週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

東京六大学春のベストナイン&最優秀防御率左腕/躍動感あふれる18K右腕は大学史上初の指名なるか

西尾典文

最終学年を迎えて評価急上昇の明治大・毛利海大(左)と花園大・藤原聡大 【撮影:西尾典文】

 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回はこの春のリーグ戦で評価を上げた大学生投手2人を取り上げます。

「逸材揃いのチームでエースに成長。試合を作る能力の高さは大学屈指の左腕」

明治大のエースとなった左腕・毛利。今春のボールの質、ピッチングの安定感は抜群だった 【撮影:西尾典文】

毛利海大(明治大 4年 投手 177cm/77kg 左投/左打)

【将来像】杉内俊哉(元ソフトバンク、巨人)
バランスの良いフォームと力みなく速いボールを投げられるスタイルが近い
【指名オススメ球団】日本ハム
加藤貴之、山﨑福也の後釜となれる左の先発候補として
【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名(2位以上)の可能性あり

 大学選手権は熱戦が続いているが、惜しくも出場を逃したチームにもこの春に評価を上げた選手は存在している。東京六大学の投手でその筆頭格と言えるのが明治大の毛利海大だ。福岡大大濠では山下舜平大(オリックス)の1学年下で、3年春にはエースとして選抜高校野球に出場。初戦の大崎戦では10奪三振で1失点完投勝利をマークするなど活躍したが、当時のストレートは130キロ台中盤がアベレージで、凄みには欠ける印象だった。

 明治大進学後は層の厚い投手陣ということもあって2年まではリーグ戦でわずか1試合の登板に終わったが、3年春から登板機会を増やし、秋には先発として3勝をマークする活躍を見せている。

 この春からは1戦目の先発に定着。特に圧巻だったのが4月28日に行われた慶応大との第3戦での投球だ。第1戦で6回、107球を投げてから中1日での登板だったが、立ち上がりからそんな影響を感じさせないピッチングを披露。5回まで二塁を踏ませず、最終的には7回を投げて被安打4、1四球、12奪三振の快投でチームを勝利に導いて見せた。昨年までと比べて大きく成長したのがストレートだ。この日の最速は筆者のスピードガンで145キロと驚くような数字ではなかったが、1回から7回まで常に140キロ台中盤をマークしており、勢いが落ちることがない。

 右足を上げた時の姿勢が良く、途中までゆったりとしたモーションでしっかりタメを作り、途中から一気に体重移動のスピードがアップするメリハリのあるフォームでバランスの良さも抜群だ。まとまりのある投手がスピードアップすると制御できなくなって制球を乱すケースも多いが、毛利にはそのような様子は全くなく、ストライク率も70%を超えており元々の制球力の高さも維持できている。

 ストレートが良くなったことで威力を増したのが変化球だ。110キロ前後のカーブと120キロ台中盤のスライダー、120キロ程度のチェンジアップ130キロ台のツーシームという対になる変化球が2種類ずつあり、どのボールもしっかりコントロールすることができている。この日記録した12奪三振全てが空振りだったというところにも、ボールの質の高さがよく表れていると言えるだろう。

 6月4日に行われた早稲田大との優勝決定戦では5回を投げて6失点と打ち込まれて負け投手となったが、リーグ戦全体の成績(優勝決定戦は含まない)は6勝0敗、防御率1.34という見事なものでベストナインと最優秀防御率にも輝いている。左投手でこれだけしっかり試合を作れる選手は貴重であり、秋もこの調子を維持できれば上位指名も見えてくるだろう。

1/2ページ

著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント