セッターは「人と人をつなぐ仕事」 バレー・竹下佳江が語る“コートの司令塔”論
主将を務めた2008年北京から3大会連続で五輪に出場し、12年のロンドンでは日本女子として28年ぶりの銅メダルを獲得。華々しい経歴に見えるが、00年シドニー五輪の切符を逃した際は、まるで「159センチの小柄なセッター」が敗因であったかのようなバッシングを受け、一度はコートを離れるほどの心の傷を負った。
それでも再びコートに戻り、日本代表の司令塔として君臨した竹下がセッターとしてこだわったのは「結果を残す」こと。誰にも負けない技術を育むべく重ねた練習と、個性豊かなスパイカーたちとのコミュニケーション。
常に全力で、誰より真剣に世界と戦ってきた竹下の「セッター論」とは。現在、過去、そしてこれから――。間もなく始まる世界選手権に向けた期待と共に、竹下が語った。
スパイクが打ちたかった自分を変えた“セッターの魅力”
子どもの頃から『アタックNo.1』を見ていたので、スパイクが打ちたいのに、求められるのは「つなぐ」こと。中学時代なんて、先生から「トスが雑だからセッターをやめろ」と言われたこともあります。悔しいですし、正直に言えば、若い頃はセッターの面白さや魅力なんて、全くわかりませんでした。
でも、指摘されて、その悔しさがあったからこそ頑張って、いろんな経験を重ねてきました。その中で、スパイカーが気持ちよく打ってくれたり、ゲームメイクが上手にできて、勝つことができれば何より楽しいと思えるようになりました。「針に糸を通すような攻撃」と言うんでしょうか、スパイクとトスの「点と線」がつながって、得点を取れたときは最高に気持ちよかったです。
セッターによって変わる「ゲームメイク」の哲学
今の女子でセッターの注目は、今年のネーションズリーグにメインで出場したセナ(関菜々巳)とつかさ(中川つかさ)です。セナはとても頭のいい選手なので、今までは頭の中で自分の答えをつくりながらプレーしていました。ただ、それが良さである反面、少し頭でっかちになってしまって苦しんでいる場面が何度もあったんです。でも昨季にイタリアへ行って、世界のトップたちとプレーする中で肩の力が抜けたように見えますし、代表でトスを上げ続けてきた自信が表れるようになりましたね。
パリ五輪から監督やメンバーが代わって同世代が増えたことや、年下の(石川)真佑がキャプテンになったことも重なって、「自分がこのチームを支えたい」という気持ちも今まで以上に感じられるようになりました。
つかさは学生時代から輝かしい戦績を残してきた、いわばエリート。勝負所のポイントや「この1点は確実に取らなければいけない」というところは外さないんですよ。ミドルブロッカーの使い方に関しては少し課題もありますが、20点以降のゲームメイクに関しては、決めきれる選手をちゃんと見極めて上げられるのも、彼女の強みです。
セッターによってゲームメイクは違うし、何が正解というのはないんですよ。それぞれの持ち味はありますが、私自身は基本的にセットの最後のポイントはスパイカーに決めてほしいし、決めさせたいと思うセッターでした。最後の1点を「自分が決める」と待っているスパイカーを差し置いてセッターがツーアタックで決めるのは好きじゃない(笑)。「1点は1点だから取れれば何でもいい」と言う人もいるので、考え方はあくまで人それぞれなんですけどね。
これからバレーを見るファンの方には、「スパイクを打つときにブロックが何枚だったのか?」「セッターの何気ない動きや確認作業で、ブロックが2枚から1枚に減ったのではないか?」「セッターのおかげでノーマークになったんだ」などと想像しながら見てもらえると、また違う面白さも味わえるのではないでしょうか。