全英女子で世界を驚かせた“日本旋風” 海外記者が日本人記者を取材?

北村収

地元の子どもたちとタッチしながら表彰式に向かう山下美夢有 【Photo by Richard Heathcote/R&A/R&A via Getty Images】

 2019年の渋野日向子以来の日本人覇者となる山下美夢有の優勝で幕を閉じた今年の全英(AIG)女子オープン。2位タイに勝みなみ、4位タイに竹田麗央が入り、日本選手たちがリーダーボードの上位を占めた。開催地であるロイヤルポースコールゴルフクラブ(ウェールズ)ではリンクス特有の風に加えて、“日本旋風”もメジャーの舞台を席巻していた。

4位タイまでに3人の日本人選手が入った 【北村収】

 現地で取材をしていると、海外メディアや記者、さらに地元ギャラリーの日本人選手に向けての関心が、日に日に高まっていくのを感じた。なぜ日本人選手はこれほどまでに強いのか。そんな声が、あちこちから聞こえてきた。

海外記者が日本人記者を取材!?

 日本人選手の出場は17人。日本のゴルフファンにとっては「たくさん出ている」と感じるかもしれないが、全体の出場者数144人の中では決して多数派とは言えない。

 それにもかかわらず、大会初日の午後、会場内にあった上位6名のリーダーボードが日の丸で埋めつくされた。その一角に名前を連ねた山下美夢有も、「メジャーで、こんなに日本人の名前が並んでいるのを見たのは初めてです」と驚きの感想を語っていた。

 ざわついていたのは日本人だけではなかった。

「Why are the Japanese so strong?(なぜ日本人はこんなに強いのか?)」

 英国でもっとも権威ある日刊紙『The Times(ザ・タイムズ)』の記者が、日本人記者にその理由を尋ねてきた。メディアセンターでは“逆取材”が始まっていたのだ。さらに、選手の名前の正しい読み方を聞かれたり、一部の記者たちは自らの原稿執筆に加え、海外メディアからの質問にも対応せざるを得ないという、珍しい“繁忙”に追われた。

初日、18番ホール近くのリーダーボードを日の丸が占拠していた 【北村収】

海外記者が日本人記者を取材!?

 今回、英国メディアから最も注目を集めている選手は、イングランドのロティ・ウォード。アマチュアとして出場した7月の欧州女子ツアー「KPMG女子アイルランドオープン」で優勝し、翌週のメジャー「エビアン選手権」では3位と大活躍。そしてプロデビュー戦となった先週の「ISPS Handa スコットランド女子オープン」では、いきなりプロとして初優勝を果たすという偉業を成し遂げた。

 ほとんどの英国メディアは彼女の動向を報じつつも、日本人選手の活躍にも大きく注目している。

 イギリス最大のスポーツ専門メディア『Sky Sports(スカイ・スポーツ)』は、大会初日に「Japanese stars dominate opening day(日本の選手が初日を支配)」との見出しで速報を配信。大会開始からわずか数時間で、日本人選手がメジャー大会の主役となっていることを世界に伝えた。

 大会公式インスタグラムでも、「A strong Japanese presence at the top of the leaderboard after round one(初日終了時点でリーダーボード上位に日本勢の存在感)」と投稿され、SNS上でも“日本旋風”が広がっていった。

大会公式インスタグラムで紹介された一人である竹田麗央。初日、2日目、3日目と山下と同組でラウンド。写真は3日目のホールアウト後 【Photo by Warren Little/Getty Images】

地元ギャラリーが日を追うごとに日本人選手に関心を高める

 日本人選手の活躍に、地元ギャラリーも興味を示し始めていた。特に2日目からトップを守り続けた山下に対しては、日本から来たギャラリーだけでなく地元ギャラリーの関心が日に日に高まった。

 “ラブリーショット”と山下のショットに感嘆していたイングランドのブリストルから来たギャラリーに山下のプレーの感想を聞くと、「素晴らしいプレーですね。ショットもすごいけど、コース攻略がうまくできている」と、目の肥えたメジャーのギャラリーも納得の様子だった。

 ウェールズの方に山下のことを知っていたかと尋ねると、「知らなかった。でもどんな時でも冷静に正確なショットを打っていて、エクセレントだね」と感想を語っていた。

 最終日になるとますます地元のギャラリーが増え出した。イングランドのブライトンから来たというギャラリーは、「ボールの弾道が低いのが良いですね。高くしないので風の影響を受けないんです。だからこの強風でも彼女が良いスコアを出せるのです」と解説をしてくれた。実は山下はドライバーのロフトをやや立てたりしていたという。メジャーはギャラリーの目も正確だ。

 最終日のバックナイン、16番ホールを終えた時点で山下美夢有が2位に3打差をつけると、ギャラリーからは “YAMASHITA, Come on!” の声が頻繁に聞こえるようになった。まるでメジャー初制覇の瞬間を後押しするかのように、現地のファンたちは興奮を隠さず、エールを送り続ける。

 その一方で、日本から駆けつけたファンは「頑張れ!」と大声で声援を送りつつ、一方で「見ているだけで緊張するね」、「なんとか耐えて欲しい」との声があちこちで漏れ聞こえてくる。実は筆者も緊張していたひとりだった。

山下のプレーに熱狂する写真後方の地元ギャラリー 【Photo by Oisin Keniry/R&A/R&A via Getty Images】

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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