関東×関西「高校スポーツ最強地区はどっちだ!?」

高校ラグビー界の“東の横綱”桐蔭学園の花園3連覇を阻止するのは? 急先鋒として期待される関西の有力校の現在地

斉藤健仁

今年1月の花園決勝で東海大大阪仰星を、3月の選抜大会決勝で京都成章を下し(写真)、高校ラグビー界の頂点に君臨する桐蔭学園。果たして関西勢の逆襲はあるのか 【斉藤健仁】

 昨季、花園連覇を達成した“東の横綱”桐蔭学園を止めるのはどこか? 高校スポーツ界で「関東×関西」の構図が最も顕著な15人制の男子ラグビーにおいて、逆襲を期待されるのが関西勢だ。打倒・桐蔭学園を掲げ、新チームを立ち上げた関西の有力校の現状をレポートする。

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進化を遂げる“令和の常勝軍団”

 高校スポーツの全国大会において「関東×関西」という構図が一番はっきり出ているのが、15人制の男子ラグビーだろう。

 毎年、12月から1月にかけて大阪・東大阪市花園ラグビー場で開催される「花園」こと全国高等学校ラグビーフットボール大会では、過去10大会で6大会が関東勢×関西勢の決勝となり、10大会中8大会で関東もしくは関西の高校が優勝している(他の2大会はいずれも九州の強豪校、福岡の東福岡が優勝)。

 それは3月に埼玉・熊谷ラグビー場を中心に開催されている春の選抜大会(全国高校選抜ラグビー)もほぼ同様で、過去10大会中8大会で関東もしくは関西の強豪校が優勝している。

 少し前まで、大学ラグビーは「西低東高」、高校ラグビーは大阪勢を中心とした関西勢が強く「西高東低」と言われていた。しかし、その状況を大きく覆したのが、昨季2度目の花園連覇を達成した“東の横綱”、桐蔭学園(神奈川)だ。

 花園では元号が令和になってから過去6大会で4度の日本一に輝き、選抜大会でも今季を含めて過去10大会で5度の栄冠に輝いた“令和の常勝軍団”である。

 自身も大東大一(東京)のWTBとして花園優勝を経験している藤原秀之監督(57歳)が率いて24年目を迎えた桐蔭学園といえば、「ジャッジメント(判断)」「継続ラグビー」が代名詞だが、“シルバーコレクター”に甘んじていた時代もあった。

 ただ、令和元年の第99回大会の花園で単独優勝し(初優勝の90回大会は東福岡との両校優勝)、初の「高校3冠」を達成してから上昇気流に乗ったと言える。藤原監督の「99パーセントではなく100パーセントでやらないと(花園では単独で)勝てない」という言葉に実感がこもっていた。

 この2年ほどはさらに進化を見せており、「継続ラグビー」を軸にしながらFWのセットプレーも強く、キックやオフロードパスを使ってラックを作らず、“モメンタム(勢い)”を生んだときに一気にトライを奪うラグビーで他を圧倒し続けている。

“白い旋風”大阪桐蔭の強さは健在

昨季の花園では準々決勝で桐蔭学園に屈した大阪桐蔭だが、ポテンシャルは十分。大型FWによるセットプレーの強さに加え、BKにも吉川(中央)ら好タレントがそろう 【写真は共同】

 そんななかで、桐蔭学園の「花園3連覇」を阻む可能性を十分に持った関西勢を、ここでは紹介したい。

 その急先鋒は常翔学園、東海大大阪仰星と並ぶ「大阪3強」の1つ、大阪桐蔭だ。3月に行われた近畿大会では、東海大大阪仰星以来の3連覇を成し遂げている。

 大阪桐蔭は昨季、春の選抜大会だけでなく、海外勢も参加するサニックスワールドラグビーユース交流大会(以下サニックスワールドユース)を日本勢として初めて制し、15人制の2冠を達成した。さらに、昨季は練習試合を含めても無敗を維持し、当然花園でも優勝候補の筆頭に推されていた。

 しかし抽選の結果、桐蔭学園と準々決勝でぶつかってしまい、開始3分までに14-0とリードしながらも14-26で逆転負け。2018年度大会以来2度目の優勝を飾ることはできなかった。

 ただ、今季もその強さは健在である。OBの綾部正史監督(50歳)が率いる“白い旋風”こと大阪桐蔭の強みは、大型FWのセットプレーと粘り強い組織ディフェンスだ。昨季はFWが例年より大きくなかったため、フィットネス強化を図ったことが功を奏した。

 3月の選抜大会は、準々決勝の東福岡戦でロスタイムのラストプレーで相手にボールを奪われ、17-24と逆転負けを喫したとはいえ、ポテンシャルは十分だろう。

 PRには体重112キロの成田良翔、ロックには身長197センチの酒井結仁、同じく190センチの泊晴理(いずれも3年)と巨漢がそろい、セットプレーは昨季よりも強力である。

 BKはハードタックラーでキャプテンのCTB手崎颯志(3年)が引っ張り、FBには昨季の花園で1年生ながら大活躍したキレのあるランが武器の吉川大惺(2年)、WTBには決定力に優れるモレノ経廉ザンダー(3年)らを擁する。

 SH福島悠右、SO矢守勇生(ともに3年)のハーフ団によるゲームコントロール、そしてFWのセットプレーがより成熟していけば、チャレンジャーとして臨む今季こそ2度目の花園制覇を実現できるはずだ。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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