し、こちらから積極的にアピールや提案をしていこうと思っています」

 そう語る森重だが、すでに興味深い実績を残しているのも事実。昨年には医療関係の学会や地元企業の研修会などが、試合がない日のEピースで開催されている。

「学会のほうは600人規模。通常の会議室では収まらないので、スタジアムの大型ビジョンで手術の映像を見せながら行われました。企業研修についても、開放的な空間で開催したいという希望をいただき、8000人規模を2回に分けて行いました。スタンドは全面屋根で覆われていますので、雨天の場合でもまったく問題ありません」

 ちなみにEピースの大型スクリーンは、国立競技場とほぼ同じサイズの9.6×29.6メートル。国内のサッカースタジアムでは最大級である。その画面いっぱいに手術の模様が映し出されるというのは、さぞかしインパクトのある光景だったことだろう。

 森重によれば、すでに社内の若手メンバーが中心となって、地元の団体と連携しながらコミュニティづくりを支援するプロジェクトをスタートさせているという。「今後は地域の活性化を目的に、このスタジアムを交流や発信の場としていきたいと考えています」とは当人の弁。単に収益を上げるだけでなく、地域のにぎわい創生においても、街なかスタジアムへの期待と需要はさらに高まっていくはずだ。

 サッカースタジアム建設の議論で、必ず出てくるのが「年間20試合しかないサッカーに税金を投入するのは論外」という反対意見。そうした固定観念への力強い反証としても、Eピースは今後さらに全国的な注目を集めることだろう。

 のみならず、将来的なスタジアム建設を目指している他のJクラブや自治体にとっても、広島の街なかスタジアムは良きロールモデルとなるはずだ。

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※文中敬称略

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)。宇都宮徹壱ブックライター塾(徹壱塾)塾長。

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