最下位に大敗したチームが2カ月で激変 6連勝中のJ1町田に起こっていること
2025年の町田は攻撃の「引き出し」を増やす方向で、バージョンアップを図った。もっとも取り組みが必ずしも順調だったわけではない。第10節・浦和レッズ戦(4月13日/0●1)からは3連敗を喫している。5月も1勝2分け3敗と厳しい戦績で終えた。5月31日の横浜F・マリノス戦は最下位の相手に0‐3で敗れている。シーズンの折り返しとなる第19節終了時点で、7勝4分け8敗の10位。首位との勝ち点差は「15」まで開き、優勝争いから水を開けられていた。
ただ6月に入ってから、町田は負けなしで猛追を見せている。第20節・湘南ベルマーレ戦(6月14日/2○1)をものにすると、そこから6連勝。8月10日にはJ1王者・ヴィッセル神戸を2-0で下した。順位にこそ5位だが、首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差は「4」まで縮まっている。
低迷を経て「謎の自信」が復活
「今年はあえてフラストレーションを溜めるような配置、組み合わせをして、場面場面におけるリーダーを多く作っていく狙いが一つあります。去年も一昨年も夏場に少し足踏みをした反省を踏まえて、今年はそこで強いチームを作ること、うまくいかないときに誰が何をできるかにこだわりたい」
今季の町田は布陣を[4-4-2]から[3-4-2-1]に変えた。黒田監督の副官だった金明輝ヘッドコーチがアビスパ福岡の監督に就任するなど、コーチの入れ替えもあった。隙のない守備、ハードワークといったベースの維持は前提だが、攻撃もキャンプから「ボールを持って相手の守備を崩す」ところに力を入れていた。
もっとも新たな強みを獲得していく過程で「今までの強み」も消えていた。例えば第3節・東京ヴェルディ戦(2月26日/0●1)は自陣のビルドアップを相手に狙われ、カウンターから次々にゴールを襲われた。今まで経験したことのない、守備の崩され方だった。
内容は互角以上なのに、結果が伴わない試合も多かった。主力の負傷、連戦によるコンディションの低下といった側面があったにせよ「勝負強さ」「両ゴール前での強さ」が失われていた。強みだったクロスへの対応も、一時は混乱が見て取れた。
第12節・湘南ベルマーレ戦(4月25日/0●1)で「黒田体制初」となるアディショナルタイムの失点を喫すると、その後も魔に魅入られたように試合終盤の失点が続いた。
サッカーファンならご存知のように、就任直後から町田や黒田監督への批判は根強い。「あのようなスタイルでは上積みが難しい」「大物選手が活きない」といった意見は一般的なものだった。「結果で求心力を得てきた黒田監督は、結果が出なくなれば終わり」と不吉な見立てを私に伝えた大物指導者もいた。
しかし今になってみると、苦境は「産みの苦しみ」だった。夏場の低迷を2年連続で起こした黒田ゼルビアが、今季は夏場に急浮上している。キャンプ期間中に黒田監督が「予言」していたことが具現化されている。現在リーグ戦6連勝中で、直近の4試合は相手を無失点に封じるクリーンシート。第24節・東京V戦(7月20日/1○0)は内容こそ相手ペースだったが、そんな試合をもぎ取る勝負強さも見せた。
「先に失点しなければ勝てる」「先制すれば守り切れる」といった『勝利の方程式』がよみがえっている。
林幸多郎はこう口にする。
「『謎の自信』じゃないですけど、ゼロで抑えておけば点はいつか取れる感覚がここ数試合はあります」