全米OPは「最も難しい」コースで開催 怖さ知る松山英樹と「資質を持つ」金谷拓実に期待する理由
6月10日、都内。
重く垂れこめる雨雲を見上げて、プロゴルファー・谷原秀人がつぶやく。
「9年前のオークモントも、初日は天気が悪かったんですよね。セッティングの難しさもあいまって、重苦しい雰囲気でした」
2025年、全米オープンは米ペンシルベニア州のオークモントCCで行われる。
選手たちが口々に「最も難しいコース」と評する会場だ。
「確かに、オークモント開催はパインハーストNo.2開催とともに、全米オープンの中の全米オープン。そういう印象です。本当に難しい。ただただ難しい」
海外メジャー通算15試合出場。2006年には全英オープンで5位に入った。
2017年には“準メジャー”の世界ゴルフ選手権シリーズ、デルテクノロジーズ・マッチプレーで準決勝に進出。ダスティン・ジョンソンに敗れたものの、当時の世界ランク1位と大接戦を演じてみせた。
そんな屈指の実力者をして「難しい」と繰り返させるオークモントとは、どんなコースなのだろうか。
「雨が降ってボールが転がらなくなれば、7372ヤード、パー70という距離がよりいっそう長く感じます。一方で、晴れたら晴れたで、すさまじく難しくなるんです」
これがオークモントか…
谷原は全米オープンに備えて、オークモントCCでの練習を開始していた。
コースに人はまばらだった。開幕まではまだ5日もある。
一緒に回る大学の後輩、松山英樹が隣でリラックスした笑みを浮かべている。初日が迫るにつれ、表情に殺気のようなものをたたえていくのだろう。そんなことを思った。
フェアウェーは、思ったよりもかなり広かった。
屈指の難コースと聞いて、もっとタイトなセッティングを想像していた。少しだけ、肩透かしを食らったような感覚があった。
だが、毎日練習ラウンドを重ねるにつれ、その印象は変わっていった。
プレーをすればするほど、見た目は広いフェアウェーが、実は「狭い」ということに気付かされるのだ。
◇
理由はふたつあった。
ひとつに、フェアウェーの「硬さ」がある。
コースの難しさを表現する際に、よく「グリーンの硬さ」が指標として使われる。
ピンを狙ったボールが、硬い地面に跳ね返され、グリーンの外まで転がり出てしまう。そんなシーンを、全米オープンの中継を視聴したことがあるファンなら一度は観たことがあるだろう。
だが、プロが気にするのは、グリーンの硬さだけではない。
フェアウェーが硬ければ、ティーショットは想定した場所に止まらず転がり続けることになる。これがコース攻略をかなり難しくするのだ。
加えてオークモントCCは、フェアウェーの起伏がとても強かった。
フェアウェーど真ん中に放った会心のティーショットが、レールに乗ってしまったかのように傾斜を下り続け、深いラフに飛び込んでしまう。
「あのコースのラフはどうしようもない。あまりにも深いので、おそらくデシャンボーくらいのパワーがあったとしても、出すだけになります」
あらぬ方向に転がらず、ボールがきちんとフェアウェー内に止まってくれる落としどころ。
それは一見広いフェアウェーの中で、わずか数ヤードの幅の間にしかない。
これがオークモントか…。
一緒にプレーする松山の表情が厳しいものになっていた。開幕が迫っているから、というだけではないように思えた。