プロ野球開幕1カ月診断

小笠原道大がセ・リーグの新戦力を徹底診断 田中将、甲斐、バウアー、茂木、ファビアンは期待通り?

前田恵

開幕して全試合スタメンマスクの甲斐拓也(写真左)は巧みなリードで井上温大(写真右)ら若手投手の力を引き出している 【写真は共同】

 プロ野球が開幕して約1カ月、移籍したチームで早速力を発揮している選手がいれば、徐々に日本の野球にも慣れてきて、これからの活躍を予感させる新外国人選手もいる。そんなチーム力の底上げに貢献する“新戦力たち”はこの1カ月、新天地でどんな活躍を見せていたのか?
 今回、特にインパクトを残したセ・リーグの新戦力について、小笠原道大氏に聞いた。新戦力がチームに与える影響とは?
(成績はすべて5月3日時点)

新戦力が機能し好スタートを切った巨人

数字や成績以外のところで新戦力がチームにもたらす影響を解説してくれた小笠原氏 【撮影:スリーライト】

――今季のセ・リーグは移籍、外国人選手勢の新戦力が目立っていますね。特に巨人・甲斐拓也選手の移籍加入が大きく注目されています。

 4月を終えて、打率3割台を維持。こんなに打つとは誰も予想していなかったでしょうね。自分で「このゾーンに来たら振る」と決めてスイングしているようで、打席の中での迷いが少ないのだと思います。頭の中を整理して打席に入ることができている。相手からしたら、あそこまでしっかりスイングされるのは嫌ですよ。加えて一、二塁間への巧打を見せることもある。他のバッターも好調なところに甲斐選手の打撃がうまく噛み合って、打線としていい形になっていますね。

――キャッチャーとしても、全試合でスタメンマスクを被っています。

 特に若い投手は、経験豊富な甲斐捕手とバッテリーを組む安心感に加え、今までにない意見を耳にできます。それによる気付きや発見が、新しい自分を見つけることにつながるかもしれない。井上温大投手なんか、そうなんじゃないでしょうか。一方で、昨年健闘していた捕手陣が、出られなくなってしまった。結果論ではありますが、戸郷翔征投手のように成績の上がらない投手もいます。従って甲斐選手の加入に関しては、「総合的に見てプラス」と考えるのが妥当かな、と思います。

――田中将大、マルティネス、石川達也の3投手についてはいかがでしょう。

 田中将投手は昨年勝ち星がなかったのですから、まず4月に1勝できて十分だと思いますよ。ギアを上げたときには、いいボールを投げていましたし、5試合ほど見てから判断したいですね。マルティネス投手は3月の時点であまり状態が上がっておらず、「?(クエスチョンマーク)」をつけていたんですが、あれはまだ調整段階だったようで、きちんと結果を出してきましたね。彼と大勢投手で8回、9回が安定したのは、とにかく大きいですよ。石川投手も左の先発がほとんどいなかった中、ローテーションを回しているところで、まず評価できます。防御率1点台で、しっかり試合を作っているので、いい補強をしたと思いますよ。

DeNA、ヤクルトに新しい風を吹かせる救世主

4月27日の中日戦、逆転の2号3ランを放った茂木栄五郎(写真右)。故障者の穴を埋める活躍を見せている 【写真は共同】

――DeNAにはバウアー投手が2年ぶりに復帰しましたが、開幕から3連敗(編集部注:取材後の4月27日、広島戦で今季初勝利)。

 最初の試合(3月29日、中日戦)だけなら寒さや雨が影響した可能性もありましたが、3試合続いたとなると、コンディションか体のメカニズムか、何かがうまくいっていなかったのだと思います。全体的にボールが甘く、ボールをきちんと扱えていない。狙ったところに投げることができていないように見えました。

――DeNAも野手陣では三森大貴選手が、打っては一番から三番まで、守っては一、三塁と外野で奮闘しています。

 彼は実にいい補強でしたね。ソフトバンク時代は、選手が多すぎてなかなかチャンスが巡ってこなかった。バッティングも悪くないし、どこでも守れて足もある。打線が安定してどっしり戦えるようになれば、より三森選手が生きてくるのではないでしょうか。

――ヤクルトの茂木栄五郎選手も打撃好調で、4月下旬から打順を三番に上げました。

 初めて三番に入った巨人戦(4月20日)で、いきなり初回にホームランを打ちましたよね。思い切りの良いバッティングが、彼の魅力。凡打している打席でも、しっかりバットを振っています。こういうバッターがいると、打撃陣に刺激が入りますよ。ヤクルトは故障者続出で、彼を獲っていなかったらどうなっていたんだろうと思います。

1/2ページ

著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント