首位ターンの日本ハムに太鼓判!? ソフトバンク逆転優勝のカギは? 高木豊氏が語るパ・リーグ後半戦展望

ベースボール・タイムズ
 プロ野球解説者として活躍し、自身のYouTubeチャンネルでは約54万人ものチャンネル登録者数を誇る高木豊氏による前半戦総括と後半戦のキーマンを伺ったこの企画。今回は優勝争いがマッチレースの様相を呈してきたパ・リーグ編をお届け。前半戦首位ターンを決めた新庄剛志体制4年目の日本ハムがこのまま逃げ切るか、それとも、選手層の厚さを武器に巻き返してきたソフトバンクか。また、3位オリックス以下の逆襲なるか? 後半戦も見どころの多い戦いが続きそうだ。

高木氏は万波の復調がファイターズ優勝への鍵を握ると語る 【写真は共同】

ツープラトン打線がファイターズの強み

 開幕前の順位予想で高木氏は優勝チームに、日本ハムを挙げていた。その期待に応えるべく、開幕から投打ともに好調をキープしてセ・パ交流戦終了時点で10年ぶりの首位キープし、ペナントレース再開後も快調に白星を重ねて単独では2009年以来16年ぶりの前半戦首位ターンを決めた。その日本ハムの強さを高木氏はこう分析する。

「この3年間でやってきたことが、ついに実ったという感じ。かつては“1・3塁のファイターズ”なんて言われるくらい、絶対に何かしてくるという感じがあった。でも今年は開幕当初はあまり動かず、バントをしないことなども話題になった。ずっと馬なりで手綱をもったままの状態をしばらく続けたけど、そこから徐々に変えてきた。このピッチャーは足で攻略する、このピッチャーは長打で攻略するといったように、2つの打線を組んで戦うようになって、それができているのが今の強さの秘訣。それだけの戦力を整えてきたということ。新庄監督はすごいと思う」

 新庄監督曰く、「今は3つの打線が組めている」というのだから、戦う相手にとっては厄介だ。そして先発投手の完投数にも高木氏は注目する。

「分業制が当たり前になっている今のプロ野球で、前半戦だけで完投数は19というのはすごいこと。先発陣のほとんどが完投に対して高い意識を持っているのもいい。この前(7月13日のオリックス戦)今季一軍初登板初先発したに福島(蓮)が5回無失点と良いピッチングをしたのに、ヒーローインタビューで『他のピッチャーが長いイニングを投げているので、5回で降りてしまったのは反省です』と言った。そういうメンタルだというのも、日本ハムの投手力がアップしている証拠といえるでしょうね」

 投打ともにいい流れをつくっているなかで後半戦に期待を寄せるのは万波中正だという。

「僕は日本ハムがこのまま優勝すると思っています。でも、より楽に優勝するためには、万波の復調は必要。(フランミル・)レイエスもいいし、清宮(幸太郎)も夏場以降にもっと調子を上げてくるはず。野村(佑希)も今年は心配ない。中軸がしっかりして、1、2番、下位打線もいい駒が揃っているから、あとは万波次第だと思いますね」

【撮影:松野友克】

ホークス連覇の鍵は先発左腕にあり

 球団史上初の本拠地開幕カード3連敗に、4272日ぶりの単独最下位など、悪夢のような3・4月を経験したのがソフトバンクだった。柳田悠岐をはじめ、近藤健介、周東佑京、今宮健太ら主力にケガ人が相次ぎ、昨季二冠王の山川穂高も絶不調に陥っている。このまま低空飛行を続けるかと心配されたが、そこで12球団トップと言える選手層の厚さで代役の選手たちが活躍し、その中で徐々にケガ人たちも復帰して調子を取り戻すと、5月1日に最大7あった借金を5月18日に完済。6月3日からは貯金生活を続け、交流戦で6年ぶり9度目の優勝を果たし、貯金17、首位・日本ハムをゲーム差2の射程圏にとらえて前半戦を終えた。

「やっぱり底力のあるチームですよね。起用法でさすがと思ったのは、開幕から調子が上がらなかった(ロベルト・)オスナ、(ダーウィンゾン・)ヘルナンデスを外したこと。杉山一樹に抑え役を任せて、リリーフ陣をしっかりと再整備した。打線も主力がケガでいなかったとき、柳町(達)、野村(勇)らが頑張りを見せた。自分の立場をしっかりと考えて必死に食らいついていった成果がチームの勝利にもつながった。この前半戦の戦いは、今後につながるはずです」

