出遅れた神戸と町田、危機的状況の横浜FMの謎を解く 識者3人による25年シーズン前半戦のJ1検証座談会【後編】
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明らかに落ちている町田のプレー強度
佐藤 町田は、明らかにあのパワハラ報道が出た頃から失速しましたよね。いやがおうでも雑音が耳に入ってきますし、チーム内に少なからず動揺はあったと思います。
もちろん、昨シーズンの同時期と比べて得点が減り、失点が増えているんだから、数字上からも苦しんでいるのは明らかですよね。ガチガチに守るのではなく、多少ボールを持つ時間を作ろうと、新しいことにトライしている影響もあるんでしょうが、それがうまくいかずに不用意なロストからの失点が目立つようになってしまった。リーグ最少失点を誇った、昨シーズンの町田のいい部分がここまで出せていません。
舩木 確かに、新たなチャレンジをしている印象がありますね。ロングボールとかロングスローに頼らない攻撃、自分たちでチャンスを作り出すサッカーに少し舵を切った結果、拠り所を失ってしまったというか、やりたいことが後ろと前で噛み合わなくてバランスを崩しています。
後ろは5枚で守っているのに、けっこうクロスから点を取られたりもしている。新戦力の菊池流帆が怪我をしていて、3センターバックは昌子源、ドレシェヴィッチ、岡村大八あたりがゴールデンウイークの連戦中もほぼ出ずっぱりで、かなり負担がかかっているのではないかと。ただ、去年みたいに割り切った戦い方に徹すれば、原点回帰を図れる余地はまだあると思いますね。
河治 プレー強度が明らかに落ちていますよね。岡村なんかは、開幕直後のパフォーマンスを見るかぎり確実にE-1選手権(7月7日開幕)の日本代表に選ばれるんだろうなという感じだったんですが、今はもういっぱいいっぱいで、よく怪我をしないなって思うくらい。
補強をしてタレントの質は上がっているはずなんですが、それがチーム力に昇華されていない。ボールをつなぐことを意識するようになったせいか、得意のロングボール戦術でも、「ここに蹴ったらここに走り込む」みたいな約束事が、かなりアバウトになってしまっています。ユニットとしては、相馬勇紀と中山雄太の左サイドにボールが入ったときくらいしか狙った形になっていませんからね。後半戦の爆発を期待したいけど、残念ながら厳しいだろうというのが僕の見立てですね。
──ようやく上位に顔を出してきた神戸はどうですか?
舩木 町田と神戸は、この1、2年のJリーグのトレンドをけん引してきたチームじゃないですか。両チームとも昨シーズンまでのやり方がまだ通用するはずなのに、やりきれていない。噛み合えば全然上に行く力を持っているはずなんですけどね。
佐藤 ACLエリートでベスト16敗退のショックも大きいんでしょうが、神戸も怪我人の多さが序盤戦の足踏みにつながってしまった。特にあのチームは、酒井高徳がいるといないとで大きく変わってしまう。さらに武藤嘉紀と大迫勇也もコンディションが整わず、2人がそろって試合に出られない状況が続いていますよね。
第10節の東京ヴェルディ戦で復帰した酒井が、試合後に「基準が足りていない」と語っていましたが、神戸がやろうとしていること自体は昨シーズンから変わっていないし、メンバーさえそろえば優勝戦線に絡んでくると思うんです。単なるキックアンドラッシュとは違って、「どこに蹴るか」を明確にチームとして共有しているのが神戸の強み。今はそれができていませんが、3月に町田から期限付き移籍で加入したエリキをうまく生かせるようなメンツがそろってきたら、まだまだ優勝の可能性はあるんじゃないかと見ています。
舩木 誰かが復帰してくると誰かが怪我をするみたいな状態で、去年のベストメンバーがバシッとそろうような試合って、序盤戦はほとんどなかった。酒井以外にもディフェンスラインではマテウス・トゥーレルも離脱していた時期がありましたし、さらに宮代大聖と佐々木大樹は夏に海外に出て行ってしまう可能性もあります。もし、大迫や武藤以上に今のチームを支えている若い彼らが抜けたら、コンディションが整いきらないベテランに頼るしかないチームになってしまう。そうなるとかなり厳しくなるのかなと。
河治 アカデミー育ちの山内翔とかが、経験を積みながら去年の宮代、佐々木の基準にまで上がってきてほしいというのが吉田孝行監督の願いなんでしょうが、まだ思うように伸びてきていませんからね。ただ、それ以上に大迫と武藤がフル稼働できなかったことが痛い。エリキも個では違いを生み出していますが、まだまだ異物感が否めません。ロングボールをいかに有効に使うかというのが生命線なので、あくまでエリキは大迫や佐々木がうまく稼働して、そこにプラスアルファという存在かなと思います。
