首位・鹿島撃破から見えた町田の「完全体」 菊池と中山の復帰“だけ”でない好材料とは?
鹿島戦では負傷で離脱していたセンターバック(CB)の菊池流帆が14試合ぶりに先発。副キャプテンの中山雄太も途中出場ながら6試合ぶりにピッチに立った。町田の守備陣は4月末から人手不足状態が続く中で、カップ戦も含めた連戦を強いられていた。後半戦の浮上に向けて、明るい兆しが見える二人の復帰だった。
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セットプレーの脅威が増す
21日の鹿島戦はその典型だった。6分の先制点は谷晃生のゴールキックから望月ヘンリー海輝がヘディングを落とし、それに呼応して選手が「前向きのベクトル」「勢い」を発揮したところから生まれた。相手ボランチのパスミスが林幸多郎に渡り、最後は相馬勇紀が仕留めた。これで試合運びは楽になった。
34分の追加点はセットプレーから生まれた。左サイドの「ロングスローフェイク」から、長身DFがエリア内に集結しているところへ下田北斗がクロスを合わせ、岡村大八がニアからヘッドを叩いた。
黒田剛監督、町田はセットプレーへの「こだわり」が強い。湘南戦までの20試合でセットプレーから6得点が生まれていて、岡村も3得点を挙げている。
ただ町田のセットプレーには「もっと取れる」余地もあり、その決め手となりうる存在が菊池だ。岡村は183センチ・85キロの屈強なDFだが、菊池は188センチ・80キロと「高さ」が際立つタイプ。他にも高さに強みのある選手はいるが、岡村と菊池の二人が揃えば確実にセットプレーの迫力は増す。
町田の2点目を見返すと、クロスを蹴った下田への寄せが弱く、岡村のマークも甘かった。もっとも岡村の一つ奥には菊池がいて、さらにファーサイドからは192センチの望月が飛び込んでいる。となれば、相手守備の対応は難しかったはずだ。
前半戦の町田は得点に関して相馬、西村拓真への依存度が高かった。セットプレーを得点源として確立できれば、試合運びはかなり楽になる。
菊池の復帰で生まれた相乗効果
岡村はこう振り返る。
「鈴木優磨選手が(中盤に)落ちてくる情報が入っていて、そこを潰してほしいというところで、自分が右サイドで起用されました。彼にうまく起点を作らせず、自分たちのペースで試合を進められたかなと思います。ただ僕が行きすぎると背後のスペースが大きくなってしまいます。ボランチに受け渡すところ、自分が付いていくところの話し合いも上手くできました」
ボランチの前寛之は言う。
「(菊池)流帆は蹴らせたときの対応に安心感があります。前からハメに行ってルーズに(縦のフィードを)入れられたとき、相手側にこぼれると『ハマっていない』印象にもなります。でも(菊池が)よく潰してくれました。カバーリングも運動量を出せるし、スピードがあるから、ハチ(岡村)は前に行きやすかったと思います」
菊池自身はこう口にしていた。
「大八、(晶子)源くんに『降りた選手に対して、強く行ってくれ』と話していました。本当にそれを遂行してくれたので、正直楽でした」
イブラヒム・ドレシェヴィッチはリザーブになったが、彼のような人材を「保険」としてベンチに置ける安心感は大きい。結果的にドレシェヴィッチは1点差に迫られた87分に中山と揃ってピッチに入り、二人は試合を落ち着かせる「クローザー」の役割を果たした。
黒田監督は菊池、中山の復帰と起用についてこう述べていた。
「後ろの層が厚くなったことは、我々にとってすごくポジティブな材料です。前回(の湘南戦で)菊池も行けるには行けたんですけど、一つ待ったところで今日のパフォーマンスがありました。当初70分くらい(の交代)かなと考えていたのですが、岡村が痙(つ)りそうになっていたりして、菊池を代えるタイミングがありませんでした。林と(望月)ヘンリーの2人がかなりアップダウンをしていたので、そこに中山を投入できたことも良かったです。ケガでなく、前向きに我々の戦略・戦術にハメ込んだ交代ができました」