週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

大谷翔平の投手復帰登板をデータで解析 低いアームアングルが物語る変化とは?

丹羽政善

ボールをリリースする大谷翔平。データから見えた過去との変化とは? 【Photo by Nicole Vasquez/MLB Photos via Getty Images】

過去最も低いアームアングルに?

 16日の復帰戦(※日時はすべて現地時間)で100マイルをマークした大谷翔平(ドジャース)。そこに多くの関心が集まるのは理解できるが、少々マニアックな界隈では、降板直後から、こんな話題で盛り上がった。

“アームアングルが、下がっている”
“29°!?”

 その数値は間違いではないか、と思えるほど。実際、18日になって修正され、33°になっていた。当日の速報値が修正されることは、例えば、本塁打の飛距離などでもある。とはいえ、過去もっとも低い。データは2020年以降しか残っていないが、それがBaseball Savantで公開されている。

図1:アームアングルの変化 【参照:Baseball Savant】

 2020年に1回目のトミー・ジョン手術から復帰したときの角度は45°。あの年は投球回数も少ないのであまり参考にならないが、本格的な投手復帰となった21年も45°だった。

 徐々に下がったのはスイーパーの割合が増えた時期と重なるが、高い位置から横の変化量が大きなスイーパーを投げることは難しいので、そのデータは必然。33°とさらに下がったことで、結局は故障のリスクが高いと、メジャーリーグが昨年12月のリポートで、故障を招く要因の一つとして指摘されたスイーパーを捨てなかった――ということになる。

 再発の可能性をより下げるため、アームアングルを上げて、スイーパーの横の変化量を小さくするのか、とも予想したが、23年は15.9インチ。16日は14.8インチ。やや小さくなっているが、軌道そのものは酷似している。

 アームアングルの低さだけを切り取れば、そんなに低くなって大丈夫か? ということにもなるが、体幹を以前よりも並進運動のときに回旋させ、動作を変えることで肘への負荷を抑えようとしているようにも映る。また、腕が伸び切った状態で、手の位置が大回りしているなら肘にストレスがかかるが、体に近い位置を通っているので、そこまで心配はないかもしれない。体の使い方に関しては、今後もう少し様子を見てから、本人に確認したい。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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