設計者が語るエディオンピースウイング広島の斬新さ 【8月集中連載】広島“街なかスタジアム”誕生秘話(27)
カップホルダーに注がれた細部への「こだわり」
「席を立ちやすくするために、横列16席並びにしました。これであれば、真ん中に座っていても『ごめんなさい』が7人で済みます。前後の幅は85センチ。国立競技場は81センチなんですけど、この4センチの違いは意外と大きいんですよ。座席の幅は1マス50センチを確保。そのために今回は、座席を新たに開発しました」
Eピースの座席の成形を担ったのが、ベガルタ仙台の胸スポンサーとしても知られる、アイリスオーヤマ。何度も試作品を作っては検討し、長時間座っていても疲れを感じさせない座席を金型から作成したという。そのこだわりは、付属品であるカップホルダーにも注がれることとなった。
「よく、斜めに設置されたカップホルダーを見かけます。それだと、ビールが満杯だったらこぼれてしまうので、まっすぐにしてあります。それから、前の席にロングヘアの人が座った場合のことも考えました。後ろ髪がビールに触れてしまわないように、何度もテストをしてもらって、カップホルダーの位置を決めたんです」
まさに「細部に神は宿る」。伊藤はプロジェクトが完了して以降も、私費で広島を訪れては、いちサッカー消費者としてEピースの使用感を確認している。また、SNSでの反応も、逐一チェックしているそうだ。その中でも、特に感銘を受けたのが、昨年にアウェイで来場した、柏レイソルサポーターのこんなポストだったという。
《夕焼けになってきたら広島のゴール裏左右が鳩の羽に見えました。ああこれがPeace Wingだなぁって感動しました。悶々とすることたくさんあるけど、この広島の地で平穏にサッカー観戦できることは幸せ。》
「何も説明していないのに、こちらの意図を感じ取って発信してくれたことに、建築の力を実感しました」と、感慨深げに伊藤は頷く。
かくして、Eピースの建設をめぐる物語も、いよいよエピローグに突入する。次回以降は、このスタジアムが広島という地域に、そして日本サッカー界や日本社会に及ぼす影響について、関係者への取材から考察することにしたい。
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