「F1の華」モナコGPが消滅の危機? 再生のためにすべきことは
もはやF1にモナコは不要?
レースの世界で、重くなっていいことは何もない。燃費は悪くなり、ブレーキやタイヤへの負荷は高まり、何よりキビキビとした動きがなくなってしまう。そして万一クラッシュした際の衝撃エネルギーは、重量の2乗に比例する。重くなればなるほど、ドライバーやマシンへの影響は増す。それを防ぐための衝撃吸収デバイスなどの設置で、マシンはさらに重くなるいたちごっこだった。
そして大きな車体は、コース幅の狭いモナコでは致命傷となる。実際、2017年に車幅が20cm広がっただけで、前年15回あったコース上での追い抜き回数は、わずか3回に激減した。かつてはトンネル出口のシケインでのブレーキングが、数少ないオーバーテイクポイントだった。しかし今や、そこで仕掛けようとするドライバーは皆無だ。肥大化し、もっさりした挙動の今のF1マシンでは、シケイン入口で横に並んで一瞬にして抜き去っていくことなど、不可能だからだ。
2年続けて、抜けないだけでなく単調すぎるレースが続いたことで、「もはやF1にモナコは要らない」という声すら出てきた。しかしモナコには、他のグランプリでは絶対に味わえない特別感があると、僕は思う。
モナコよ永遠なれ
世界中から集まった大金持ちが豪華クルーザーや超高級ホテルのバルコニーから観戦する。まるで古代ローマの貴族たちが奴隷出身の剣闘士たちの死闘を眺めたように。さらにモナコは王室が観覧する御前レースであり、他のグランプリのような表彰台はない。太公より高い位置にドライバーが立つことは失礼にあたるからだ。シャンペンファイトも同様の理由で、2019年まではロイヤルファミリーの前では決して行われなかった。
ひとことで言えば、時代錯誤ぶりも甚だしい。しかしそれもモナコの魅力なのだ。そもそもこれだけ建物が密集する市街地の、狭く曲がりくねった道路でレースをすること自体が、最大の時代錯誤と言えるだろう。
だとすればモナコは、グランプリの舞台から消えるしかないのか。一方でF1側も現行F1マシンがあまりに重く、大きすぎることは痛感している。すでに来季の車体は30〜50kg軽量化され、小型化も進められる方向だ。
さらにモナコだけの特別ルールに関しても、たとえば予選は1台ごとのスーパーラップにするとか、レースは土日の2ヒート制にするとか、色々なアイデアも出ている。1年後のモナコGPがどう変わっているのか、楽しみに待ちたいと思う。
(了)