連載:高校野球2025・夏の地方大会「エリア別大展望」

3冠を目指す横浜の前に立ちはだかる大きな「壁」 県内最大のライバル東海大相模も虎視眈々と全国制覇を狙う

大利実

東海大相模は、打線の核となる中村(右)ら昨夏の甲子園経験者が多く残る。秋・春と同校に勝っている横浜の阿部主将(左)も、「夏の相模は全く違うチームだと思います」と警戒 【写真は共同】

 昨秋の明治神宮大会、今春センバツに続く日本一を目指す横浜だが、全国屈指の激戦区である神奈川を勝ち抜かなければ甲子園にたどり着くことはできない。特に県内最大のライバルであり、秋・春と県大会決勝で激戦を繰り広げた東海大相模は大きな「壁」だ。昨夏の代表校である同校は、甲子園で8強入りした旧チームから主力だった選手が何人もいて、全国制覇を狙える力があるという声も聞こえてくる。両校が激突するとしたら決勝。夏の大会に臨む神奈川2強に迫る。

夏勝つために必要なのは全員の「勝ちたい」という気持ち

村田監督は選手たちに「受けて立つのはやめよう。チャレンジしていこう」と伝えているという 【写真は共同】

 長きに渡り神奈川の高校野球界をリードしてきた横浜と東海大相模。今年も「2強」が優勝争いの中心にいる。昨年の夏(横浜●4-6〇東海大相模)、秋(横浜〇5-2●東海大相模)、そして今春(横浜〇5-4●東海大相模)と3季続けて決勝でぶつかり、激戦を繰り広げてきた。この夏、ともに勝ち上がれば4季連続の決勝対決が実現する。

 秋の明治神宮大会、春のセンバツを制し、この夏に3冠を狙う横浜は、7月4日に大会前のオープン戦がすべて終了した。最後の相手は、村田浩明監督の母校でもある日本体育大。先発の織田翔希が日体大の上位打線に打ち込まれたが、為永皓、阿部葉太ら攻撃陣が奮起し、8-6で逆転勝ちを収めた。

 試合後、村田監督はベンチ内で30分近いミーティングを開いた。試合には勝ったが、守備面でミスが目立ち、指揮官にとって納得のできる内容ではなかった。

「新チームからずっと作ってきたものが、最近はなかなか出せず、『ここで勝ちにいくよ』と大事にしていた大阪桐蔭、浦和学院戦で負け。口では『全員野球』と言っているけど、それができていないのが現状。選手がどう受け止めているか。いい薬になればと思います」

 多くのライバル校が「打倒・横浜」で挑む夏になる。

「選手に言っているのは、『受けて立つのはやめよう。チャレンジしていこう』。東海大相模も強いですけど、神奈川にはほかにも強いチームがあるので、一戦一戦、相手を分析して、しっかりと向き合っていきたいです」

 チーム全体を見ると、主力に復帰のメドが立ったのが大きい。5月上旬に太ももを肉離れした主将の阿部が6月下旬の練習試合で復帰。日体大戦ではDHで出場し、出塁のたびに特別ルールで臨時代走が送られたが、「本番は夏。今はまだ無理するところではないので」と村田監督は冷静に語る。

 阿部は1年からレギュラーで出場。2年連続で夏の決勝の舞台に立ったが、1年夏(対慶応)は9回表、2年夏(対東海大相模)は8回裏に試合をひっくり返され、甲子園を逃した。

「夏勝つために必要なのは、全員の『勝ちたい』と思う気持ち。それをどれだけ前面に出して戦えるか」(阿部)

 当然、東海大相模は意識する相手の1つになる。

「ずっと競い合ってきたライバルです。秋・春は何とか勝っているんですけど、夏の相模は全く違うチームだと思っています。自分たちも一戦ごとにレベルアップして、勝ち上がっていきたいです」

夏こそチームが勝つためのピッチングを見せたい

村田監督が夏のキーマンに挙げているという奥村頼。センバツでは「自分のピッチングができなかった」と語る左腕は、この夏どんなパフォーマンスを見せるのか 【写真は共同】

 投手陣に目を移すと、センバツでは全試合継投で頂点に立った。織田は継続的に取り組んできたスライダーのキレが増し、6月下旬の浦和学院戦では8回途中まで1失点12奪三振の好投を見せた。さらに、「状態がいい」と指揮官が語るのが、中本牧シニア時代に全国制覇を経験した1年生左腕の小林鉄三郎だ。夏、大事な場面での起用も予想される。

 そして、最後のピースとなるのがエース番号をつける奥村頼人である。春に左足を肉離れしたため、慎重に調整を続けてきた。

「足はもう治っているんですけど、先のことを考えながら調整しています。村田監督から『夏のキーマンは奥村頼人』と言われていて、そこにはいろんなメッセージが込められていると思います。センバツでは優勝したんですけど、自分のピッチングができなかった悔しさしかなくて、夏こそチームが勝つためのピッチングを見せたいです」

 東海大相模のエース福田拓翔とは、小学生のときから知る仲だ。

「福田がいたことで、成長できた部分もあります。自分は滋賀から神奈川に来て、神奈川の高校野球に育ててもらったと思っています。昨年、相模が甲子園ベスト8まで行って、相模を倒せれば上に行けると1つの基準にしてきました。『神奈川を制するものは全国を制す』という言葉の通り、神奈川を勝って、春夏連覇したいです」

 連覇に向けた横浜の戦いは、7月11日から始まる。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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