週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

大谷翔平は自己最多ペースで本塁打量産体制へ 飛ばないボールに影響されない技術は進化の証なのか?

丹羽政善

5月19日のダイヤモンドバックス戦で早くも17号本塁打を放った大谷翔平 【Photo by Luke Hales/Getty Images】

ジャッジに並ぶペースで本塁打を量産中

 出場46試合で17本塁打をマークしている大谷翔平(ドジャース)。これはキャリア最多ペースで、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)が2022年にア・リーグ歴代最多の62本塁打をマークしたときとまったく同じである。

※記事の中の成績、データはすべて5月19日試合終了時

一番上の濃い青がジャッジの2022年の本塁打ペース、赤が今年の大谷の本塁打ペース 【参照:Brooks Baseballのデータを元に筆者作成】

2022年ジャッジと2025年大谷の45試合までのHR数を比較 【参照:Brooks Baseballのデータを元に筆者作成】

 ただ、今季の本塁打の平均飛距離は405フィートで、過去と比較するとワースト2位。ワーストは、新型コロナウィルスの感染拡大で、シーズンが短縮された20年の402フィート。わずか7本塁打とサンプルも少ないので、この年を除外するとワーストということになる。

大谷翔平の本塁打平均飛距離(単位:フィート) 【参照:Brooks Baseballのデータを元に筆者作成】

 他のデータからも飛距離が出ていないことが分かる。以下は、その年の本塁打の中で、400フィート未満の割合を調べたものだが、なんと今年は50%近い。かつて、こんなことはなかった。

大谷翔平の400フィート未満の本塁打の割合 【参照:Brooks Baseballのデータを元に筆者作成】

 また、全30球場での柵越えを意味する「No Doubters」の比率は47.06%。21年以降では、22年を除いて50%を超えていただけに、この数字も飛距離低下を裏付けている。

大谷翔平のNo Doubtersの割合 【参照:Brooks Baseballのデータを元に筆者作成】

 では、なぜ本塁打の飛距離が落ちているのかだが、そもそも飛距離が落ちている。

 打球初速が100〜105マイルで、打球角度が25〜30度の打球の平均飛距離は、今年が380フィート。これまでは(2022年除く)は、400フィートちょうど。残念ながら、今季のサンプルは2つしかないので、あまり参考にならないが、この条件で400フィートに達しないのは、やはり首を傾げたくなる。

 当初、パワーアップによって、昨年までフェンス手前で捕られていた打球がもうひと伸びして、柵を越えている。よって、本塁打が増えているのでは? という仮説も考えたが、どうも違う。

 ということは?   

 おそらく今季、メジャーリーグでは飛ばないボールが使用されている。

 実際、そのことはさまざまなデータから説明が可能だ。まずはリーグ全体で、打球初速100マイルで、打球角度25度から30度の平均飛距離を調べてみた。案の定、8フィートも飛距離が落ちていた。

2015年〜2024年(2022年は除く):384フィート
2025年:376フィート


 リーグ全体では、本塁打の割合も減っている。以下、1チームあたりの1試合平均本塁打数だが、この10年でワースト2位だ。

平均本塁打数(1チーム、1試合あたり) 【参照:Brooks Baseballのデータを元に筆者作成】

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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