欧州サッカー25-26シーズン、今季はここに注目せよ!

プレミアリーグ「ビッグ6」の補強診断 多くのクラブが高評価も、誤算があったのは…

松野敏史

アーセナルは懸案のCFに、2シーズン連続ポルトガルリーグ得点王のギェケレシュを補強。リバプールやマンUも前線の核になり得るタレントを手に入れた 【Photo by Stuart MacFarlane/Arsenal FC via Getty Images】

 世界最高峰のプレミアリーグをけん引する「ビッグ6」は、それぞれこの夏にどんな陣容の入れ替えを行ったのか。狙い通りの補強で戦力アップを実現できたか、はたまた人員整理は順調に進んでいるか。リーグ開幕直前までの各クラブの動きを整理し、ここまでの戦力強化をS、A、B、C、Dの5段階で評価した。
※1ポンド=約200円

ヴィルツをどのポジションに置き、どんな役割を担わせるか

補強の目玉はヴィルツ。バイエルンなどとの争奪戦を制して射止めた超逸材は、王者リバプールにどんな化学反応を起こすのか 【Photo by Carl Recine/Getty Images】

【リバプール】
補強診断:S


 モハメド・サラーとフィルジル・ファン・ダイクとの契約を更新して攻守の絶対的主軸を堅持すると、総額3億ポンドに迫る資金を投じた超大型補強を断行。プレミアリーグ連覇とチャンピオンズリーグ制覇が十分に可能な戦力を整えた。

 トレント・アレクサンダー=アーノルドがレアル・マドリーに去った右SB(サイドバック)にジェレミー・フリンポン、アンドリュー・ロバートソンが衰えを露呈した左SBにミロシュ・ケルケズを迎えて懸案のポジションの強化を図ると、サラーへの依存が大きかった前線には、ドイツの至宝フロリアン・ヴィルツを英国史上最高額の移籍金1億1600万ポンド(インセンティブ込み)で獲得し、さらに新進気鋭のCF(センターフォワード)ユーゴ・エキティケの引き抜きにも成功した。

 昨夏に契約合意して今夏に加入のGKジョルジ・ママルダシュビリを含め、総額2億9350万ポンドというプレミアリーグでも断トツの補強費で大幅な陣容のクオリティーアップを果たした王者は、さらに貪欲にニューカッスルのCFアレクサンデル・イサクやクリスタル・パレスのCB(センターバック)マーク・ゲイといったトップタレントを狙う。

 一方で、ルイス・ディアスをバイエルンに放出し、ダルウィン・ヌニェスはサウジアラビアのアル・ヒラルへ売却。クィービーン・ケレハーとジャレル・クアンサーの生え抜きも手放し、移籍収支の改善にも余念がない。

 新戦力をチームにどう取り込み、どのように機能させるのか、アルネ・スロット監督の手腕が改めて問われることになる。特に、ヴィルツをどのポジションに置いて、どんな役割を担わせるのかは、シーズンの行方を決定的に左右しうるファクターだ。

 プレシーズンマッチではCBとして好プレーを見せた遠藤航の起用法にも注目だ。

<今夏の主な移籍>
【IN】
GK ママルダシュビリ ←バレンシア(スペイン)◇
DF フリンポン ←レバークーゼン(ドイツ)
DF ケルケズ ←ボーンマス(イングランド)
MF ヴィルツ ←レバークーゼン(ドイツ)
FW エキティケ ←フランクフルト(ドイツ)

【OUT】
GK ケレハー →ブレントフォード(イングランド)
DF アレクサンダー=アーノルド →レアル・マドリー(スペイン)
DF クアンサー →レバークーゼン(ドイツ)
FW ディアス →バイエルン(ドイツ)
FW ヌニェス →アル・ヒラル(サウジアラビア)

※25年8月13日時点。INの移籍元は昨シーズンの最終所属。◇はレンタルバック。

全てのセクションにトップタレントを補強

スビメンディの加入により、中盤の構成力は大きく高まるはずだ 【Photo by Mark Leech/Offside/Offside via Getty Images】

【アーセナル】
補強診断:S


 3シーズン連続2位と優勝にあと一歩のところまで迫りながら、そのあと一歩が届かない状況を打破するため、移籍市場を奔走。GK、最終ライン、中盤、前線と文字通り全てのセクションにレギュラークラスのトップタレントを加える大規模な補強で、戦力を大きく底上げした。

 目玉は、なんといってもヴィクトル・ギェケレシュだ。チームの最大のアキレス腱で、あと一歩及ばない最大の要因とも指摘されてきたCFに、ついに一線級のストライカーを獲得した。スポルティングでの2年間で66試合・68ゴールという驚異的な数字を残したギェケレシュは、覇権奪取への切り札として期待できるだろう。

 前線には、さらにノニ・マドゥエケをチェルシーから引き抜いた。打開力に長けたウイングは、ブカヨ・サカの欠場時にそのダメージを最小限に食い止めうる実力者で、その意味でも重要なプラスアルファだ。

