河村勇輝・独占インタビュー NBA挑戦1年目のシーズンを「60点」と辛めに自己採点した根拠とは?

杉浦大介

世界中の小柄な選手に夢を与えたい

グリズリーズ傘下のハッスルで活躍し、ファン投票1位でGリーグオールスターにも出場した。自身が評価を勝ち取ることで、世界中の小柄な選手に夢を与えたいと語る 【USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

──今シーズンで一番印象深いゲーム、場面は?

 やはりNBAでの最初のゲーム(ロケッツ戦)ですかね。NBAのコートに立った瞬間はすごく不思議な感覚でした。まさか自分がここに立てるなんて想像もしていなかったので。これまで僕を支えてきてくださった人たち、指導者の方、家族、ファンの皆さん、チームメイトへの感謝の気持ちも湧いてきましたね。

──親友の富永啓生選手(Gリーグのインディアナ・マッドアンツ所属)と一緒に出場したGリーグのオールスターも楽しい舞台でしたね。

 あれもすごくいい思い出ですし、富永とは今でもほぼ毎日のように連絡を取り合っています。彼もまた常にNBA入りを目標にしていると思うので、これからも一緒にやっていくのが楽しみです。

──富永選手とはかなり頻繁に食事に行っていますよね?

 そうですね。ただシーズン中は対戦もなかったですし、会ったのはサンフランシスコでのオールスター期間中とフロリダでのGリーグショウケースのときだけですよ。その間はずっと一緒に過ごして、ご飯も食べに行っていました。

──早くもメンフィスのファンの間で人気選手になり、同時にメディア、関係者からも愛される存在になりました。そういった部分もプロとして大事だという認識はあるのでしょうか?

 いろんな方に注目していただけるのはありがたいことです。NBAで一番身長の低い選手である僕がここでやれることを証明することで、日本だけでなく、世界中の小柄な選手たちに「NBAでもプレーできるかもしれない」という夢、目標を持ってもらえたら嬉しいなと思っています。SNSが発達した今は、世界中のバスケットボーラーがさまざまな情報をキャッチできる時代。だからこそ、プレーでしっかりと結果を残せたときにメディアの方に伝えてもらい、活躍している姿を届けることができればと願っています。

──グリズリーズのオーガニゼーションでいうと、一番仲が良くなった選手はマオ(マオジーニャ)・ペレイラですか?

 Gリーグだとマオですし、NBAだとジャ(・モラント)ですかね。でも今ではグリズリーズのみんなと仲良くしていますね。本当にいいチームに来ることができたと日々感じています。

──ロッカールームに日本のお菓子を浸透させたことでも話題になりました。今、ここにある“ポイフル”と“きのこの山”以外にも何か提供したのですか?

 いえ、この2つだけです(笑)。

──グリズリーズは渡邊雄太選手(現千葉ジェッツふなばし)のNBAでの最初の所属チームでもありました。メンフィスは小さな街ですが、アットホームで、アメリカでのキャリアを始めるにはいい場所だったのではないですか?

 そう思います。メンフィスはバスケットボールをプレーするしかやることがないので(笑)。僕が求めていた環境というか、バスケットボールに集中するにはいい街でした。キャリア1年目がメンフィスで良かったです。

──ビールストリートという有名な繁華街がありますが、訪れてみましたか?

 最初にメンフィスに来たときに一度だけ行きました。でもそれ以降は行っていないです。お酒はまったく飲めないですから(笑)

アジアを代表してプレーする責任感

世界最高峰のNBAでプレーする難しさを感じると同時に、一定の手応えも得た1年目だった。まずはサマーリーグでアピールし、NBA本契約をつかむことが当面の目標だ 【Photo by Cole Burston/Getty Images】

──河村選手は日本人4人目のNBAプレーヤーですが、Bリーグ出身者では初めてということで新たな歴史を作りました。Bリーグとは本当にさまざまな点で違いを感じたと思いますが、違うプロリーグに移る中で苦労したことはありますか?

 NBAは世界最高峰のリーグですから、Bリーグに限らず、世界中のどのリーグと比較してもレベルがまったく違うのは当たり前だと思います。バスケットボールをプレーする選手なら誰もが辿り着きたい場所。具体的には1人ひとりの能力というか、長さ、速さ、強さが違うので、そこにアジャストするのが最初にかなり苦労した点ではあります。完全に適応できたかといったらまだまだですが、徐々に向上していると思います。

──Bリーグを代表してプレーしているという気持ちも常に持っていたのですか?

 今、BリーグはNBAに次ぐ世界で2番目のリーグになりたいという目標を掲げていますよね。そんな中でBリーグの選手がNBAに行き、活躍できれば、NBAのスカウトもBリーグ市場に少しずつ目を向けるようになるかもしれません。Bリーグだけではなく、アジアのバスケットボールを考えても、(八村)塁さんしかり、僕しかり、アジアの選手がNBAで活躍することでアジア全体も優れたマーケットとして見られるでしょう。僕としてもそういったところに責任は感じていました。

──古巣の横浜ビー・コルセアーズの動向は気にしていましたか?

 そうですね、やはり気になります。ビーコルの結果は常にチェックしていましたし、ビーコルだけでなく、仲のいい大倉颯太選手(アルバルク東京)の成績なんかもチェックしていました。

──今後に関してですが、今年の夏はNBA挑戦の過程としてサマーリーグへの出場、そして状況が整えば日本代表の一員としてFIBAアジアカップ(今年8月に開催)への出場も頭にあるのでしょうか?

 僕自身の今シーズンはもう終わったので、グリズリーズのプレーオフ中はベンチからチームにエネルギーを送ることに集中していました。それが終わったら、サマーリーグに向けての身体づくりとか、今シーズンの課題だったディフェンス、リング周辺のフィニッシュなどを重点的に鍛えていきたいです。サマーリーグが終われば、その後に日本代表の合宿もあります。アジアカップに向けて気持ちを切り替えてやっていきたいと思っています。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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