“うっぷん”溜まった!?全米OPの松山英樹 「タイガーや自分にしかできないゲーム運び」も選択肢に

塩畑大輔

全米オープン最終日を68で回った松山英樹だが、悔しさが残った 【Photo by Cliff Hawkins/Getty Images】

 今年の全米オープンゴルフ選手権(U-NEXTで独占生配信)は、34歳、J.J.スポーンのメジャー初優勝で幕を閉じた。日本の松山英樹は最終日に68の好スコアを叩き出し、今大会初めてアンダーパーで回って意地を示した。「悔しさ」が残る今大会の松山のプレーを、『松山英樹徹底マークチャンネル』で解説を務めた谷原秀人プロはどう見たか? また、なぜ松山以外の日本勢はオークモントCCの罠に飲み込まれたのか。現役プロならではの視点で解説してもらった。

「うっぷん」に込められたメッセージ

谷原秀人は、松山英樹のアイアンショットの精度を改めて絶賛する 【Photo by David Cannon/Getty Images】

 全米オープン最終ラウンド、ホールアウト後のインタビュー。
 松山英樹に少し変わった「質問」が投げかけられた。

「このうっぷんをどう晴らしますか?」

 松山はわかりやすく深々とため息をついてみせた後に、こう答えた。

「とりあえず寝ます」

 思わずニヤリと笑う。

 この日はフィールド3位の「68」をマーク。
 個人的にも会場のオークモントCCで初めてのアンダーパーだった。そこにあえて「うっぷん」と投げかけた主は、都内のスタジオにいた。

「そうですね。たっぷり眠るといい」

 谷原秀人はそう言って笑った。

 U-NEXTの『松山英樹徹底マークチャンネル』で、初日に続きスペシャル解説を担当した。この日は現地のスタッフにいくつかの質問を託し「東京の谷原プロから」という形で当ててもらっていた。

 最後の質問としてあてられた「うっぷん」という言葉には、メッセージも込められていた。

 「寝ます」というような答えを、少し期待していたところがあった。

「パットが決まればもっと行けたというのもありますけど、少し楽観的に捉えてほしいなと。明確な答えを求めるよりも、微調整くらいでいければ、これからいいところに行けそうですよね」



――最終日のプレーはどう見えたか。

谷原 特に前半は左へショットを曲げるミスが見られて、この大会を象徴するような感じではありました。ただ、アイアンは本当によかった。パットのタッチがこのグリーンにあっていたら、68どころか65とか64とかも出せたような内容でした。

谷原 これを踏まえて、どう練習をするか、だと思います。普通の選手なら「これをきっかけにもっと意識を高く」なのかもしれないですけど、松山選手の場合は逆といいますか。うまくいったことに対して、明確な答えを求めすぎるところがあるので、それで「納得がいかない」となるとまた苦しいところをさまようことになる。いい方に転んでほしいなと。

――いい方に、は考え方しだいか?

谷原 そうですね。今回、ずっと徹底マークチャンネルで松山選手のスイングを見続けさせてもらってあらためて感じたのは、飛距離と方向性をかなり高いレベルで両立させたいんだろうな、というところです。配信の中でも解説させてもらいましたが、彼が大会前から語っていた「新しい取り組み」も、つまりは二兎を追って二兎を得るためにやっているんだと思います。

谷原 直接、電話でそのあたりについて話をしたりもするのですが、例えばちょっと前にやっていたように、トップでスイングが一瞬止まるような打ち方をすれば曲がらないというのは、本人は分かっている。でも、そういう間をなくしてクイックに振ったほうが飛ぶ、というのも実感している。

谷原 両方分かっているし、頭で理解しているだけじゃなく試合で形にできたこともあるからこそ、今は2つを両立させたくなっている。そこで苦しんでしまっているところはあると思うんですよね。完璧主義者というか、性格なのかなと。まあ、そういう「人柄も含めてゴルフ」というあたりは、松山選手を見ているとあらためて感じます。

――今回好調だったアイアンを武器にしていくという考えもある、と解説で言及されていた。

谷原 そうですね。タイガー・ウッズのゴルフじゃないですけど「たとえピンまでの距離が残ったとしても、フェアウェーにさえあれば俺は勝負できる」という考え方もあると思うんですよね。松山選手はロングアイアンでもあれだけ精度が高いので。

谷原 今の世界のゴルフの潮流が、ティーショットの飛距離でアドバンテージを、ということになっているので、みんながそっちを目指すところはあると思う。でも本来それはコースによって使い分けるものだし、もっと言えば選手によって違って当然です。

谷原 すでにキャリーで300ヤードが出せるというのもありますから「タイガーや自分にしかできないゲーム運び」という方向で考えてみてもいいような気はします。

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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