 中盤は、トーマス・パーテイとジョルジーニョが抜けたアンカーに、マルティン・スビメンディとクリスティアン・ノアゴーを獲得して大幅なクオリティーアップに成功した。スビメンディは欧州でも指折りの司令塔。ノアゴーも質と量を兼ね備えた優秀な「6番」で、プレミアリーグでその実力を実証済みだ。

 クリスティアン・モスケラは、契約解除で退団した冨安健洋に代わってCBと右SBにクオリティーを担保し、ケパ・アリサバラガは第2GKではもったいないほどの実力派だ。

 弱点を確実にカバーし、グレードアップを遂げたアーセナル。アーセン・ヴェンゲルが率いた2003-04シーズン以来となる悲願のタイトル奪取へ、“メイク・オア・ブレイク”の勝負のシーズンだ。

<今夏の主な移籍>
【IN】
GK ケパ ←ボーンマス(イングランド)◆
DF モスケラ ←バレンシア(スペイン)
MF スビメンディ ←レアル・ソシエダ(スペイン)
MF ノアゴー ←ブレントフォード(イングランド)
FW ギェケレシュ ←スポルティング(ポルトガル)
FW マドゥエケ ←チェルシー(イングランド)

【OUT】
GK ネト →ボタフォゴ(ブラジル)◇◆
DF ティアニー →セルティック(スコットランド)
DF 冨安 →未定
MF パーテイ →ビジャレアル(スペイン)
MF ジョルジーニョ →フラメンゴ(ブラジル)
FW スターリング →チェルシー(イングランド)◇

※25年8月13日時点。INの移籍元は昨シーズンの最終所属。◆はレンタル元を経ての移籍。◇はレンタルバック。

新たな勝利のサイクルを開くべく大規模補強を展開

新戦力の中で一番の注目はラインデルスだろう。進化を続けるオランダ代表MFは、名将の下でさらなる飛躍が期待される 【Photo by Richard Sellers/Sportsphoto/Allstar via Getty Images】

【マンチェスター・シティ】
補強診断:A


 プレミアリーグ5連覇を逃し、チャンピオンズリーグはノックアウトフェーズ・プレーオフで早期敗退。屈辱的な結果に終わったシーズン後には契約満了のケビン・デ・ブライネが退団(ナポリへ)と、チームはひとつのサイクルを終えて過渡期を迎えている。

 新たな勝利のサイクルを開くべく、クラブはペップ・グアルディオラ監督の求めに応じる形で大規模な補強を展開。デ・ブライネが去った中盤にティジャニ・ラインデルス、ラヤン・シェルキを迎え入れ、専門家が不在だった左SBにラヤン・アイ=ヌーリを獲得。エデルソンをバックアップする第2GKには、アカデミー出身のジェームズ・トラフォードをバーンリーから買い戻した。

 昨シーズン途中の冬のマーケットでも大型補強を実行し、オマル・マルムシュ、ニコ・ゴンサレス、アブドゥコディル・クサノフ、ヴィトール・レイス(今夏にジローナへレンタル移籍)らを獲得したその総額はざっと1億8000万ポンドだった。この夏と合わせると補強費は3億ポンドを超え、陣容のグレードアップとともに世代交代も果たしている。

 レッドブル・ザルツブルクの前監督で、かつてリバプールでユルゲン・クロップの右腕だったペパイン・ラインデルスとクラブOBのコロ・トゥーレをアシスタントマネジャーに迎えるなど、コーチングスタッフも一新して就任10年目のシーズンに挑むグアルディオラが、チームをどう作り上げ、どんな逆襲を見せるか、目が離せない。

<今夏の主な移籍>
【IN】
GK トラフォード ←バーンリー(イングランド2部)
GK ベッティネッリ ←チェルシー(イングランド)
DF アイ=ヌーリ ←ウルバーハンプトン(イングランド)
MF ラインデルス ←ミラン(イタリア)
MF シェルキ ←リヨン(フランス)
MF ナイパン ←ローゼンボリ(ノルウェー)

【OUT】
GK カーソン →未定
DF レイス →ジローナ(スペイン)
MF デ・ブライネ →ナポリ(イタリア)
MF グリーリッシュ →エバートン(イングランド)

※25年8月13日時点。INの移籍元は昨シーズンの最終所属。

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著者プロフィール

『ワールドサッカーダイジェスト』誌と『サッカーダイジェストWEB』で副編集長を務め、ダイジェストWEBでは編集担当の責任者としてローンチを手掛ける。2020年4月にフリーランスのライター/編集者/翻訳者として独立。ヨーロッパのサッカー(とくにプレミアリーグ)に精通し、NFL、NBA、MLBなどアメリカのプロスポーツへの理解も深い。スポーツに限らず物事を多角的に捉え、本質を掘り下げることに興味と関心がある。

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