サントリーがSVリーグ初代王者に 「選択肢」が増えた中で、MVP髙橋藍が輝く
サントリーは2023-24シーズンのVリーグ王者で、変則的な形ながら「連覇」を達成した。また2024年12月の天皇杯も14年ぶり2回目の優勝を飾っていて、これで今季は二冠となった。
大会MVPに選出されたのはアウトサイドヒッターの髙橋藍だ。3日のファイナル第1戦こそやや精彩を欠いたが、5日の第2戦はアタックの成功本数15本、決定率71.4%という抜群の数字を残し、勝利の立役者となった。
監督は髙橋藍「個人」への言及を避ける
2024年には石川祐希、西田有志とともに日本代表のエース格として躍動し、バレーボールネーションズリーグ準優勝、パリ五輪8強に貢献した。フィギュアスケートの羽生結弦さんとともに男性化粧品のアンバサダーに起用されるなど、コート外の活躍も目覚ましい。そして今季(2024-25シーズン)からサントリーに加わっていた。
23歳の彼は188センチと(バレーボール選手としては)小柄だが、相手の状況を見て打ち分ける判断力とスキルを持ち、サーブのレセプションやスパイクへのティグも「リベロ級」のレベル。攻守に分かりやすくセンスを感じるアスリートだ。
メディアはどうしてもスター選手を推したがる。ましてファイナルの第2戦では髙橋藍が見事な活躍を見せた。しかし髙橋藍についてのコメントを求められたオリビエ・キャット監督は、やや険しい表情でこう述べていた。
「いつもお伝えしているようにバレーボールは団体競技で、一人についてだけを話すのは好きでありません」
確かにその通りだ。髙橋藍を光らせた仲間と選手層、関係性にこそサントリーの強みはある。
もちろん、髙橋藍の加入で攻め手が増えたことは間違いない。24年3月31日のVリーグファイナル(当時は1試合のみ)の記録を見ると、ドミトリー・ムセルスキーが一人で合計47本のアタックを打っている。チーム合計が98本だから、彼はほぼ半分(48%)を担っていた。
ムセルスキーは218センチのオポジットで、今季も攻撃のファーストオプションだ。ただ5月5日のファイナル第2戦は、どうしてもポイントのほしい「勝負どころ」で髙橋藍の使われる場面が増えていた。アタックの成功本数もムセルスキーは17本、髙橋藍が15本と拮抗していて、決定率は髙橋藍が上回る。
セッター大宅が髙橋藍を活かす
「ゲーム1は(髙橋)藍の決定率がなかなか上がらず、僕もあまりいいイメージで終われていませんでした。今日はスタートからまずそのイメージを消したかったので、藍に多く上げて、1セット目はほぼ100%決めてくれました。彼が機能するか機能しないかで、チームの出来もかなり変わります。オリンピックや世界を経験してきた人間は違うなと思ったし、年下ですけど本当に頼りになる選手です」
レフトからのスパイクが髙橋藍の強みだが、ファイナル第2戦は時間が経るに従って彼のパイプ(後衛がセンターから放つバックアタック)が増えた。背景には大宅の判断があった。
「(相手のミドルブロッカーが髙橋)健太郎さんか、村山(豪)選手かで、パイプを使うか・使わないかの判断を分けていました。サイドを多く使った分、真ん中(の守備)が少しずつ薄れてきているイメージもあったので、そこから徐々に使うことができました。(髙橋は)リードブロックのお手本のようなブロックをしてきて、ゲーム1は潰されかけました。そこを今日はやられないように、まず徹底的に横移動をさせて疲れさせる意味でも、(序盤は)サイドに振る形を採りました」
第1戦のジェイテクトは「センター」を封じる守り方をしていた。第2戦の大宅は第1セットの最初のアタックでセンターにトスを上げ、髙橋健太郎のブロックに封じられている。もっとも、それは相手の出方を探るための「確認作業」だった。
「最初のパイプは、第1戦と同じ付き方かな……という確認で敢えて上げました。第1戦と同じ付き方をしてきたので、そこからはサイドへ(相手守備の)意識を持っていくところにシフトしました」(大宅)
「選択肢」の増えたリーグで
「イタリアリーグでもたくさんのセッターとやってきましたけど、大宅選手のスゴさは欲しいときにトスをくれる部分です」
それはシーズンを通じて築き上げた関係性だ。
「大宅選手は裏をかいたり『敢えて上げる』部分を持つ選手です。普通だったらディマ(ムセルスキー)に上げるだろうなという状況で自分に上げたり、考えてセットしてきます。自分がそこに対して結果を出していけたからこそ、大宅選手はさらに信頼して上げてくれました。今日も大事な場面でパイプや、ライトに持ってきてくれました」
サントリーは大阪ブルテオンと戦った昨年10月11日の開幕戦を0-3で落としている。しかし練習、試合を通じて連携を深め、チームとしての選択肢を増やしてきた。それがこのファイナルで実った。
新生SVリーグの発足により、外国籍枠1つが増えた。トスを上げるセッターはもちろん、ブロックする側にとっても「選択肢」は増えている。サントリーのミドルブロッカー・小野寺太志はこう説明する。
「外国人選手だけでなく、日本人選手のレベルも年々上がっていると思います。本当に攻撃の選択肢を絞るのが難しいシーズンでした。大事な場面でトスが集まる選手はいますけど、そこに行き着くまで間に誰をマークするのか、チームとして誰の決定率を下げていくのかを考えながらブロックしないと成果につながりません。本当にそんな地道な作業をシーズン通してやっていました」
選択肢が増えれば「どれをどのタイミングで選ぶか」という判断がより重要になる。相手の守備の狙いを読んで、それを外す。サイドに振ることで、ミドルブロッカーを消耗させる。ここという場面で「切り札」を出して畳み掛ける。そんな攻守の駆け引きが、第2戦の決め手になった。