エル・クラシコで起こった謎のジャッジの数々 R・マドリー寄りを印象付けるVARルームの会話とは?
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有名なXアカウントの評価は「0点」
今季からバルサを率いるハンジ・フリックは、4度あったエル・クラシコ(リーグ戦2試合とスペイン・スーパーカップ、スペイン国王杯決勝)のすべてに勝利。これは15年前にペップ・グアルディオラが成し遂げた5連勝に次ぐ偉業で、来季にはその記録に追いつき、更新する可能性もある。
ここでは激しい撃ち合いとなった試合を振り返りつつ、今回のエル・クラシコで浮き彫りになった問題について言及したいと思う。
ちなみに、クラシコとは「古典的な」「伝統的な」という意味の形容詞だ。サッカー界ではR・マドリーとバルサが戦う試合のことを「エル・クラシコ」と呼ぶ。そう呼ばれるだけあって長い歴史があり、両者の初顔合わせは今から123年前の1902年5月13日にまでさかのぼる。
また、そのサポーターの数はソーシャルメディアのフォロワー数だけで見てもR・マドリーが4億1000万人超えで、サッカークラブの中では世界一。2位がバルサの3億6000万人で、これに2億1000万人のマンチェスター・ユナイテッドが続く(国際スポーツ研究センターのデータ/2024年6月5日時点)。つまりエル・クラシコは、少なくとも7億7000万人もの人々が関心を持つビッグイベントということになる。
そんな試合で、今回再びVARが主役になったのは、実に嘆かわしいことだ。主審を務めたエルナンデス・エルナンデスとVARとの連携もひどく、VARのジャッジを採点する有名なXアカウント『Archivo VAR』(VARファイル)が「0点」と評価するほど最悪だった。
ハンドと分かる映像は主審に提示されず
14分にキリアン・エムバペがR・マドリーの2点目を決める前、フェデリコ・バルベルデによるラミン・ヤマルへのファウルがあったにもかかわわらず、VARが介入することなくゴールを認めたこと。79分にアウレリアン・チュアメニの明白なハンドを見逃し、イエローカードすら提示しなかったこと(イエローならこの日の2枚目で退場だった)。そして、ダメ押しの5点目となるはずだったアディショナルタイムのフェルミン・ロペスの見事なゴールを、その前にハンドがあったとして取り消したこと。
こうした数々のミスジャッジの大きな問題は、そのすべてがR・マドリー側に有利に働いたということだった。
現在のラ・リーガでは、VARルームで判定が行われた際の会話の音声ファイルが一般に公開される。驚いたのは、エリア内でフェラン・トーレスが放ったシュートをチュアメニが腕で止めたにもかかわらず、主審がバルサにPKを与えなかったことではない。
「ゴール方向に向かって(そのシーンを)映し出したカメラがないんだ」。そう言って、VARルームから明らかにハンドと分かる映像が主審に提示されなかったことだ。実際、オンフィールドレビューで主審が見ていたのは、ゴールマウスの後方からの映像だった。その間、一般の視聴者はチュアメニが左腕でF・トーレスのシュートを止めた動きを、5つもの異なるアングルの映像で確認していた。世界中の視聴者が目撃したそのハンドを、試合を裁いたVARと主審だけが見ていなかったということになる。
もっとも、スペイン紙『スポルト』は、その5つのアングルの映像はVARルームに届いていたと伝えている。そのうちゴール正面から捉えた3つの映像を、なぜ主審に見せなかったのか。謎は深まるばかりだ。