週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

大谷翔平が自ら投手復帰前倒しを申し出た舞台裏 気になる登板翌日の疲労度と、次回の登板日は?

丹羽政善

16日(※日時はすべて現地時間)の登板は大谷翔平からの提案だったという 【Photo by Ronald Martinez/Getty Images】

投手事情が苦しいドジャース

 ドジャースは、前日に続き、17日もブルペンデーだった。それが復帰登板を前倒しした理由の一つ――16日に電撃復帰した大谷翔平(ドジャース)は試合後、そう明かした。

「チーム状況も加味して、僕にとってもプラスだと思うので」

 ドジャースはいま、先発が足りない。ローテーションで回っているのは、山本由伸、クレイトン・カーショー、ダスティン・メイの3人だけ。山本は中6日から5日になってから状態が落ちたのでは? と言われているが、中6日に戻す余裕などない。デイブ・ロバーツ監督も、「もう、十分に適応する時間は与えた」とメディアの指摘を一蹴したが、本音では中6日で投げさせたくても、中5日で投げてもらわなければ先発が回らない、という事情がある。

 離脱が長引くタイラー・グラスノーは17日にライブBPを行ったが、ブレーク・スネルはブルペンで投げ始めたばかり。トニー・ゴンソリンはまだ、リハビリを開始する目処すら立たず、佐々木朗希は今季絶望の可能性もある。そんな状況下で18日にエメ・シーハンが復帰するが、彼はトミー・ジョン手術からの復帰となり、無理はさせられない。しばらくは制限がかかる。

 シーハンが5イニングを投げられるようになったとしても、日程が詰まっていれば、週に1〜2回は、ブルペンデーが必要。ベン・カスペリアスを先発に転向させる案もあるが、ブルペンデーの第2先発として、あるいは、先発が崩れた場合のロングマンとして使う選択肢を残しておきたいので、専任にはしたくない。

 では今後、誰がブルペンデーで先発をするのか? その役を、先ほどのカスペリアス、ジャック・ドレーヤー、ルー・トレビノらが担ってきたが、それは単純に試合中盤の駒不足を招く。マイナーから投手を昇格させ、翌日に落とす。そんなこともしてきたが、「ならば、僕が」と大谷が手を挙げた。

「そっちの方がスムーズに行けるっていう判断」と大谷は言った。

「ライブBPでイニングを伸ばしながら、ある程度、4回、5回になってから試合に入るパターンと、今日みたいにショートイニングで、試合のレベル、それなりの強度で投げる。2通りのパターンがあったと思うので、後者を取ったという感じですね」

 ドジャースとしては、ライブBPを重ね、5イニング、70球ぐらいを投げられるようになったら、先発として復帰させるシナリオを描いていた。

 ただそうなると、その日は、関連するメニューだけで、2時間はとられる。そこで体力が削られ、その日の試合に影響が出るのでは本末転倒。そもそもライブBPは、身内に投げるので、当ててはいけないという意識が働き、嫌がる投手が少なくない。キャンプでも、オープン戦で先発する前にライブBPで投げるのは多くて2回。このまま7月中旬までライブBPを続けることは、大谷がロバーツ監督に伝えた言葉を借りるなら、「効率的ではない」と映ったのだろう。

 なお、ブランドン・ゴームズGMによると、「復帰が決まったのは、発表(日曜夜)の数日前」とのこと。大谷の申し出をドクター、トレーナーを交えて検討し、さらに本人とも話し合いを重ね、決まった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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