結束を強めた青空ミーティング、探り当てた最適解 浦和レッズが4度目のクラブW杯でリーベル、インテル、モンテレイに挑む

菊地正典

あのころの阿部勇樹や鈴木啓太のように

昨夏、ドイツから10年ぶりに浦和に復帰した原口元気。「縁の下の力持ち」として欠かせぬ存在だ 【(c) J.LEAGUE】

 指揮官にとっての最適解となった選手たちの活躍、新加入選手の奮闘……。だが、チームを蘇らせたのは、彼らだけではない。

 そこには、レギュラーの座を失った選手、あるいはレギュラーを期待されていたにもかかわらず、その座を得られていない選手たちの貢献もある。

 例えば、関根は4月2日の清水戦以降、スタメン出場の機会が限られているが、キャプテンとしてチームがポジティブな雰囲気で試合に向かえるような言動を心掛けている。

 その影響を感じている1人が、右サイドバックのポジションでしのぎを削る石原だ。

「タカ君はアドバイスもくれますし、『こういうときはどうしたらいい?』と聞いてくることもあります。アドバイスし合うという関係は本当によくやれていると思いますし、それはタカ君の人間性のおかげです」

 10年間プレーしたドイツから昨夏に復帰した原口元気も、スタメン出場が少ないばかりか、出場機会を得られないゲームもあるというのに、練習では常に全力でプレーし、全体練習終了後も若手とともに汗を流しながら、アドバイスを送っている。

 関根も、原口もあの4月9日のミーティング以降、出場機会・出場時間をむしろ減らしている。それなのに、彼らの姿勢は変わらない。

 かつての浦和には、平川忠亮、阿部勇樹、鈴木啓太、宇賀神友弥ら、どんな状況におかれても全力を尽くす姿を後輩に見せてきた選手がいた。若いころは弟キャラだった関根、やんちゃだった原口がいま、先輩たちのような存在になっている。

 さらに、2人はこれから挑む世界との戦いに向けてもチームをひとつにしようとしている。

 6月14日、クラブW杯がいよいよ開幕する。

 ナショナルチームのW杯と同じく4年に一度の開催となり、参加クラブ数もフォーマットも大きく変わる大会において、浦和はグループステージでリーベル・プレート(アルゼンチン)、インテル(イタリア)、モンテレイ(メキシコ)と対戦する。世界一を争う大会にふさわしく、いずれも各国・各大陸を代表する名門クラブだ。

 だが、敵わない相手ではない、と原口は説く。

「意外と差はないよ、ということをみんなに伝えていきたい」

 これは、クラブW杯の出場権をつかむことになったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2022決勝のアル・ヒラル戦を前に、興梠慎三が若手に伝えた言葉と酷似している。

21年の天皇杯からつなげてきた思い

横浜FC戦で埼スタを真っ赤に染めた浦和サポーター。選手たちは最高の雰囲気の中で逆転勝利を飾り、壮行セレモニーを行った 【(c) J.LEAGUE】

 当時の興梠はアル・ヒラルの強さを認めていたが、若い選手たちにあえて「たいしたことない」と話していた。ACL優勝も、決勝での敗戦も経験しているベテランの言葉によって若手が臆せず戦えたことは、アジア制覇の要因のひとつだった。

 実は原口は、今季の欧州チャンピオンズリーグ決勝にスタメン出場したインテルのヘンリク・ムヒタリアン、ハカン・チャルハノールとブンデスリーガで対戦している。そんな原口の言葉だからこそ、若手には説得力をもって響くことだろう。

 関根は横浜FC戦後に行われた壮行セレモニーで、次のように話していた。

「このW杯は、いまいる選手、スタッフだけではなく、たくさんの仲間たちが関わって出られる大会でもあります。そういった選手たちの想いも背負って戦ってきたいと思います」

 浦和は22年度のACLを制したことで今回のクラブW杯への出場権を得たが、ACLに出場できたのは21年度の天皇杯で優勝したからだ。後半アディショナルタイムに槙野智章が劇的なゴールを決めて大分トリニータを下したが、この決勝だけでなく、そこまでの道のりで1試合でも落としていたら、クラブW杯出場はなかった。

 その戦いが始まったのは21年6月9日。4年に一度の開催になったクラブW杯は、浦和にとってまさに4年間の集大成となる。

 その戦いのすべてを知る関根は、かつての仲間たちの思いも背負い、その思いをいまの仲間たちと共有して世界に挑もうとしている。

「4年に一度のクラブW杯にいろんな人たちが関わって出られる。いまいる選手たちにとっては、ご褒美ではないというか、その責任を考えてプレーしないといけないと強く思っている」

 大会方式が大きく変わるだけに、どんな結果になるのか予想は難しい。

 だが、日本で最多となる3度のアジア制覇と3度のクラブW杯出場という実績からも分かるように、世界に懸ける思いの強さは、過去に示してきた。サポーターを含めて一丸となって一点に熱を注いだとき、浦和はとてつもない力を発揮する。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

福島県出身。埼玉大学卒業後、サッカーモバイルサイトを運営するIT企業を経て、フリーランスに。2025年はサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフユナイテッド市原・千葉の担当記者を務める傍ら、サッカー日本代表や過去に担当した浦和レッズや横浜F・マリノス、川崎フロンターレなどJリーグを中心に取材している。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』(スクワッド)、『トリコロール新時代』(スクワッド、三栄書房)がある。

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