「らしさ」の消えた町田3連敗 選手が語る転落の理由と、浮上の手がかり

大島和人

町田は4月25日の湘南戦に敗れて3連敗となった 【(C)J.LEAGUE】

 FC町田ゼルビアは、短期間で1位から11位への急転落を起こしている。第9節・川崎フロンターレ戦(4月6日/2△2)を終えた時点では首位だった。それが浦和レッズ戦(4月13日/0●2)、ヴィッセル神戸戦(4月20日/0●1)、湘南ベルマーレ戦(4月25日/0●1)と3連敗。通算戦績を5勝2分け5敗として、暫定11位まで落ちた。

 町田は黒田剛監督が就任して、3シーズン目を迎えている。2023年はJ2制覇とJ1昇格を果たし、24年もJ1の3位と快進撃を見せた。J2では一度も連敗がなく、昨季も2連敗が一度だけ。そんなチームが3連敗を喫したのだから衝撃は大きい。

 また黒田ゼルビアは終盤の「固さ」が売りで、J1昇格後の49試合で一度もアディショナルタイムに失点していない。しかし湘南戦は後半アディショナルタイム(90+3分)に勝ち越される展開だった。DFイブラヒム・ドレシェヴィッチの自陣で相手を「いなそう」としたプレーが裏目に出てボールを失い、カウンターを受けた。

 「両ゴール前の際が強い」「隙がない」「五分の展開を勝ち切る」といった強みも含めて、今の町田には過去2シーズンの「らしさ」が感じられない。

3試合ともゴールなし

 ただ3連敗を振り返っても、それぞれの「試合内容」は決して悪くない。湘南戦後の記者会見で、黒田監督はこう語っている。

「プラン通りでしたし、選手たちもよく走り、タイトにやってくれたと思います。ゲームの中であれだけチャンスを作りながら、ただただ点数が取れなかった。選手たちは一つひとつサボることなく、しっかりと自分たちのサッカーを全うしてくれました」

 特に湘南戦の前半は完全に町田の流れだった。前からのプレス、パスコースの限定がハマり「いい奪い方」も多かった。9分のナ・サンホ&仙頭啓矢、13分の相馬勇紀と、立ち上がりから1点モノの決定機が相次いだ。そこでしっかり決めていれば、攻撃がさらに勢いづいたのかもしれない。

 試合後には湘南の山口智監督も「相手のミスに助けられた部分もある」とコメントしている。それは謙遜でなく、本音だろう。

 とはいえスコアを見れば、3連敗の理由は一目瞭然だ。それは3試合で0得点という攻撃陣の迫力不足。チームの稼ぎ頭だったFW西村拓真が浦和戦で負傷したことも尾を引いている。さらに昨季9得点の藤尾翔太、8得点のオ・セフンがまだ無得点というデータはちょっとしたミステリーだ。

 神戸戦は岡村大八のオウンゴール、湘南戦はドレシェヴィッチの失点につながるボールロストと、失点に直結するDFのミスが出た。しかし無得点では、DFがどれだけ頑張っても勝ち点3は取れない。

「魔法のトレーニングはない」

黒田監督は昌子源主将(左)とともに町田の躍進を支えてきた 【(C)J.LEAGUE】

 湘南戦を終えた相馬勇紀はこう口にしていた。

「イボ(ドレシェヴィッチ)のミスがフォーカスされがちですけど、3試合で攻撃陣はゼロ得点です。ケガ人が出て人が変わっていく中でも、攻撃陣が奮起して点を取らなければいけません。特に前半は多くのチャンスを作れていました。『攻撃陣のせい』と言ったらあれだけど、そちらに重きを置かなければいけないのかなと思います」

 黒田監督はこう述べていた。

「『入るときもあれば、入らないときもある』ということに尽きると思いますが、そこに決め切れる選手がいるかどうかで、他クラブとの顕著な違いも出ているのは間違いありません。そこは日頃のトレーニングの中で、リアリティを持って突き詰めていく“しか”できません。チャンスで決め切らなければ勝てないことに言及し、そこに個人個人が矢印を向けて、切磋琢磨していくしかないのです。魔法のトレーニングはないので、地道にやっていくしかないかありません」

 相手に圧倒された3連敗ならば、チームとして戦術的に大きなテコ入れをするべきだろう。

 ただ町田は昨季の後半戦で浮上した課題を受けて、今季は布陣とスタイルにアレンジを加えている。良くも悪くもまだチーム作りの「過程」で、このタイミングで時計の針を後戻しすることが最適解かどうか疑わしい。

 選手のクオリティ、連携、コンディション、勝負のアヤといった要素が結果を左右する中で、すべてを一気に解決する“魔法”はない。残り26節に向けて「地道にやっていく」姿勢は確かに必要だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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