ホーバスジャパンの大目標は28年ロス五輪での成功 アジアカップで54年ぶりの優勝以上に手に入れたいものは?
富永が「課題」を解消するための大会に
富永は、日本が48年ぶりに自力で五輪の出場権を獲得した23年のW杯で、チームに大きな弾みをつけるフィンランド戦の劇的な逆転勝利(1次ラウンド第2戦/98-88)を演出した立役者の1人だ。
あの試合の勝因は、富永が自身の役割を全うしたことにあった。彼に与えられた役割は「3ポイントシュートを打ち続けること」(もちろん高い成功率がその前提だ)だったが、それを実践し、ビハインドを負っていた状況でも気持ちよく打ち続けた。それが第3Q終盤から高確率で決まり始めたため、相手が守備のやり方を変更。すると他のポジションの選手たちが攻撃をしやすいシチュエーションが生まれ、最終第4Qの河村らの大爆発を呼び込み、日本は逆転勝利をつかんだのだった。
そもそも、ホーバスHCのチーム作りの肝は、それぞれの選手に明確な役割を与え、実践させるところにある。彼の指導の下、21年の東京五輪で銀メダルを獲得した女子日本代表のキャプテン、髙田真希はこう証言している。
「ホーバスHCが、各選手としっかりコミュニケーションを取って、『君にはこういうことを求めている』と役割を明確にしてくれたのが大きかったです。何を求められているのかが明確になっていたので、良いプレーができた。それがメダルにつながったと思います」
ただ、パリ五輪での富永は役割が定まらず、平均プレータイムは12人の登録メンバーの中で最短のわずか2.6分に終わっている。
不完全燃焼に終わった理由は2つある。1つはすでに本稿でも指摘したホーバスHCの戦術面での指導力不足だ。相手チームの攻撃を抑えることを重視したメンバー構成と戦術を採用したなかで、富永の有効な活用法を見出せなかった。それは当の指揮官もパリ五輪後に認めているし、改善の余地があるのは間違いない。
一方で、富永自身にも問題がなかったわけではない。パリ五輪以前と比べてプレータイムが減少傾向にあり、本来の力を発揮しづらい状況であったとはいえ、五輪直前の強化試合の時点から、本来のパフォーマンスが影を潜めていた。そこにはメンタル面も影響していたはずだ。難しいシチュエーションに置かれたときでも、ポテンシャルを最大限発揮できるようにすることは富永の課題でもある。そんな課題に取り組むうえで、今回のアジアカップは格好の舞台となるだろう。
今大会は苦しい戦いを経験したほうがいい
ただ、この夏の大半はチームとしての積み上げというよりも、個々の能力のテストに時間が割かれたため、若手の課題は見えにくかった。アジアカップ前までの強化試合6試合のうち4試合(最後の2試合はカタールで行なわれ、非公開)は、馬場と富永、そして今大会は不参加となった河村がNBAのサマーリーグに挑戦のため不在で、富樫も前述の通り招集されていなかった。河村と富樫の看板PG2人の不在に、ペースを上げられる馬場もいない状況で、チームとしての戦い方を探るのは現実的ではない。攻撃のペースがホーバスHCの求めるものからはほど遠く、それに伴い3ポイントの試投数も増えづらかった。
アジアカップ開幕を前に主力の大半がそろい、ここでようやくホーバスHCが求めるバスケができる。つまりチームとしての積み上げは、実質的に本大会の戦いの中で取り組むことになる。
結局のところ、勝負師タイプではないホーバスHCの下で、日本代表が大きな目標とする28年のロス五輪で躍進を遂げるために必要なのは、選手個々とチーム全体の成長である。それが十分にできて初めて、ロス五輪での成功が見えてくる。
だから、今回サウジアラビアで開催されるアジアカップの目標は、当然ながら54年ぶりの優勝になるのだが、それ以上に大切なのは、3年後を見据え、この大会を通してワンランク上のレベルへと到達すること。だとすれば、苦しい戦いを経験したほうがいい。苦しみを乗り越えた先にこそ、より大きな成長という果実はなっているのだ。
(企画・編集/YOJI-GEN)