プロ野球開幕1カ月診断

小笠原道大がセ・リーグ開幕から1カ月を徹底分析 今の順位は想定内?抜け出すチームはあるのか?

前田恵

「この時期に下位でも悲観する必要はない、立て直す時間はある」と話す小笠原氏。各チームが上位を狙うポイントとは? 【撮影:スリーライト】

 2025年プロ野球が開幕して早くも1カ月が経った。新戦力の活躍もあり思い通りに戦えているチームがある一方で、主力の負傷離脱や不振などもくろみが外れ苦戦を強いられたチームもある。
 そこで今回、小笠原道大氏にセ・リーグ6球団の開幕後1カ月を振り返ってもらった。各チームの収穫と誤算は何だったのか、鋭く分析する。
(成績はすべて4月29日時点)

首位を争う巨人と阪神の“四番”が躍動

打撃3部門すべてでリーグ3位以内と好調の巨人を支える岡本和真 【写真は共同】

――まずは昨季、レギュラーシーズン優勝の巨人から。丸佳浩選手、坂本勇人選手の両べテランに加え、エース・戸郷翔征投手も開幕から3連続KOののち、4月12日に二軍降格と、苦しい戦いが続いています。

 ベストな布陣でない中、彼らに代わって出場している選手、ベンチワーク共に、健闘していると思います。ポジティブに見れば、丸選手の離脱により複数の選手が外野を守って活躍しているのは、チームとして大きなこと。一方で、ずっと先発ローテーションで回ってきた戸郷投手を欠いた状態は、戦力的にも厳しいし、非常に痛いところですね。

――戸郷投手を欠いたぶん、山﨑伊織投手や井上温大投手が好調を維持し、つないでいますね。

 もともと先発の6枚目候補は何人もいたわけで、彼らがそのまま穴を埋めて投げている分には、いいんです。とはいえ石川達也投手を含め、ずっとローテで投げてきたわけではない。夏場になって、うまく疲労を取りながら回せるかどうかが課題ではありますが……そこはいかんせん、チーム打撃がいいのでね。チームとして、補っていけるのではないかと思います。

――なんといっても、四番・岡本和真選手が絶好調。

 去年と全く違いますからね。去年が悪いという意味でなく、対応力がさらに良くなっています。厳しいボールに対してもファウルで逃げたり、去年は空振りしていたボール球を見逃せたり。四番という軸がしっかりすると、打線は安定します。岡本選手の後を打つ五番がしっかり固定されれば、四番で勝負せざるを得ない回数が増えてくるので、必然的に岡本選手が打つ確率もまた上がります。

――そうすれば、巨人自体トップ争いに抜けてくる可能性も?

 いや、抜け出ることはないと思います。やはり懸念材料は中継ぎ陣の8回=大勢投手、9回=マルティネス投手以外。船迫大雅投手をはじめ奮闘していますが、まだ不安定な要素が多いですね。チーム自体、ベストな状態ではないので、もろいときはもろいです。

小笠原氏は阪神で気になる選手を前川右京とあげた。チームに貢献しているポイントは…… 【写真は共同】

――次に、阪神です。首位に立つなど、良いスタートを切ったのでは?

 普通にやれば、こんな感じかな、と(笑)。もともと投手陣が良かったので、昨年苦しんだ打撃陣が復調してくれば、打線の頑張った分がそのままプラスになりますね。近本光司選手、中野拓夢選手が塁を賑わせばクリーンアップが生きてくるし、クリーンアップの後の前川右京選手がハッスルすれば、次は安定の木浪聖也選手。森下翔太選手が四番に座り、そのフォローを大山悠輔選手がしてくれているから、佐藤輝明選手が細かいことを考えず、自分のバッティングに集中できる。

――4月15日からは、佐藤輝選手と森下選手の打順を入れ替え、佐藤輝選手が四番になりました。

 一、二番と森下選手の安定性があって、佐藤輝選手の状態も良かったので、さらなる得点力拡大を目的に、打順を入れ替えましたね。ただバッターは打順によってリズムも違うため、あまり頻繁に打順が変わることを好まない傾向にあります。加えて、打撃にはどうしてもムラがあって1年間ずっといい時期は続かないので、そうなったときにどうするか。ベンチワークだけでなく、佐藤輝選手個人がどう対応していくかにも注目したいですね。

――阪神で佐藤輝選手以外に、小笠原さんが気になる選手といえば?

 打撃陣では、六番にガッチリ座っている前川選手です。一~五番までと七~九番をしっかり“打線”としてつないでいるのが、前川選手。佐藤輝選手が派手に打って目立ってはいますが、何げに前川選手がピリッと良いスパイスを効かせていると思いますよ。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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