ニューヨークで大一番に挑む三代大訓の流儀 難関の階級で東京五輪金メダルの大物相手にサプライズを誓う
“スーパーBサイド”として
世界初挑戦の切符をかけ、マディソン・スクエア・ガーデンのシアターで相対するのはIBF3位のアンディ・クルス(キューバ/29歳、5勝2KO無敗)。東京五輪金メダル、世界選手権3連覇など、アマチュア時代に輝かしい実績を残し、大手プロモーションのマッチルームと契約した大物である。
ライト級(体重61.2kg以下)で誕生した日本人世界王者は、1970年代のガッツ石松(ヨネクラ)、2000年代の畑山隆則(横浜光)、小堀佑介(角海老宝石)の3人のみ。世界挑戦からも久しく遠ざかっている。
近年は、2019年7月に中谷正義(井岡=当時)が現WBO世界スーパーライト級王者のテオフィモ・ロペス(アメリカ)と、2023年4月には吉野修一郎(三迫)が現WBC世界ライト級王者のシャクール・スティーブンソン(アメリカ)と、アメリカで世界挑戦権をかけて戦ったが、日本のライト級を代表する2人も世界的強豪の壁を突破することができなかった。
今年に入り、毎月のように国内で複数の世界戦が開催されている。この6月19日にはウェルター級で佐々木尽(八王子中屋)が世界初挑戦。また昨年9月には平岡アンディ(大橋)がスーパーライト級の世界挑戦権をつかむなど、軽量級のみならず中量級でも世界につながる戦いが国内で実現している。
そんな中、海外に打って出る三代は「僕は、そんな強い相手を呼んでもらえるような選手じゃないんで。最初から考えてないですよ」と屈託なく笑った。
「(実現するとしたら)“スーパーBサイド”として呼ばれて、当たり前に向こうに行くと思ってましたし、僕のボクシング人生的に『そうだろうな』と思ってた通りです」
自らを“雑草”と称したことがある。一見、ジャブを基調としたスマートなスタイルに見えて、「セオリーじゃない」無二の戦い方を追求してきた。
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虎と戦うわけじゃない
《僕のボクシングはここ一番の勝負強さが強みで、今までも何度も下馬評を覆してきました。この試合もサプライズを起こします》
それでは、抜群のスピードと身体能力、攻防ともに流麗かつ高い技術を備えるクルスに対し、どうサプライズを起こすのか。
「作戦はないですよ(笑)」
三代のチーフセコンドも務める石井一太郎・横浜光ジム会長は冗談めかして、こちらの機先を制した。真意はこうだ。
「三代の場合、自分から『こういう戦い方をしたい』と言ってきます。ワタナベジムのときからそういうスタイルでやってきたので。じゃあ、そう進めていく上で、もう少しこうしたほうがいいとか、こうやろうということは当然、話し合いますけど。基本的なことは本人が考えます」
クルスについて、三代は「ボクシングの技術的なところで言ったら、自分が通用するのか、そもそも(自身の代名詞である)ジャブが当たるのか、どんだけスピードがあるのかとか、いろいろ不安は多い」と認めた上で「でも、必要以上にビビることはないと思ってます」と続けた。
「別に虎と戦うわけじゃないし(笑)。29歳、成人男性、同じ体重の人とボクシングをする。ぐらいに捉えてます」
《モチベーションがすごく高い》としていたニューヨークという場所についても「特にめっちゃ嬉しいとか正直なくて、思い入れも別にないですし。会場を気にしてる余裕もない相手なんで。ラッキーぐらい」と淡々としたもの。
「大前提のメンタル」として、戦う相手も、戦う舞台も特別視し過ぎず、すべて等身大に捉える、という意思が感じられた。
「相手に合わせてとか、そういうのじゃなくて。今まで自分がやってきたボクシングを貫くことじゃないですかね。しっかり戦略を立てて、準備して、それを持っていって、向こうでやり抜くのみです」