スカウトが振り返る、あの年のドラフト指名

元中日チーフスカウト・米村明が明かす獲得秘話 ドラ4で郡司、ドラ5で岡林を指名した理由

永松欣也

「そういえば・・・・・・」と思い出して指名した岡林

岡林勇希は3年目にはレギュラーになり、最多安打を獲得した 【写真は共同】

 5位指名では与田監督がバッターを欲しがった。だがこの時点でめぼしい野手の候補はほとんど残っていなかった。この時は中日の指名で5分くらい会議が止まっていたと思うが、指名する野手がいなくて頭を悩ませていたのだ。そのときふっと頭に思い浮かんだのがスカウトの清水昭信のことだった。清水はスカウト会議が終わってからも「米村さん、もう一回岡林(勇希)を見てください!」としつこく言ってきていた。「見るけど、ピッチャーとしてはダメやぞ。7四球も出してKOされてコールド負けしたやないか」とそのときは話していたが、そのことが頭をよぎった。それから「そういえば・・・・・・」と、私が観に行った3試合全部で岡林がホームランを打っていたことを思い出した。それもインコースのボールをパーンと上手く打ち返しての一撃。それで与田監督に「岡林というのは小さいですけど150キロ投げられて肩が良くて足もあります。野手で育てるのも面白いと思いますよ」と話して、それで岡林を5位で指名した。岡林があれだけ活躍することが分かっていればうちも含めて他球団も上位で指名していたと思うが、評価が低かったのはやっぱり最後の夏に早くに負けてしまったことにある。あとはピッチャーとして見ていた球団がほとんどで、スピードは150キロは出るけれどコンロールは悪いという印象で、バッターとしての良い時を見ていた球団がほとんどなかったことに理由があったと思う。

 1年目の後半からは一軍で試合に出たし、3年目にはレギュラーになり161安打で最多安打も獲った。こんなに早く活躍するとは思っていなかった。今は少し下手になっているけれど出始めの頃はインコースを回転でパーンと打てていた。これは良い選手になるなぁ、間違いなく2000本打つなぁと思いながら岡林の活躍ぶりに目を細めたものだった。

 プロ1年目、岡林は私にこんなことを言ったことがあった。

「米村さん、僕は粘ってフォアボールを選んで盗塁します。僕は足があるからそれを生かせば良いんですよね?」

 それを聞いてこいつはちょっと他の選手と違うな、自分の特徴をよく分かっているなと感心したし、野球に対して素直だから天狗にならずにそのまま伸びていくタイプかもしれないと思った。素直ではあるけれど、自分の考えをしっかり持っているから周りのコーチに何を言われても自分の芯の部分が揺るがない。その芯が段々と太い幹になっていっている。そんな印象を受ける。それはプロ野球選手として成功する人に共通するとても大事な部分。そういった部分までアマチュア時代に見抜くことはなかなか難しい部分ではあるのだけれど。

 6位で獲った札幌創成の竹内龍臣。これは一年目の夏に右肘を怪我して二年目から育成契約になったが、怪我がなければ将来は一軍でバリバリやれたと思うしローテーションに入っていてもおかしくはない、それくらいのピッチャーだった。特に糸を引くような真っ直ぐが良かった。スピード自体は143、4キロくらいだが、バッターはそれ以上に速く見えたはずだ。

 中学の頃に肘を痛めたことがあるというのは聞いていたけれどプロ入り時には問題はなかったし、この順位で獲るには十分な魅力があった。昨年限りで育成契約も切られたのはちょっともったいなかった気がした。

 選手には失礼な言い方になってしまうが、下位指名、それも6位の高校生であれば獲る方は100か0のつもりで獲っている。もちろん「こいつはひょっとしたら・・・・・・」と思っているから獲るのだが。そうはならなかったときはその原因を考えて、それを我々スカウトは経験、キャリアにしていかなければいけない。

3/3ページ

著者プロフィール

1976年、大分県速見郡生まれ。多くのスポーツサイトの企画・編集、ディレクターなどを経てフリーランスに。現在は少年野球、高校野球サイトのディレクターを務めながら書籍の企画・編集も行っている。主な書籍は『星野と落合のドラフト戦略』『ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録』『回想 ドラゴンズでの14年間のすべてを知る男』など。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント