井上尚弥のラスベガス戦を前にさまざまな記録をチェック 更新を狙う世界戦通算KO勝利、トップ目前の世界記録は?
5月4日(日本時間5月5日)、アメリカ・ラスベガスのT‐モバイルアリーナで臨む世界スーパーバンタム級4団体統一王座の4度目の防衛戦で、WBA1位のラモン・カルデナス(アメリカ)にKO勝ちすれば、井上がルイスの世界記録を約77年ぶりに更新することがカルデナス戦の発表記者会見でも話題になった。
「これ(記録)について、思うことはないですね。記録を狙って、試合をするわけではないので。自分のベストを尽くした結果、記録を更新できたらいいな、という気持ちもありますけど。それぐらいですね」(カルデナス戦の発表記者会見より)
記録とは、井上が言うように目の前の1戦1戦を勝ち抜いた結果。もちろん階級も違うし、相手も違う、ラウンド数などの背景や時代も異なり、比較するのは難しいのだが、それでも記録を通して、それぞれの足跡が交差し、ボクシングという競技の長い歴史を感じられるのが素晴らしい。
2004年にイチローがアメリカ・メジャーリーグのシーズン最多安打記録に84年ぶりに迫り、更新したとき、それまでの記録保持者だったジョージ・シスラーという往年の名選手に光が当たり、その偉大な足跡にあらためて敬意が表された。単純に抜いた、抜かれただけでなく、記録が語られる意義のひとつであると思う。
いよいよ目前に迫ってきた井上のラスベガス戦を前にさまざまな世界記録や日本記録を整理した。記録という面から見ても注目の1年になりそうだ。
※『日本ボクシング年鑑』(日本ボクシングコミッション発行)の巻末に収録された「ボクシング百科全書」、『ボクシング・ビート』誌2024年1月号(P26-27)掲載の「世界戦通算勝利数」などを参考に、記録サイト『BoxRec』などで筆者が独自に調べ直したもの。
※『BoxRec』ではイギリス・ボクシング管理委員会(British Boxing Board of Control)がジョー・ルイスの1951年6月のリー・サヴォルド戦を世界ヘビー級タイトルマッチと認めているとしており、これを含めるとルイスの世界戦通算KOは「23」、世界戦通算勝利は「27」となることを付記しておく。
井上の世界単独トップなるか
そうなると井上が2023年7月にスティーブン・フルトン(アメリカ)を通算20KO目となる8回TKOで下し、4階級制覇を果たすまで約22年、最軽量級のミニマム級からライトフライ級で19KOと軽量級トップの座を守り続けていたリカルド・ロペス(メキシコ)も称えられるべきだろう。ロペスは1990年10月、井上が所属する大橋ジム・大橋秀行会長を5回TKOで下し、WBC世界ミニマム級王座を奪取したことでも知られる。
その後、ロペスは同ミニマム級王座の22連続防衛を果たし、2001年9月、2階級目のライトフライ級でスーパーバンタム級のゴメスが1982年12⽉につくった軽量級最多記録の18KOを約19年ぶりに破った。
井上に次ぐアジア人2位は1984年から1991年にかけ、WBA世界スーパーフライ級王座を19連続防衛したカオサイ・ギャラクシー(タイ)の17KO。2022年6月、フィリピンの英雄ノニト・ドネアを鮮烈な2回TKOで返り討ちにし、井上がアジアのトップに立つことになるのだから象徴的である。現役では15KOでテレンス・クロフォード(アメリカ)が井上に続く。
日本記録は中谷潤人が上位に急接近中
井岡と寺地の11KOは、現役では5月3日にスーパーミドル級の4団体王座統一戦に臨むサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)と並ぶ。井岡は5月11日、大田区総合体育館でWBA世界スーパーフライ級王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)との再戦に臨み、王座奪還を目指す。
そして、世界戦9戦全勝8KOと上位に急接近しているのがWBC世界バンタム級王者の中谷だ。6月8日、IBF同級王者の西田凌佑(六島)との興味深い王座統一戦をKOでものにすれば、具志堅、山中と並んで5位タイとなる。
井上が迫る、もうひとつの世界記録とは?
世界戦連勝記録でも井上はトップ目前。26連勝で1位のルイスとメイウェザーまで2と迫る。カルデナス戦、9月のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦と12月のフェザー級でのニック・ボール(イギリス)戦、すべて計画どおりに進むと年内にも27連勝となり、連勝記録でも世界記録を更新することになる。
ヘビー級のルイスが第2次世界大戦を挟んで打ち立てた25連続防衛は不滅の大記録。長い間、連続防衛記録はボクシングの世界王者のステータスを示すものだったが、近年は適正体重に合わせて階級を上げ、複数階級制覇を狙うことが主流となっているため、同一階級での連続防衛記録は生まれにくくなった。
これを時代に合わせて世界戦連勝記録とすると世界5階級制覇王者のメイウェザーがルイスと並んで1位に浮上する。連続防衛記録の場合は引き分けでもカウントされる。世界戦連勝記録のほうがより厳しい?
逆にWBA世界スーパーフェザー級王座を11度防衛、連続防衛では3位の内山は5度目の防衛戦が不運な負傷引き分けでランク外。3位の山中の13連勝、5位の長谷川の11連勝は、いずれもWBC世界バンタム級王者としての記録。その伝統のベルトを受け継ぐ中谷が9連勝(3階級で記録)で2人を追いかけている。