ポスティングシステムの“抜け穴”をどう見るか? プロ野球発展のために改善すべきNPB制度
制度上は落ち度がない“出戻り”NPB復帰
8月25日時点でゲーム差は0.5。貯金はソフトバンクの27に対し、日本ハムは26だ(※今季の成績は同日時点)。「1勝」が重くのしかかる展開となっている。
首位ソフトバンクの強さは、12球団随一の資金力で補強と育成を両立させていることにある。特に際立つのは前者だろう。
投手では開幕からローテーションの中心で回る4人のうち、二人がNPBの他球団出身だ。
有原航平:20試合、10勝7敗、防御率3.22、QS15回
上沢直之:17試合、9勝6敗、防御率3.09、QS12回
(※QS=クオリティスタート)
有原は2023年、上沢は今季ソフトバンク入団を決めた際、物議を醸したのは記憶に新しい。ともに日本ハムからポスティングシステムでMLB球団に移籍したが、有原は2年、上沢は1年をアメリカでプレーした後、MLBで「フリーエージェント(FA=自由契約)」となってソフトバンク入りしたからだ。
「ポスティングで行って1年でダメでソフトバンクに行く、この流れはやめてほしいっていうのは(12球団監督会議で)言いました」(2025年1月21日「スポーツ報知」より。カッコ内は筆者)
上記の苦言を呈したのは、上沢の獲得に動いた古巣・日本ハムの新庄剛志監督だった。
2023年オフ、日本ハムは上沢をポスティングにかけ、マイナー契約を結んだタンパベイ・レイズから受け取った譲渡金は約90万円。球団は好意的に“挑戦”へ送り出した格好だ。
だが上沢はレイズでメジャー昇格を果たせず、2024年途中に移籍したボストン・レッドソックスで2試合の登板後にマイナーリーグ降格。40人のロースターから外れてFAになり、NPB復帰を決断。古巣の日本ハムではなく、ソフトバンク入団を決めた。心情的に考えれば、新庄監督がやり切れないのは当然だろう。
一方で選手の立場からすれば、何も落ち度はない。制度上、FAになれば自由に契約先を選べるからだ。複数球団による争奪戦の末、有原は3年総額15億円、上沢は4年総額10億円規模の契約をソフトバンクと結んだが、好条件を選ぶのはどんな職業でも普通の話だろう(※金額はいずれも推定)。
ただしプロ野球選手の契約には、会社員とは異なる規定がある。球団のみが契約の更新を決められ、選手は自由契約にならなければ自分で移籍先を決められないという「保留制度」の下に置かれているのだ。
ポスティング制度の不備にファンも疑問視?
じつは、FA制度は議論不十分のまま導入され、当初から「MLBにスター選手を根こそぎ持っていかれるのでは」という懸念があった(詳細を知りたい方は、拙著『プロ野球 FA宣言の闇』を参照)。
そうした経緯もあって後に定められたのが、譲渡金の発生するポスティングだった。
NPB球団はFAによる移籍では選手を海外に“タダ”で流出させるのに対し、ポスティングが成立すれば収益が入る。西武は2006年オフ、松坂大輔がレッドソックスに移籍した際に5111万1111ドル11セント(当時のレートで約60億1000万円)の譲渡金を得て、その一部を本拠地球場の改装に充てた。
対して選手にとっては、FAより早くMLBに行けることがポスティングのメリットと言える。
過去、NPBでは41選手がポスティングで入札にかけられている。以下の表は同制度で海を渡り、NPBに“出戻り”した選手たちだ。
導入から25年以上が経ち、冒頭で紹介した新庄監督の意見のように、ポスティングの歪なあり方を指摘する声が大きくなっている一因は、NPBに早く復帰する選手が増えているからかもしれない。
繰り返すが、ポスティングはMLB球団への移籍を目的とし、選手を移籍させる制度だ。選手が「海外FA権」を取得する前に入札にかけ、まとまれば「自由契約」にして移籍できるようにする。
制度の不備が表れるのは、選手のNPB復帰時だ。NPBでFA権を行使するのとは異なる状態にもかかわらず、MLB球団からリリースされてNPBに戻ってくる際、日本国内でも「FA(自由契約)」の扱いになる。
そのため、「有原式FA」や「上沢式FA」とネット上で揶揄されている。現行の規定上、選手が自由に移籍先を選ぶことは何の問題もないが、古巣の球団やファンが心情的に受け入れられない制度となっているのだ。