攻守を司る「最後の砦」 福澤達哉が語るアウトサイドヒッターの指命
このポジションで長きにわたり活躍した一人が、福澤達哉だ。小学4年からバレーボールを始め、大学1年で日本代表に選出、08年北京五輪にはチーム最年少で出場。その後も国際大会で最優秀選手賞やベストスパイカー賞を受賞するなど、国内外で輝かしい実績を残し、ブラジルやフランスのリーグでも活躍した経歴の持ち主である。
福澤は、アウトサイドヒッターの役割を「最後の砦」だと語る。時代とともにバレーボールが変遷する中で、アウトサイドヒッターが果たすべき役割とは何か。そして世界選手権に臨む後輩たちの強みはどんなところにあるのか。福澤が語る、アウトサイドヒッターの指命に迫る。
攻守の「バランス」を追求するアウトサイドヒッター
これまでは同じアウトサイドヒッターでも、守備型・攻撃型と区分して配置されるケースが多くみられました。でもサーブの戦術が高まる今は、完全に二分化するのではなく、攻撃と守備のどちらもバランスが求められるようになっています。とにかく攻撃力があればいいというだけではなく、レシーブ力も備えた石川祐希選手や髙橋藍選手の存在も象徴的です。
とはいえ、この「バランス」が実に難しい。日本代表に選出された10代の頃の私はまず、高くジャンプして得意なスパイクで勝負する。オフェンス面に重きを置き、普段の練習ではスパイク決定率で必ず5割を超え、国際試合でもその強みを発揮する。一方で、サーブレシーブは永遠の課題でもあったので、まずはサービスエースを取られないように、きっちりセッターへ返すよりも上へ上げる。全体練習後の自主練ではスパイク以上に長く時間を費やしてきました。
大きな転機になったのは、2016年から東京五輪へ向かうまでの4年間。高い打点から放たれ、直線的に向かってくるスピードのあるフローターサーブに、どう対応するか。私だけでなく日本代表としての課題を克服すべく、オーバーハンドでのサーブレシーブを徹底的に磨きました。
得意なプレーを伸ばすよりも、ウィークポイントを修正するほうが大変です。試合になればサーブレシーブが安定せず、どうやって改善するかと考えすぎるあまり、マイナスに引っ張られてスパイクの調子が悪くなることもある。いかに切り替え、割り切ってプレーするか、悩んで苦しんだ時期もありました。特に20代の頃は「自分が決めなければ勝てない」と思っていたし、そういう存在になりたいという思いも強かった。
でも30代になり、東京五輪を目指す時、石川や柳田(将洋)、西田(有志)といった存在もできて、「自分が無理に決めなくてもいい」と考え方も変わり、「じゃあ自分は何で生き残るか」と考え、たどり着いたのがオーバーカットでした。環境や置かれた状況の変化で、やるべきことの優先順位も変わる。若い頃は身体能力を活かしたオフェンスでアピールをして、そこから足りないものを埋めていくことが、私の勝負の形でした。
日本の「双璧」 石川祐希と髙橋藍に共通する凄さ
チームを引っ張り、派手なプレーで勝たせるタイプもいれば、プレーや存在は地味だけれど確実に役割を果たし、チームを決して負けさせないタイプもいる。一見すれば違うタイプに見えますが、チームにとって欠かせない存在であるということに代わりはありません。日本代表に目を向ければ、ネーションズリーグでの髙橋藍選手もまさにそうでした。
日本の生命線であるサーブレシーブやレシーブの技術や安定感に加え、経験を重ねて磨いてきた攻撃の種類や選択肢。攻めるべきところは攻め、つなぐところはつなぐ、という状況判断も、実に的確でした。ペルージャでプレーし、世界での勝ち方も知る石川選手という軸がある中で、髙橋選手ももう一方の軸として、まさに日本の双璧をなしていました。
石川選手も髙橋選手も、試合の最も重要な局面や勝負所で一段ギアを上げられる選手で、彼らの凄さはもはや説明不要です。「すべてのプレーを見て下さい」という言葉に尽きるのですが(笑)、勝負所でのスイッチの切り替えやギアチェンジを見ていただけると面白く、より凄さが伝わります。ゲームチェンジが起こる瞬間を逃さず、その中心で流れを変える。それもまた、優れたアウトサイドヒッターに共通する要素です。