アジアンツアーが見せた“試合+エンタメ” 音楽が鳴り響く18番ホール、ゴルフトーナメントの新常識
ところが、千葉県のカレドニアン・ゴルフクラブで5月8日から11日まで開催された「インターナショナルシリーズジャパン」では違っていた。朝の1番ホールも最終の18番ホールも、選手がプレー中、近くにある大きなスピーカーからは音楽が流れ続けていた。
アジアンツアーのプレミアム大会を日本で開催
ゴルフを知らない人も惹きつける“フェス型トーナメント”
ところで選手は鳴り響く音楽をどのように感じているのか? 最終日最終組を回り2位タイに入った杉浦悠太は「音楽は聞こえていたけど、気にならなかった」ときっぱり。くしゃみやシャッター音といった突発音とは違い、一定のリズムやメロディは特に気にならないというのが選手たちの大方の意見だ。
エンタメを重視してゴルフファンでない人々も引きつけるイベントに
日本開催は地域の人々に加え、海外観光客も引きつける可能性もあり
「日本の豊かな伝統、食、文化のユニークさは、どれもが強い魅力を持っています。日本のイベント参加者だけでなく、インバウンド観光客も惹きつける大きな可能性があります。ゴルフ界において、スポーツ・音楽・エンターテインメントを融合させたトーナメントスタイルは、まだ始まったばかりの新しい試みです。だからこそ、ここからさらに成長させていく余地が大きいのです」。
日本の観光分野では、海外からの視線がその魅力を再発見し、地域の発展や観光地としての活性化につながった例が数多い。北海道のニセコや岐阜県の白川郷などだ。もしかすると、日本のゴルフ場、そしてゴルフトーナメントにも同じような可能性があるのではないか。日本人が当たり前だと思っているゴルフ文化やゴルフ場の空気感に、海外の方々の目に魅力的なものに映るものがあるかもしれない。
観戦の場から世代や文化を越えて交流が生まれる舞台へ
「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」では、開催期間中に「かさまスポーツ&フードフェス」というイベントを隣接コースで実施。地域のスポーツ団体やキッチンカーが集結し、子どもから大人までが楽しめる空間が生まれている。「Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント」では、“夏フェス”をテーマに、豪華アーティストのライブと地元グルメがコースに登場。さらに「三井住友VISA太平洋マスターズ」では、御殿場ラーメンフェスタを同時開催している。
いずれも共通しているのは、“ゴルフファン以外”の層にも門戸を開いていることだ。ルールを知らなくても、選手を知らなくても、会場に足を運ぶ理由がある。これまで敷居が高かったゴルフトーナメントの現場が、より開かれた場所に変わりつつある。インターナショナルシリーズのラルフ・シン氏も、「ゴルフトーナメントのエンタメ化は、競技のさらなる発展を促し、新しい観客を引き付ける」と断言する。トーナメントの“フェス化”は、ゴルフというスポーツが持つ可能性を大きく広げるものだ。人と人のつながりを生み、地域がにぎわい、世代や文化さらには国を越えて交流が生まれる。ゴルフトーナメントはギャラリーにとって競技観戦でありながら、体験であり、人々との交流の場になり得るのだ。
これからのゴルフトーナメントは、もっと楽しく、もっと開かれた存在へと進化していく。ゴルフの枠を越えた体験が、ゴルフの裾野を広げ、ゴルフの価値をさらに高めていく。
そんな新しい時代のゴルフトーナメントが、動き出している。
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