結束を強めた青空ミーティング、探り当てた最適解 浦和レッズが4度目のクラブW杯でリーベル、インテル、モンテレイに挑む
トレーニングが一向に始まらない
練習開始の時刻を迎えると、選手たちがマチェイ・スコルジャ監督を囲むようにして円陣を組み、指揮官の話に耳を傾ける。これが大原サッカー場の普段の光景だ。
青空ミーティングは早ければ1分、長くても5分程度で終わることがほとんどだ。
ところが、その日は指揮官の話がなかなか終わらない。ようやくトレーニングが始まったのは、集合してから15分後のことだった。
その2日前、浦和レッズは敵地でアビスパ福岡に0-1で敗れていた。
開幕4試合で2分2敗と勝利がない状況から、次の4試合を2勝2分として勝敗を五分に戻したが、福岡戦で再び黒星が先行することになった。
その直後に行われた“緊急ミーティング”――。
勝負はここからだ、という指揮官の、チームの意気込みが伝わってくる光景だった。
このミーティングの4日後、国立競技場でのFC町田ゼルビア戦に、浦和は今季一番とも言うべき内容で2-0と快勝する。
キャプテンを務める関根貴大は試合後、練習場での出来事をこう振り返った。
「監督の話はポジティブな内容でした。福岡戦は結果は残念だったけど、選手たちは力を尽くしていたし、内容は悪くなかった。これを続けていこう、と。そういう話がメインでした」
指揮官は選手たちを激励し、鼓舞した。選手たちはその期待に応えてみせた。
浦和はそれから、京都サンガF.C.(○2-1)、横浜F・マリノス(○3-1)サンフレッチェ広島(○1-0)、東京ヴェルディ(○2-0)を下して破竹の5連勝を飾る。この連勝記録は浦和にとって16年以来、実に9年ぶりのことだ。
スタートダッシュに失敗して一時は19位に沈んだチームは、最高で2位にまで浮上した。
指揮官がようやく探り当てた最適解
マチェイ監督は、町田戦でメンバーと配置の変更を試みた。
ワントップに起用されたのは、22-23シーズンにウェステルロー(ベルギー)でプレーしていた松尾佑介。2列目には、北海道コンサドーレ札幌からディナモ・ザグレブ(クロアチア)、コルトレイク(ベルギー)を経て今季加入した金子拓郎、加入1年目の昨季から中心選手となっている渡邊凌磨、柏レイソルから今季やって来たマテウス・サヴィオが並んだ。
ボランチでは、開幕からスタメン出場を続ける安居海渡のパートナーに「プレシーズンの段階ではファーストチョイスではなかった」と指揮官が明かしたスウェーデン代表のサミュエル・グスタフソンが指名された。
町田戦2試合前の清水エスパルス戦からは右サイドバックに石原広教が、町田戦の前節・福岡戦からは左サイドバックに長沼洋一が起用されていた。不動の存在であるGK西川周作、センターバックのマリウス・ホイブラーテンとダニーロ・ボザを除き、スタメンに少しずつメスが入れられてきたが、町田戦でマチェイ監督はついに最適解を見つけたのである。
5連勝を果たした浦和は、続く5月6日のガンバ大阪戦に0-1で敗れて連勝ストップ。以降6試合で1勝3分2敗とやや停滞したものの、その間にも新加入の松本泰志やプロ5年目でJ1通算100試合出場を達成した大久保智明らが途中出場で結果を残し、チーム内の競争力がさらに高まった。
そして、クラブW杯前最後の試合となった6月1日の横浜FC戦は、先制を許しながら、グスタフソンの2ゴールで逆転勝利。消化試合が最も多いとはいえ、2位の京都と勝ち点で並ぶ3位の好位置につけ、チームはアメリカへと旅立った。