 勢いがついてきたのは間違いない。だが、先発陣にはまだ不安要素があるという。

「有原(航平)も調子が上がっているけど、昨年ほどではない。上沢(直之)は日本ハム時代からそうだけど、多くの貯金は見込めない投手だと言える。そうなったときに、(リバン・)モイネロだけでは心もとない。だからこそ、今7勝を挙げている大関友久に加えて、前田純、前田悠伍、松本晴という左の先発陣がいかに勝ち星を積み上げられるか。みんないい素材で、力を持っていますから、勢いに乗れば白星はついてくる」

 昨年5位に沈んだオリックスだったが、今年は3連覇を成し遂げた当時の強さが戻りつつある。一昨年の首位打者・頓宮裕真、体重を絞ってスイングに鋭さが増した杉本裕太郎、昨年ブレークのきっかけをつかんだ太田椋らが、打線をけん引している。

「今年のオリックスは、打線のバランスがすごくいいと思う。西川(龍馬)のケガはちょっと痛いけど、太田も、中川(圭太)も状態がいいし、宗(佑磨)も去年に比べれば調子がいい。中継ぎ投手に不安があったけど、実績のある岩嵜(翔)を補強して、才木(海翔)もリリーバーとしての素質を開花させつつある」

 しかし、高木氏は「でも、ひとつ決め手に欠けるんですよ」と続ける。その決め手とは、エースの宮城大弥が前半戦で3勝しか挙げられなかったことにあると指摘する。

「エースがいいピッチングをしているのに、勝ちがつかないとチーム全体が勢いに乗れない。後半戦は宮城が無双状態をつくって白星を重ねていかないと逆転優勝は厳しい。チームが3連覇したときに山本由伸がエース同士の投げ合いでも負けなかったようにする必要がある。それができれば、チャンスはあります」

バファローズのエース宮城は、後半戦どれだけ白星を伸ばせるか 【写真は共同】

源田、外崎よ、若手の模範となれ

 現在Bクラスのチームの前半戦の戦いぶりはどうだったか。高木氏は、昨季最下位だった西武の戦いぶりを評価する。

「昨年が球団ワーストの91敗を喫した最悪のシーズンだったということもありますが、西口(文也)監督になって、チームが変わってきている印象がある。ルーキーの渡部聖弥、高卒4年目の滝澤夏央ら若手の成長も目に見えて伝わってくるからね。渡部はかなりやるとは思っていましたけど、ここまでは素晴らしい働きです。ただ、ケガが多くなっているのは心配なところ。成績を残す選手はケガをしないので、その点に関してはもう一度見つめ直したほうがいいかもしれませんね」

 その西武の中で、高木氏が「不満あり」と訴えたのが、源田壮亮、外崎修汰の2人だ。

「この2人が引っ張っていかなきゃいけないチーム。勢いのある若手たちをこの2人が引っ張っていかなきゃいけないんだから、後半戦はもっと頑張ってもらいたい。(タイラー・)ネビンというポイントゲッターも出てきている。この2人の数字がもっと上がればAクラスも狙えると思いますよ」

 5位の楽天も指揮官を代えて今季を迎えた球団だ。三木肇監督は、5年ぶりの復帰となったが、チームは低迷を抜け出せないでいる。高木氏は「いろんな策を講じてはいるが、それに選手たちがついて来れていない」という印象があるという。

「三木監督の野球は、今のパ・リーグで一番面白いと思っています。絶対に成績が残せる野球をやっているとは思うんですが、選手がついて来れていない。マッチしてるのは村林(一輝)ぐらい。ベテランの浅村(栄斗)も、チームの軸である辰己(涼介)も、いまひとつ。辰己も含めて身体能力が高い選手がいるんだから、しっかりと監督が目指す野球を受け入れていけば、浮上できると思う。辰己も源田や外崎と同じで、リーダーとしての自覚をもっと持ってチームを引っ張ってほしい」

 最後にロッテ。こちらも楽天と同じく、すでに自力優勝が消滅する事態となっている。

「とにかく選手起用がチグハグ。昨年のドラフトで西川史礁を獲りましたが、あれだけ外野が揃っているのに“必要なのかな”と思いましたから。3つしかポジションがないのに、あぶれすぎです。チーム編成から疑問を持ちたくなりますね。その部分では広島と似ていて、バランスよく選手を使おうとする人の良さが出ている。いろいろと選手を代えるケースも必要だけど、一定のレギュラーは固定して戦ったほうがいいんじゃないかなと思う。ピッチャーも含めて、もう一度、チームとしてどう戦うのがベストなのかを考えてほしい」

 AクラスとBクラスがはっきりと色分けされつつあるパ・リーグだが、優勝争いは最後までもつれそうな気配。後半戦も注目していきたい。

(取材・構成:松野友克/BaseballTimes)
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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.61』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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