米山裕太が駆け抜けた東レ、代表の19年間 痛みすら「楽しみ」に変えた探求心

田中夕子

痛みとの戦いを「楽しさ」に

現役生活の終盤は「新しいことを探しながら」の日々だった 【写真提供:SV.LEAGUE】

 アスリートの現役生活に永遠はない。わかっていても、米山の現役引退が発表されると、多くの選手やファンが「まだできる」と惜しんだように、劣勢で投入された直後に難なく上げるサーブレシーブや、リリーフサーバーでブレイクを繰り返す姿を見れば、「まだできる」と言いたくなる。

 40歳を超えてもなおそう思わせる姿を見せ続ける。日々、生活から徹底し、練習でも自身の身体やプレーと向き合ってきたからこそ為せる業ではあるのだが、米山自身も、年齢を重ねてから味わう新たな楽しさもあった、と語る。

「30代になってからは、常に新しいことを探しながらやってきました。どこかしらに痛みがあったり、試合に出られなくてバレーボールがうまくいかない、楽しくない時期ももちろんありましたけど、でもそこからどうすれば改善できるかアクションをとる。痛いところがあっても、痛みが出ないように考えて、やってみて、実際に改善できたらまた一番いいときの自分に戻れる、と思ってやり続けてきたので、しんどい、くじけそう、つらい、痛いというときがあったとしてもやり続けられた。それすらも楽しさに変えることができたのかな、って今は思いますね」

 とはいえ、突如のケガやチーム事情もある。いくら自分が「やりたい」と望んでも続けられるばかりではなく、志半ばで引退していく選手も多く見てきた。米山が「毎年、チームでの面談のたびに『今年で終わり』と言われるんじゃないかとビクビクしていたときもあった」と振り返るのも決して大げさではない。

 引退を決断する数年前にはアキレス腱の痛みに悩まされ、練習も100%でできず、プレーも思うようにできない時期が続いた。試合にも出られず、こんな思いや痛みが続くのならもう辞めようか、と覚悟を決め、日本代表からの盟友でもある永野健(現・大阪ブルテオンコーチ)に相談した。

「アキレス腱の痛みがどうにもならなくて、無理かもしれない。俺、辞めようと思ってるんだ」

 間髪入れず、1歳下の永野にキレられた。

「何言ってんの? ありえんわ」

 あまりに潔くそう言われたら、自然と、じゃあもう一度頑張るか、と気持ちも前を向いた。同時期に、トレーナーから提供された治療法を試すと痛みもなくなり、現役生活を最後まで全うすることができた。でもね、と米山が笑いながら言った。

「あんだけ言っといて、永野のほうが先に辞めたんですよ(笑)。彼はプロ選手だし、いろんな事情や思いがあって決断したことなので何も言えないですけど、この間会ったときには言いました。『お前、自分はあっさり辞めたよな』って(笑)。今ではお互い、笑い話です」

次のステージはどうなる?

4月13日の大阪ブルテオン戦はリリーフサーバーとして出場 【写真提供:SV.LEAGUE】

 現役最後の試合は、4月13日の大阪ブルテオン戦。リリーフサーバーとして出場し、試合後には東レだけでなくブルテオンの選手も加わった胴上げで、高く、美しく宙に舞った。

 バレーボール選手・米山裕太として歩み、刻んできた章はこれで終わり。新たな旅立ちに向け、改めて自身で見る「米山裕太」とは、どんな選手だったのか。たずねると、難しいですね、と言いながら、少し考え、言葉を紡ぎ出す。

「自分で言うのもおかしいかもしれないけれど、努力して、真摯に取り組んできたとは思います。身長が高いわけでも、才能があったわけでもないけど、貪欲だった。学ぼうとする姿勢、うまくなることに対して常に求め続けてきて、どうすればうまくなれるか。試合に出られるか。めちゃくちゃ貪欲に探究し続けてきました。いろんな選手、指導者に出会って、その人たちからも吸収したい、うまくなりたいという気持ちは人一倍強かった。マイペースで負けず嫌いで、そういう選手でした」

 いいときも、うまくいかないときも、自分を信じて貪欲に、いつも努力を重ねてきた。だから多くの人たちを魅了し、心を惹きつけた。

 これからは、また別のステージで――。

「これまで以上に自分自身も成長して、これまで培ってきた技術や経験、メンタル的な部分も選手に伝えたい。バレー界に、還元していきたいです」

 米山裕太の新たな物語が始まる。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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