全米OP+4発進、首に不安残る松山英樹 でも「かえってうまくいくかも」と谷原秀人が語る理由
厳しい状況も「明日以降すごく楽に回れる」
プロゴルファー・谷原秀人は資料をめくる手を止めて、目の前のモニターをじっと見つめていた。
U-NEXTによる全米オープン第1ラウンドのライブ配信で、急きょ解説を務めることになった。
担当するのは、松山英樹の18ホールに密着する『松山英樹徹底マークチャンネル』。その開始に備え、1時間以上も前からスタジオに入り、情報を整理していた。
控え室のモニターには、ドライビングレンジでショット練習を始めた松山英樹の姿が映し出されていた。
この映像はカメラのテストも兼ねたもので、まだ一般の視聴者向けには配信されていなかった。
ショット直後。
松山が首のあたりを手でおさえて、顔をしかめている。
「痛そうだな…」「大丈夫かな?」周囲のスタッフがざわつく。
開幕前日の練習ラウンドを、首の痛みでキャンセルしたという情報も、現地から伝わってきていた。
谷原は言葉を発することもなく、大学の後輩が苦悶の表情を浮かべる様子を見守っていた。
やがてぽつりと、こういった。
「これくらいのほうが、この大会はかえってうまくいくかもしれませんよ」
◇
第1ラウンド。松山は1バーディー、5ボギーの74とややスコアを落とした。
だが、ホールアウト後の表情は、意外にも明るいものだった。
解説を終えて控え室に戻ってきた谷原が、静かにうなずく。
谷原 首の痛みもそうだし、この初日のスコアもそう。捉え方次第で、明日以降すごく楽に回れる可能性があるんじゃないですかね。
それはどういうことなのだろうか…?
問う間もないまま、谷原は「それにしても」と言葉を続ける。
谷原 密着映像というのは、すごくいいですね。観客の皆さんと一緒に、ずっと選手について回っているような感覚で。いろんなことが見えて、とても面白かったです。
谷原 例えば、スタート前の練習場ですよね。映像を見てちょっとびっくりして。パッと見で分かるほど、構え方をガラッと変えていたんですよね。かなりハンドファースト(ボールの位置に対して手元を飛球線方向に押し出して構えること)になっていた。今はそういう取り組みをしているんだな、と思ったうえでラウンドを見ることができるのは、すごく面白いし、いいことだなと。
ホールアウト後のインタビュー。
松山は「今までやってきたことと新しい取り組みがごっちゃになって、訳が分からなくなったところもある」と吐露していた。
谷原 タイミングがあってない、というのはありましたかね。ティーショットでイメージ通りのフェードが打てず、左のラフに入ってしまう場面が今日は多かったです。構え方を変えたこととも関係があるのかな…。いずれにしても、そういう印象を本人に伝えて、話をしてみたいというのは強く感じましたね。それはやっぱり、ずっと密着する映像を見ることができたからこそ、かなと。