田口壮がパ・リーグ開幕から1カ月を徹底分析 王者ソフトバンクが出遅れ、全チームに優勝チャンスあり?
開幕してこの1カ月を振り返り、各チームの収穫と誤算は何だったのか。今回は、現役時代にオリックスで日本一に1度、MLBで世界一に2度輝いた実績を持つ田口壮氏に、パ・リーグの開幕後1カ月の戦いについて詳しく分析してもらった。
(成績はすべて4月30日時点)
明暗が分かれたソフトバンクと日本ハム
開幕直後に近藤健介、柳田悠岐、栗原陵矢の主力3選手を欠いたのが痛かったですね。幸い栗原選手は4月中旬に戻ってきましたけれども。
――近年、ソフトバンクは「選手層が厚く、誰かが抜けても必ず誰かがその穴を埋めるから強い」と言われてきましたが……。
小久保裕紀監督は柳町達、正木智也の両外野手、海野隆司捕手といった、去年たびたび起用していた選手たちに独り立ちしてほしいと考えていたはず。彼らがまだ頑張り切れていなかったかな、というイメージがありました。
――正木選手は(4月18日の西武戦での)左肩亜脱臼により、登録抹消。手術を受け無事に終了したものの、レギュラーシーズン中の復帰は難しいと言われています。
正木選手はパンチ力があって、いい打球を飛ばすんですよね。小久保監督はなんとか出てきてほしいと思い、今季ずっと五番で使い続けていました。開幕から二~四番が不在や不調で、正木選手一人で打線を背負う形になったのは気の毒でしたが、そこを乗り越えてほしいと期待していただけに、残念です。柳町選手はコンタクト能力のあるバッターで、繋ぎの役割を求められています。海野捕手はさらに一軍で経験を積んで、投手陣を引っ張ってほしい。有原航平、上沢直之両投手が思うような成績を出せていないのは、捕手とのちょっとしたリズムのズレが影響している可能性も考えられます。
――そういうこともあるのですね。
海野捕手のリードがいい、悪いではなく、そんな相性もひょっとしてあるのではないかと私は感じているんですよ。一方、若い投手の中にはファームから一緒にバッテリーを組んできた海野捕手とのコンビだからこそ、伸び伸び投げている選手もいるはずで、良い効果も出ているのは間違いありません。
――四番・山川穂高選手の調子がなかなか上がってこないことについては?
力のある選手はシーズン終了時、必ずある程度の結果は出しますから、山川選手に関してはあまり心配していません。ただチームとしてケガ人が多いので、この辛い時期を山川選手筆頭に今いる選手でどう乗り越えるか、ですね。
新庄剛志監督に「15試合限定の四番」と言われていた野村佑希選手が、いよいよ四番に定着しました。打席で粘り強さが出てきたし、甘い球を仕留めることができています。新庄監督が実にいいプレッシャーの掛け方をしましたね。レイエス選手も、序盤は良いスタートを切った。これで清宮幸太郎、万波中正の2選手が暴れ出したら、チームも勢いに乗ってグンと上昇するでしょう。
――現在マルティネス選手を欠いていますが、昨季は2ケタ本塁打を打つ選手がラインアップに並んでいました。あれは他球団から見ると、かなり要注意でしたか?
日本ハム打線は打つだけじゃない、何をしてくるかわからないんですよ。盗塁、重盗、エンドラン、セーフティースクイズ、スクイズ……あらゆる戦法を用いてくるので、他チームとしてはそこに警戒し、エネルギーを使っていました。逆に言えば、3年間かけてそうした戦術をチームに浸透させ、それができる選手が今、上にいる。チームとしてはだいぶ仕上がってきた状態なので、将来的には青写真通り、先ほど名前の挙がった選手たちが日本ハムを背負っていく形になるでしょう。
――昨年末の時点で今季の開幕投手に金村尚真投手を指名したことは、どう見ていましたか?
おそらくもう一枚、柱になる先発投手が欲しかったのだと思います。そこで力のある金村投手に早々と指名することで、軸をつくるイメージを本人にも周囲にも植え付けた。金村投手にはプレッシャーもあったかと思いますが、「思い切って行ってこい」とちゃんと背中は押してあげたんじゃないですかね。