結束を強めた青空ミーティング、探り当てた最適解 浦和レッズが4度目のクラブW杯でリーベル、インテル、モンテレイに挑む

菊地正典

トップ下に入る渡邊凌磨(左)と左サイドハーフのマテウス・サヴィオ。この2人が浦和の攻撃陣をけん引する 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 出場チーム数が32に増加し、規模もレギュレーションも新しくなったクラブワールドカップが6月14日(現地時間、以下同)、アメリカで開幕する。アジア代表として日本から出場するのは、浦和レッズ。現在、J1リーグで暫定3位と好調を維持しているが、ここまでの道のりは順風満帆ではなかった。V字回復のきっかけはどこにあったのか。グループステージでリーベル・プレート、インテル、モンテレイと激突するチームの現状に迫った。

トレーニングが一向に始まらない

 いつもと様子が違ったのは、シーズン開幕から約2カ月が経った2025年4月9日のことだった。

 練習開始の時刻を迎えると、選手たちがマチェイ・スコルジャ監督を囲むようにして円陣を組み、指揮官の話に耳を傾ける。これが大原サッカー場の普段の光景だ。

 青空ミーティングは早ければ1分、長くても5分程度で終わることがほとんどだ。

 ところが、その日は指揮官の話がなかなか終わらない。ようやくトレーニングが始まったのは、集合してから15分後のことだった。

 その2日前、浦和レッズは敵地でアビスパ福岡に0-1で敗れていた。

 開幕4試合で2分2敗と勝利がない状況から、次の4試合を2勝2分として勝敗を五分に戻したが、福岡戦で再び黒星が先行することになった。

 その直後に行われた“緊急ミーティング”――。

 勝負はここからだ、という指揮官の、チームの意気込みが伝わってくる光景だった。

 このミーティングの4日後、国立競技場でのFC町田ゼルビア戦に、浦和は今季一番とも言うべき内容で2-0と快勝する。

 キャプテンを務める関根貴大は試合後、練習場での出来事をこう振り返った。

「監督の話はポジティブな内容でした。福岡戦は結果は残念だったけど、選手たちは力を尽くしていたし、内容は悪くなかった。これを続けていこう、と。そういう話がメインでした」

 指揮官は選手たちを激励し、鼓舞した。選手たちはその期待に応えてみせた。

 浦和はそれから、京都サンガF.C.(○2-1)、横浜F・マリノス(○3-1)サンフレッチェ広島(○1-0)、東京ヴェルディ(○2-0)を下して破竹の5連勝を飾る。この連勝記録は浦和にとって16年以来、実に9年ぶりのことだ。

 スタートダッシュに失敗して一時は19位に沈んだチームは、最高で2位にまで浮上した。

指揮官がようやく探り当てた最適解

抜群のスピードを誇る松尾佑介。裏抜けやチェイシングで相手を困惑させる 【(c) J.LEAGUE】

 このV字回復の要因として挙げられるのは、福岡戦での敗戦のショックを引きずらず、むしろ結束が強まったことに加え、『最適解』が見つかったことだろう。

 マチェイ監督は、町田戦でメンバーと配置の変更を試みた。

 ワントップに起用されたのは、22-23シーズンにウェステルロー(ベルギー)でプレーしていた松尾佑介。2列目には、北海道コンサドーレ札幌からディナモ・ザグレブ(クロアチア)、コルトレイク(ベルギー)を経て今季加入した金子拓郎、加入1年目の昨季から中心選手となっている渡邊凌磨、柏レイソルから今季やって来たマテウス・サヴィオが並んだ。

 ボランチでは、開幕からスタメン出場を続ける安居海渡のパートナーに「プレシーズンの段階ではファーストチョイスではなかった」と指揮官が明かしたスウェーデン代表のサミュエル・グスタフソンが指名された。

 町田戦2試合前の清水エスパルス戦からは右サイドバックに石原広教が、町田戦の前節・福岡戦からは左サイドバックに長沼洋一が起用されていた。不動の存在であるGK西川周作、センターバックのマリウス・ホイブラーテンとダニーロ・ボザを除き、スタメンに少しずつメスが入れられてきたが、町田戦でマチェイ監督はついに最適解を見つけたのである。

 5連勝を果たした浦和は、続く5月6日のガンバ大阪戦に0-1で敗れて連勝ストップ。以降6試合で1勝3分2敗とやや停滞したものの、その間にも新加入の松本泰志やプロ5年目でJ1通算100試合出場を達成した大久保智明らが途中出場で結果を残し、チーム内の競争力がさらに高まった。

 そして、クラブW杯前最後の試合となった6月1日の横浜FC戦は、先制を許しながら、グスタフソンの2ゴールで逆転勝利。消化試合が最も多いとはいえ、2位の京都と勝ち点で並ぶ3位の好位置につけ、チームはアメリカへと旅立った。

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著者プロフィール

福島県出身。埼玉大学卒業後、サッカーモバイルサイトを運営するIT企業を経て、フリーランスに。2025年はサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフユナイテッド市原・千葉の担当記者を務める傍ら、サッカー日本代表や過去に担当した浦和レッズや横浜F・マリノス、川崎フロンターレなどJリーグを中心に取材している。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』(スクワッド)、『トリコロール新時代』(スクワッド、三栄書房)がある。

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