「らしさ」の消えた町田3連敗 選手が語る転落の理由と、浮上の手がかり
「オープンな展開」を避けるために
湘南は66分に鈴木章斗、福田翔生、藤井智也を投入し、攻撃の狙いを変えた。1トップで先発した根本凌は「収める」タイプだったが、スピードのある選手を新たに入れて「縦」「スペース」への配球を増やした。湘南はそれまでの劣勢を立て直してチャンスを増やし、決勝点も得た。
湘南が前に人をかけ、縦に速く攻めてきた中で、町田も縦への直線的なボールを打ち返すことが増えた。結果的に「オープンな打ち合い」は湘南の強みで、町田は相手の土俵に乗っていた。
ボランチの下田北斗はこう振り返る。
「結果だけ振り返ると、先に取れてればというゲームですけど、もっと色々な要因があると思います。後半の僕たちはどうしてもロングボール一辺倒になりかけるところがあるので、そういったところは改善しなければいけません」
もちろんロングボールから一発でスペースに抜け出せるなら、それは正解だ。ただ陣形が間延びをしていると、近くのサポートが薄くなり、攻撃が単発で終わりやすくなる。逆にボールの後ろ、横にいい距離感で味方がいる状態で攻撃が終われば「切り替え」「ファーストディフェンス」もハマりやすくなる。
下田の言葉を補足するなら「ボールを握りながら全体が押し上げる時間を作る」ことが必要だった。
修正が必要な戦術のディテール
「(湘南に)つながせたときは、かなり奪えていました。でも(問題は)蹴られたときです。最近の浦和戦や神戸戦もそうですが、後ろ5枚のところにマンツーマンみたいな形を作って蹴って収める形を、自分たちは多分狙われています。割り切って出させて、全員で(守備に)行くやり方もあるけど、それでも神戸戦は引き出させられて、行って蹴られるのでやはり間延びしてしまいました」
相馬はこう続ける。
「自分たちが勝っていたときはコンパクトないい守備で、前の限定もかなりできていました。今は後ろが簡単に弾ける環境を、前で作れていません。相手も研究して、背後に落とすボールを蹴ったりしてきています。対策に対してそこを打開する、こちらが上回るものをまだできてないのが現状かなと思います」
前提として「コンパクトで均整の取れた形を作り、組織でタイトに守る」という町田の狙いは不変だろう。もちろん相手はそこを崩そうとして、人の配置やボールの動かし方を工夫してくる。[3-4-2-1]という今季の布陣の中で、どう「コンパクトさ」を保つか、そこもチームが直面している課題だ。
前に張り付いて蹴ってくる相手にどう対処するか。人の配置、動きをどう工夫して「コンパクト」な組織を保つか。その難題を解決できれば、前向きに踏み込んで奪う「いい攻撃につながりやすい守備」がよみがえる。
今季の町田は5勝を挙げているが、そのうち4試合が1点差。5敗を喫しているが、そのうち4試合が1点差。勝った試合も負けた試合も内容を見れば「微差」で、そんなディテールの調整が結果を大きく左右する。
サッカーは守備と攻撃、攻撃と守備が連続している。「コンパクトな守備組織を維持するための戦術的工夫」は、攻撃も含めた課題を解消する一つのポイントだろう。