週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

バウアーが気にかける大谷翔平の投手復帰時の変化 佐々木朗希の4シームの改善点も提示「自分だったら……」

丹羽政善

投手復帰に向けて調整を続ける大谷。どんなピッチングスタイルで帰ってくるのか注目される 【Photo by Michael Reaves/Getty Images】

復帰時の投手・大谷はどう変化している?

「週刊MLBレポート」と並行する形でトレバー・バウアー(DeNA)のインタビュー企画を短期連載し、それが先週、記事、動画とも終了した。

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 ドジャースの大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希への言及もあったが、今回、その裏話を少々。

 3本目の動画で、リリースポイントの“ボール3個分”理論が出てくる。これは、スプリットとスイーパーを両立できるのか、という質問に対する答えだが、仮に同じリリースポイントで投げるなら、それは両立させにくい。高い位置から投げれば、スプリットはストンと落ちる。一方でスイーパーを横に曲げることは難しくなるからだ。それはバウアーも認めている。

 しかし、「両立させられる」と彼は言う。

 どうするのか?

「ボール3個分の範囲でリリースポイントを変える分には、ハイスピードカメラじゃないと(違いは)判別できない」とのこと。直径ボール3つ分(約22センチ)の球体をイメージし、その範囲内でリリースポイントが変化する限り、「打者はそこから球種を見抜くことは不可能」なのだという。

 なぜこの質問をしたかだが、今の大谷が近いうちに直面する課題だからだ。

 前回、大谷の4シームの“質”について取り上げた。
 バウアーにインタビューをしたのは3月20日。ドジャースの日本での開幕シリーズが終了した翌日のことである。先週の記事で引用したのは開幕後のデータだが、キャンプ中に大谷のデータを計測したところ、やはり真っ直ぐ系は、リリースポイントが上がって、回転効率が上がっていた。その時点ですでに球質が変わっていたのである。

 となると、スプリットを落としやすいアームアングルになっているということなので、再現性が低下し、配球配分が減っていたスプリットの比率が上がるのではないか、という仮説が立てられる。ただその場合、スイーパーはどうなるのか? 以前と同じような軌道のスイーパーを投げられるのか? 大谷は元来、スライダー投手である。高校の頃から、スライダーを磨いてきた。ここまで極めた、打者が手元で浮くと感じるスイーパーを諦めるのか?

参考:大谷翔平の球種別、配球割合の変化(2018、2020〜2023) 【参照:Baseball Savant】

・スプリットは、2018年が24.6%だったが、その後低下し、23年はわずか6.4%だった。対照的に、スイーパーは、2018年が24.6%だったが(当時はスライダーにカテゴライズされていた)、22年からは35%超え。

 もちろんまだリハビリ段階であり、これからライブBPなど打者と対戦するようになった場合、どうリリースポイントが変化するかわからないが、このままなら真っ直ぐの回転効率は上がり、4シームで空振りを奪えるようになる。スプリットも落ちる。それは間違いなくポジティブな変化だが、スイーパーがいわゆる“縦スラ”になってしまうかもしれない。

 バウアー自身、その2球種を投げるだけに、どう投げ分けているのか、という質問ではあったものの、彼には誰のことが念頭にあるのか、わかっていたようだ。こちらが名前を出すまでもなくその後、自然と話が大谷の体の使い方になった。はっきり明言しなかったものの、彼の目には大谷のフォームで気になるところがあるようだ。

 復帰時に大谷は、どんなメカニックで投げ、スプリットと回転効率の高い4シーム、そしてスイーパーを両立させるのか。彼なりの工夫が、興味深い。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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