昇格、試合数、日程、ライセンス、プロ化……SVリーグ大河チェアマンはファン、選手の疑問にどう答えるのか?

大島和人

大河正明チェアマンが約1時間のインタビューに応じた 【(C)スポーツナビ】

 初年度の大同生命SV.LEAGUE(以下SVリーグ)が、5月5日の男子ファイナル第2戦で、サントリーサンバーズ大阪の優勝により幕を閉じた。SVリーグは2030年までに事業規模、競技レベルなどで「世界最高峰」への到達を目指すことを打ち出し、従来のVリーグからアップデートした新リーグだ。初代チェアマンの大河正明氏はJリーグの常務理事、Bリーグ開幕時のチェアマンを歴任し、競技をまたがるキャリアの持ち主。新リーグは他にも他競技で経験を持つ人材を集め、リーグはプロとしての体裁をすでに整えている。

 しかしバレーボールを愛するファン、選手たちとリーグとの間に信頼関係が構築されている様子はまだない。北海道イエロースターズの昇格が認められない理由となった参加チームの偶数縛り問題、44という試合数、対戦相手によって試合数が違う「不平等なカーディング」といったトピックについて、疑問の声や批判が強く出ている。山内晶大、西田有志といったパリ五輪に出場した人気選手がSNSで「声を挙げる」事態も起こった。

 それぞれが意思表示をし、建設的な議論につながるならば何も問題はない。ただしSVリーグを見る限り、そもそもの問題としてファンや選手とリーグの「コミュニケーション不足」がある。リーグの方針が正しく伝わった上で、それに対して批判が出るのならばいい。一方で現状を見るとファンの声、選手の声に対して「リーグの声」は明らかに弱い。

 今回はSVリーグの大河チェアマンがスポーツナビの取材に応じ、ファンや選手から疑問が上がっているポイントを中心にその考えを語ってもらった。ただし4月27日の男子セミファイナル第3戦で発生した「ルール適用の誤り」に関しては、24日のインタビュー後に起こった事象のため触れていない。

「ほぼ全チーム」の会場に足を運んだ感想は?

――まずシーズン全般についてお聞きします。2024-25シーズンのSVリーグは男子10チーム、女子14チームでしたが、大河チェアマンは何チームくらいの現場に足を運びましたか?

 SVは男子も女子も、ほぼ全チーム回りました。最後にレギュラーシーズンの優勝対応があって、残念ながら東レアローズ静岡のホームゲームだけ行けませんでした。SVに昇格する可能性があるチームがいくつかあるVリーグも何度か行っています。北海道イエロースターズは日程や移動の都合をつけられなかったのですが、ヴィアティン三重(V.LEAGUE MEN所属)、カノアラウレアーズ福岡(V.LEAGUE WOMEN所属)、クボタスピアーズ大阪(V.LEAGUE MEN所属)、JAぎふリオレーナ(V.LEAGUE WOMEN)の4チームに行きました。

――「この会場は面白いな」と感じたホームはありましたか?

 年々迫力が増して、応援のボルテージも上がっている一つは東京グレートベアーズです。企業チームの中で大きな変化を感じるのが日本製鉄堺ブレイザーズで、この二つは特に変わった印象です。

――堺は野球ともバスケとも違う、独自性のある演出をしています。応援団長のなおきさんがお客さんをイジったり、少し毒もあります。そのようなノリを大河チェアマンがどう思うか、少し気になっていました。

 MCが上手につないで、会場と会話のキャッチボールをするやり方ですよね。ああいう盛り上げ方も、いいと思います。

――大河チェアマンがバレーの伝統的な応援を嫌っていると心配しているファンもいるようです。

 もちろん「何がいいか」はそれぞれのポリシーや、ファンのニーズに応じて考えればいいことです。ただし企業が「社員を動員する」的なものは、今シーズンからなくなったはずです。社員でも来たい人が来るのは歓迎なのですが、意図的に会社が社内の人を動員して、ファンが一緒に入りにくいような応援をしてしまわないようにお願いしました。

――今季は新たなチケットシステムが入り、ようやくデータに基づくマーケティングをする体制ができたと思います。観客層についてはどうですか?

