並々ならぬ意欲でクラブW杯に挑むR・マドリー シャビ・アロンソ新体制のお披露目に国内の関心もかつてないほど……
国内3冠のバルサが参加できない矛盾
今年から代表チームのW杯と同様、4年に一度、6つの大陸から32のチームが参加するフォーマットとなった大会に、スペインからはR・マドリーとアトレティコ・マドリーが出場している。
欧州に与えられた出場枠は12。2021年から24年までのチャンピオンズリーグ(CL)王者とFIFAが算出するクラブランキングの上位チームが出場する。24年までの4年間、そしてCLにおけるパフォーマンスのみに焦点を当てた選考基準のため、24-25シーズンにラ・リーガ、スペイン国王杯、スペインスーパーカップの国内3冠を達成したにもかかわらず、バルセロナは参加できない。
イングランドのリバプール、セリエAのナポリも同様だが、直近の24-25シーズンを通して最も結果を残した現リーグ王者が、「世界ナンバー1クラブ」を決める大会に出られないことに矛盾を感じるし、興味を削いでしまう原因の1つもそこにもあるのではないかと思う。
ちなみに、今回のクラブW杯のスペインにおける放映権は「DAZN」が持っているが、民放2局にも多くの試合が提供されるため、注目度の高いカードの大半は無料で視聴できる。
話は少し逸れるが、スペインでは夏になると、視聴率を度外視して地元の民放テレビ局が育成レベルのサッカー大会の中継に多くの時間を割く。長年この国に住んでいて感心するのは、多少の犠牲を払ってもサッカーの普及・促進に力を惜しまない姿勢だ。
「視聴率を度外視しても」という戦略は時代遅れである一方で、スポーツメディアの在り方としては非常に正しい。サブスクでサービスを受け取る余裕のある人のみが学習、成功できる流れにある昨今、スペインはサッカーに関して実に寛容な国だと思うし(今のところ)、だからこそ一般の人々のサッカーを見る目が養われ、若者と高齢者がバールで議論を交わすカルチャーが脈々と続いていくのだと思う。
スペインにおいてクラブW杯は、たとえ無料でも視聴率が伸びないコンテンツだった。目の肥えたサッカーファンにとってはレベル的に物足りない、というのが人気に欠ける大きな理由だが、しかし今回に関しては様子が違っている。大会への関心が高まっているのは、フォーマットが大幅に改定されたから、ではない。なんと言っても、シャビ・アロンソが監督に就任した新生R・マドリーの、これがお披露目の舞台となるからだ。
新指揮官はクリーンなイメージとともに
R・マドリーでの現役時代に肖像権を個人ではなく自身が設立した会社を通して受け取っていたシャビ・アロンソは、その収入分に脱税の疑いがあると指摘され、税務署から訴えられていた。そのためマドリードに入れないという状況にあったのだが、最終的にマドリードの高等裁判所は「運用は適切だった」との裁定を下している。
こうして全面無罪を勝ち取って、シャビ・アロンソはクリーンなイメージとともに戻って来た。クラブにとっても、この「イメージ」が大切だったのは言うまでもない。
それでなくても、シャビ・アロンソが背負っているものは大きい。11億ユーロ(約1840億円)という潤沢な年間予算に加え、キリアン・エムバペ、ジュード・ベリンガム、ヴィニシウス・ジュニオールといった誰もが羨むビッグネームを手にしながら、昨季無冠に終わった名門に、再び栄光をもたらす救世主としての役割を担っているのだから。
しかし、レバークーゼンで実績を残した新指揮官は泰然自若としている。着任後最初の記者会見で、いきなりクラブW杯で指揮を執ること、そのプレッシャーについて聞かれたシャビ・アロンソは、「最初のタイトルを獲得する良い機会として捉えている」と答えてみせた。