それから、明らかにプライオリティが高かったACLエリートで、ファイナルラウンドにさえ進めなかったショックはやはり大きいと思います。秋から始まる2025-26シーズンのACLエリートを捨ててJリーグに専念するとなれば、それなりに勝ち点は拾えていくと思いますが、おそらくクラブとしてアジア制覇という大目標を捨てることはできないでしょう。ACLエリート初制覇かリーグ3連覇か。どっちも獲りに行ったら、二足のわらじに苦しむことになりそうな気がしています。
東京Vを悩ます“2年目のジレンマ”
佐藤 ここにもE-1で見たい活きのいい若手がたくさんいるんですけどね。ただ、そうは言っても選手層が薄く、J1でコンスタントに勝ち点を積み重ねていくには、ちょっと力不足と言わざるを得ません。
一番の問題はセットプレーからの失点の多さ。セットプレーの守備は改善しようと思えばできるはずなのに、そこまで手が回っていないのか、あるいは注意していても守り切れないのかは分かりませんが、それが原因で勝てる試合を引き分けたり、引き分けられる試合を落としたりといったことが続いている。そもそもチャンスの数自体が少ないので、この問題を解決できないと、勢いを持続させるのは難しいでしょうね。
舩木 横浜F・マリノスと引き分けた試合(第3節)なんて、前からガンガン行って勢いも感じたんですけど、3月の終わりくらいからちょっとずつパフォーマンスが落ち始めて、ゴールデンウイークに2連敗。たぶん1週間に1試合のペースなら確実に力を発揮できるチームだと思うんですが、選手層が薄いので連戦となると耐えきれなくなってしまう。前線の組み合わせが変わると、縦に速い攻撃という持ち味を出し切れないときもありますよね。新加入の小田裕太郎あたりがハマってくれば、プラスアルファも生まれてくるんでしょうが、彼もまだそこまでの状態にありません。
河治 開幕3連勝のなかで特に浦和レッズを2-1で倒した第2節の試合なんかは、最初からトップスピードで行ってどんどん裏を突いてやりたい放題でしたが、良くも悪くもシンプルなサッカーなので、対策されると湘南の良さが出せなくなるんです。対応型の守備を強いられて後手に回る状況になると、なかなか裏返せない。
そんななかで期待したいのは、平岡大陽。湘南のエンジンであり、攻撃の起点である彼が怪我から復帰してきたことで、底上げされるんじゃないかと思っています。とはいえ、現状の戦力値を考えると夏場はさらに苦しくなってくるでしょうね。
──昨シーズンに6位と大健闘した東京ヴェルディと、新たに松橋力蔵監督を迎えたFC東京の東京勢はどうでしょう?
佐藤 去年、持っているものの最大値を出したチームが、ほぼ戦力の維持に成功したわけですから、開幕前はヴェルディの選手たちの口からも「昨シーズン以上」という言葉がよく聞かれました。ただ、それってよほどのプラスアルファがないと、かなり難しいことなんです。
強度勝負で劣勢になると、ゴールへの道筋がなくなってしまうという問題がこのチームにはあるんですが、相手の対策も進んだ今シーズンは、去年みたいにガンガンハイプレスに行けなくなっている。どうしてもミドルに構えざるを得なくなって、行ききれずに後手に回る試合が増えている印象ですね。強度勝負で得ていた攻めの優位性みたいなものが、今年はあんまり見られない。
舩木 データ的に見ても、ゴール期待値はリーグ最下位だし、そもそもシュート数自体が少ない。フィニッシュに持ち込むパターンが限られ、後ろは後ろでクロスからの失点がかさんでいます。佐藤さんもおっしゃるように、去年からメンバーもそんなに変わっていないはずなのになぜなのかって考えると、“2年目のジレンマ”じゃないですけど、うまくいっていたがゆえに、次を目指そうとして本来の魅力を見失ってしまったのかもしれません。戦い方に迷いがあるから、いい形の攻撃だったり、個人の思い切りの良さみたいなものにつながってこない。
河治 ヴェルディは、負けたときは必ずと言っていいほど「球際がどうこう」という話が出てきますが、ちゃんと見ればやっぱり設計の段階に問題があると思うんです。後ろを5枚にして蓋をするという撤退戦術があるので、それで何とかしようとしていますけど、前ではめられない試合が明らかに増えている。よく“町田慣れ”って言われますが、“ヴェルディ慣れ”もあるんですよね。昨シーズンに2回対戦して、今シーズンもメンバーがあまり変わっていないとなれば、相手もしっかりと対策できますから。
そうしたなかで求められるのは、個々のアップデートだと思うんですが、多くの選手が去年の自分を超えられていない。だとすれば、期待するのは新戦力。福田湧矢あたりは頑張ってはいるんですが、それでも突き抜ける何か、ヴェルディの新しい軸になるような選手は出てきていません。平川怜も城福(浩)さんの基準に沿ったプレーばかりで、いい意味で遊んでいない。ある種、ヴェルディの一兵卒みたいになっているのが、すごく残念ですね。エースの木村勇大が復活することも大事ですが、去年は戦力として名前がなかった選手が台頭してこないと、残留争いに巻き込まれてしまう可能性が高い。