 男子の試合は女性比率が7割から8割ありました。Jリーグは4割弱で、Bリーグも半分行くか行かないくらいですから、圧倒的に多い数字です。年齢は多いのが20代と40代でした。実は30代が少しへこんでいて、子育てなどの理由があるのかもしれません。

北海道イエロースターズはなぜ昇格が認められなかったのか?

――ファンから疑問・批判が出ているポイントをお聞きします。最初はクラブライセンスの内容と、SVリーグの「奇数・偶数問題」についてです。

 まずライセンスに関してお話します。ライセンス取得と、所属リーグがどこになるかがイコールではないことは、内部的にも対外的にもずっとお伝えはしていましたし、規約にも書いてあります。しかしファンや選手まで届いていなかったことも確かで、お伝えが不十分だったのかもしれません。

 SVリーグの男子は、仮に今回新たにライセンスを取得した北海道イエロースターズを昇格させていたら、10チームが11チームに増えていました。「奇数になっても上げるべき」という議論、ご意見も当然あるだろうと思います。

 女子サッカーのWEリーグも初年度は奇数でしたし、Jリーグ(※当時はJ2がなく「Jリーグ=現在のJ1」)は5シーズン目に17チームでやったことがあります。しかし、そのときは「開幕戦に出られない」「最終節に試合がない」といった不都合が起こって、それによって生じる問題がJリーグの内部で強く意識されました。Jリーグはそこから少なくともJ1は絶対に偶数にしようとなっています。Bリーグはそれを踏まえていましたし、SVリーグもそこを念頭に入れて(クラブの運営責任者による)実行委員会や理事会で議論しました。

なぜ「44試合」にこだわるのか?

日本製鉄堺ブレイザーズの応援団長「なおき」さん 【写真提供:SV.LEAGUE】

――次は「44」という試合数の根拠と、それに伴うチームごとの対戦数が不平等になる(「4」と「6」に分かれる)問題をお聞きします。バレーボールはFIVBが「代表活動をやる期間」を指定して、その期間はリーグ戦ができません。2025−26シーズンだと「2025年10月20日から2026年5月17日まで」がクラブシーズンです。その中でシーズンを組むというのが大前提です。44試合はそこからの逆算でしょうか?

 それはそうですね。天皇杯・皇后杯で2週空けなければいけないし。オールスターで1週間、チャンピオンシップで3週間取ります。レストの週も3つ入れて……というところで残るのが22週です。22回の週末で(土日に試合を)組むと44試合です。

 11チームで44節のリーグ戦をやると、1チームあたり40試合になって、常にどこかが休みになりますが、22週ですから、11チームが2回ずつ休めばよくて、できなくはないです。

 一方でホームゲーム数が減って、収入は少なくなります。親企業が損失補填をしてくれることを前提としたクラブばかりなら別ですが、東京グレートベアーズ、ヴォレアス北海道、ヴィクトリーナ姫路など、試合を開催して稼ぐ必要があるクラブにしてみれば、毎シーズン試合数が変動すると事業計画が立てられません。そこで入場料収入の確保、パートナーさんに提供できる価値を意識してホームゲーム数を一定にしたことは確かです。

 もう一つの問題はチーム数が増えたときに出ます。「13」「15」になると、「24試合・48試合」「28試合・56試合」といった倍数にしないとチームごとに1シーズンの合計試合数がバラつきます。「ライセンスを持っていたらすべて昇格」という形でやると、カレンダーがどこかで破綻します。

 「偶数」は2023年12月に決めた話です。「ライセンス交付対象のクラブが奇数になった場合は、リーグ戦を偶数でやりますよ」と理事会で諮(はか)って決めています。その前に実行委員会でも話が出ていましたが、「奇数だとやり辛いですね」くらいの反応で、特に異論は無かったです。

――Bリーグなら試合数が10%減るとなると経営的に痛いので、それは止めてほしいという主張が激しく出るでしょう。しかしSVリーグはまだ企業色の強い運営が多くて、クラブ側がそこまで試合数についてシビアに受け止めているのか疑問です。

 Bリーグに限らず、プロ野球・Jリーグでもホームゲーム数の確保はビジネス上大切な要素です。その理由は皆さんプロとして経営しているからです。SVリーグもクラブのプロ化を決定しているので、「試合をやってこそ」になってきます。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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