メジャー覇者の山下美夢有 “家族”という最強のチームの存在

北村収

お母さんとは普通の会話でリラックス

「(米ツアー参戦の)最初の頃は(日本時間の)何時になっても飛行機がついたら心配なので連絡をしてと言っていました。最近は少しは慣れましたけど」と話をしてくれたのは母の有貴さんだ。なお、逆に山下は今でも時間を気にせず連絡をしてくるそうで、「朝の3時やでと言っても、そのまま話を続けるんです」と有貴さんは笑う。「ゴルフの練習は全部主人に連絡しますが、私に電話をしてくる時は、『ママ、今日はこんなことがあったでー』、『ご飯こんなんが美味しかった』とか、景色とかの写真を送ってくれます」という。

 世界を転戦する山下も母の前では他と変わらない娘さんだ。勝負の世界の緊張感から離れた、日常の延長にある母娘のやりとりが、山下の精神のバランスを支えている。

母の日、父の日に優勝。そしてメジャーは自分の誕生日に制覇

「また思い出をもらったな」と母の有貴さんが感慨深く話す。山下は、2022年ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップでは母の日に優勝、そして2023年ニチレイレディスでは父の日に優勝、そしてメジャー初制覇となる全英(AIG)女子オープンでは自身の誕生日の週に優勝を果たしている。「なんかこういう時に優勝するんです」と父でコーチの勝臣さん。

 その“偶然”ともいえる巡り合わせに、見えない何かの力を感じずにはいられない。だが、その背景には、祝う日も、支える夜も、励ます会話も、すべてが「家族」という一本の太い絆でつながっている事実がある。

強さの根底にある家族の絆

 山下は、今回だけでなく優勝の際にはいつも“家族”への感謝をいの一番に話すのが印象としてある。筆者にも21歳になる娘がいる。だからだろうか、山下が試合後のコメントや会見でごく自然に家族の話をするたびに、その言葉にどこか心を動かされる。

 とかくコーチとしての存在がクローズアップされる父の勝臣さんだが、もちろんコーチとして支え続けることはもちろん、深夜まで付き合ってくれる安心感と信頼感が山下の支えになっているのは間違いないだろう。何気ない話ができる母、そして英国まで応援に来てくれる妹の蘭さん、さらには同じプロゴルファーの弟である勝将さん。喜びや不安、何気ない日常の出来事を分かち合える存在がいることが、世界の舞台で戦う彼女にとってどれだけ大きな支えになっているのか。

 山下美夢有の強さの根底には、そんな“家族”との揺るぎない信頼関係が、静かに、そして確かに流れている。

勝利を決めた直後の山下美夢有 【Photo by Charlie Crowhurst/R&A/R&A via Getty Images】

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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