山下の全英Vは“パワー至上主義”に一石投じる快挙 「過去の日本勢メジャー制覇と全く違う」原江里菜が解説

塩畑大輔

全英女子オープンを制した山下美夢有。自分のゴルフを徹底したことが最高の結果につながったと原江里菜プロは話す 【Photo by Warren Little/Getty Images】

 女子ゴルフの海外メジャー今季最終戦、全英女子オープンは、山下美夢有が通算11アンダーで優勝。24歳で海外メジャー初制覇を成し遂げた。今大会、U-NEXTのライブ配信で山下美夢有のラウンドに密着した原江里菜プロに、山下の勝利の要因について解説してもらった。

「自分のスタイル」を最後まで貫いた

ドライバーの飛距離があるわけではない山下美夢有。それでも海外メジャーを勝つことができた要因とは? 【Photo by Warren Little/Getty Images】

 4日未明、都内のスタジオ。解説を終え、コメンタリーブースを出てきたプロゴルファー・原江里菜の表情には、数分前までの興奮の余韻が残っていた。

「見届けさせてもらえて、本当によかったです」

 U-NEXTのライブ配信コンテンツ「日本勢密着マークチャンネル」で、3日目、最終日と山下美夢有のラウンド解説を担当。専用カメラを山下組に3台配置し、一挙手一投足を追い続ける配信で、文字通り快挙の一部始終を見届けていた。

「普通の配信とは違う見方ができて、貴重な体験でした。通常の配信だとどうしても、プレーの映し方が断片的になりますけど、密着マークチャンネルはいいところも、悪いところもすべて観ていくことができるので」

 しみじみとうなずきながら、語気を強めて言う。

「これまでの日本勢のメジャー制覇とはまったく違う意味合いが、山下さんの優勝にはある気がしています」

◇

――山下のプレーをどう見たか。

原 3日目、最終日と続けて36ホールを見たので、その間でも変化があったように感じました。初日から3日目の序盤までは、素振りの途中にボールがあるというような感じで、まったくよどみのない理想的なスイングをしていました。

 3日目の途中から、左にボールが行くのを嫌がったのか、インパクト前後でフェースを閉じきれなくなる傾向が出て、急にフェアウェーキープができなくなっていましたが、最終日にはそれも完全に修正されていました。

 そういう理想のスイングができている時のショット精度は、もう圧巻としか言いようがないのですが、もうひとつすごいなと思ったのは、スタイルがぶれていないことです。

 これだけじっくりと山下さんのプレーをみる機会はしばらくなかったのですが、国内女子ツアーでやっていた当時と比べて、まったくスタイルが変わっていないんですよね。断片的にプレーが映ってくる通常の中継や、ニュース番組で流れるハイライト映像などをみているときには、なんとなく流してしまっていたのですが、2日間続けて観たことで「間違いなく変わっていない」と確信させてもらえた気がします。

――スタイルがぶれていないことが意味するところとは?

原 ずっと以前から、海外のツアーで活躍するにはやっぱりパワーゴルフが必要、という風に言われてきました。私もスポット参戦ではありますが、海外メジャーに何度か出場させてもらって、海外勢のパワーに目を奪われて「自分もそうじゃないと」と思わされました。

 アメリカ女子ツアーに参戦した選手などは、必ずパワーゴルフ志向みたいなものを持ちますし、今の国内女子ツアーでも「いずれ世界で活躍するために」とパワーは重視されている気がします。中には、パワー志向にシフトをしようとするあまり、本来のスイングバランスを崩してしまったプロもいます。

 実際、これまで海外メジャーで優勝を果たした選手、優勝争いに加われている選手は、みなパワーゴルフへの順応がある程度できていた気がします。笹生優花さんはその最たるもので、世界屈指のパワーを持っている。渋野日向子さんもフィジカルに恵まれているし、西郷真央さん、古江彩佳さんも大柄ではないですがパワーはある。

 でも、山下さんは違う。国内女子ツアーの中でも、ドライバーの飛距離ランキングではかなり下位にいました。アメリカ女子ツアーにいけばなおさらですが、それでもまったく飛距離を求めたスタイル変更をせずに戦っています。

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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