中谷潤人の圧勝劇を世界はどう評価した? 来春の対井上尚弥はトップ5同士の対決も
「中谷はモンスターに次ぐ存在」と世界が認識
時は流れ、6月8日。2021年東京五輪銀メダリストでプロでも13戦全勝(9KO)のままWBO世界ライト級王者になったキーショーン・デービス(米国)が初防衛戦で何と4.3ポンド(約1.95キロ)もの計量オーバーで失格。王座剥奪という失態を犯したことが大きなニュースになった。米ボクシングに再び失望の空気が漂った直後、日本の大イベントで中谷が支配的な強さを誇示してくれた。強敵との対戦を厭わず、常にトップコンディションで最後まで全力を尽くす日本のボクサーたちは今では業界にとって“一服の清涼剤”に感じられるくらいだ。
「現在の日本は、英国、米国と並ぶ世界ボクシングの温床になっている。井上、中谷、寺地拳四朗(BMB)と3人がパウンドフォーパウンド(PFP)・ランキング(ヘビー級からミニマム級の全階級をして最強を決めるランキング)に入っているのは見事。日本ボクシングは素晴らしい時間を過ごしている」
リングマガジンの編集人を務める英国人ライター、トム・グレイ氏はそう述べていたが、隆盛の時代を迎えた日本ボクシングの中で中谷が井上に次ぐ牽引車になっていることにもう疑問の余地はないだろう。
来春にPFPトップ5同士の夢の対決となる可能性も
「私は中谷がバムよりも上でいいと思う。(1月の防衛戦で)中谷は私が期待していたデビッド・クエジャル(メキシコ)を(3回KOで)圧倒し、今回はいつもより少し打たれたものの、西田を6回でストップした。西田戦はもっと長い戦いになると思っていた。中谷を6位に上げ、7月に予定されるバムの次戦で彼が再び上回れるかどうかを判断すべきではないか」
英国在住のアンソン・ウェインライト記者がそう述べたのを始め、筆者を含め、中谷のランクアップに賛同するパネリストも出てきている。
一方、反対意見もないわけではない。「今回の中谷は少々打ち急ぎすぎていて、いつものように洗練された勝ち方ではなかった。現状ではバムのレジュメのほうが上だと思う」と記したグレイ氏を筆頭に、ランキングに変化なしを主張する選定委員も複数名いる。結果は予断を許さないが、ここでの結論がどうであれ、現時点での中谷はすでに世界でもほんの一握りのボクサーであると認められていることは伝わってくるはずだ。
来春、日本での挙行が計画される井上尚弥対中谷の直接対決はもはや日本だけのスーパーファイトではない。世界的に見てもファン垂涎(すいぜん)の一戦であり、実現の頃には中谷がPFPで5位以内に入り、トップ5のボクサー同士の激突になっても不思議はないのだろう。今更ながら、本当にすごい時代が来たものである。これほどの強豪が日本から続々と出てくる時が訪れたことを、同世代に生きる私たちは喜び、誇りに思うべきに違いない。