週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

プロ注の甲子園狙う投手!初戦から強豪対決、山梨の“美”フォームの左腕/初聖地目指す広島のタフネス右腕

西尾典文

最速147キロ左腕の鈴木(左)とタフネス右腕の藤本(右) 【撮影:西尾典文】

 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回は7月に入って本格的にスタートする高校野球の地方大会でぜひ注目してもらいたい左右の本格派投手2人を取り上げます。

「フォームの美しさは世代でも屈指。山梨で注目の本格派サウスポー」

豊かな将来性を感じさせる高校生サウスポー・鈴木。今夏の成長が期待される 【撮影:西尾典文】

鈴木蓮吾(東海大甲府 3年 投手 177cm/70kg 左投/左打)

【将来像】吉川光夫(元日本ハムなど)
柔軟性のあるバランスの良いフォームと鋭い腕の振りが重なる

【指名オススメ球団】阪神
高卒の若い先発タイプの左腕が門別しかいないチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 昨年は藤田琉生(東海大相模→日本ハム2位)、高橋幸佑(北照→中日5位)の2人が最終学年に評価を上げて支配下指名を勝ち取ったが、この夏面白い存在となりそうなのが東海大甲府のエース、鈴木蓮吾だ。1年夏の山梨大会では早くも背番号1を背負うなど、入学当初から期待の高かった投手である。初めて投球を見たのは2年前の山梨大会準決勝の甲府工戦だ。先発を任された鈴木は2回を投げて3失点で降板となったものの、ストレートの最速は141キロをマークし、その素材の良さは十分に感じられた。だが、まだ1年生で安定感に欠けるところがあり、続く夏の甲子園では登板機会はなく、チームも初戦で専大松戸に敗れている。

 その後はなかなか現地で投球を見る機会はなかったが、春先に担当スカウトから聞いた話では好調時には140キロ台後半をマークするまでになっているという。その成長ぶりを確かめるべく、春の山梨県大会準々決勝の駿台甲府戦に足を運んだ。まず目立ったのがそのフォームの完成度の高さだ。右足を上げた時に左足一本できれいに真っすぐ立ち、そこから膝が折れることなく余裕を持ったままステップすることができており、踏み出した右足の着地も安定している。下級生の頃と比べても体重移動のスピードと躍動感は明らかにアップしており、それでいながら体が左右に振られることなく、バランスの良さも感じられた。上半身もテイクバックの動きが少し大きいものの、肩の可動域が広く、引っかかることなくスムーズに腕を振ることができている。肘の使い方にも柔らかさがあり、球持ちが長いのも特長だ。

 この日はリリーフでの登板となったが、ストレートは筆者のスピードガンでコンスタントに140キロ台中盤をマークし、最速は147キロを計測。変化球も110キロ台のカーブで上手く緩急をつけ、スライダーも120キロ台と130キロ台の2種類を投げ分けており、どのボールもレベルが高い。2回2/3を投げて5奪三振と実力の片鱗は十分に見せる投球内容だった。

 一方で課題となっているのはコントロールだ。この日もピンチの場面での登板という難しい部分はあったものの、押し出しの死球を含む4四死球を与えて逆転を許してチームも敗れている。75球を投げてボール球が33球というのは明らかに多く、視察したスカウトからはフォームが悪くないのにコントロールが安定しないのは不思議だという声も聞かれた。上がった出力をリリースでまだしっかり抑え込めていないように見え、指の力などを鍛える必要がありそうだ。

 それでもフォームに欠点がなく、これだけのスピードボールと変化球を投げられる高校生左腕というのは貴重である。夏の山梨大会は初戦でいきなり昨年の決勝で敗れた日本航空との対戦となったが、この1年の成長を示すようなピッチングを見せてくれることを期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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