アルバルク東京のライアン・ロシターが今季2度目のMVP受賞 チーム全員で大事な3月を乗り越え、リーグ制覇に邁進
ロシター選手は1989年9月14日生の35歳で、206センチ・105キロのセンター兼パワーフォワード。2013年に来日、今年で12シーズン目を迎えた。2019年12月に日本国籍を獲得して「帰化選手」としてプレーするも、もともと個人プレーに走らず、フォア・ザ・チームをモットーとする“サムライプレーヤー”。アルバルク東京在籍4シーズン目にして2回目のバイスキャプテンを務める。
クラブは3月、10試合で8勝2敗の好成績を収めたが、この間の平均スタッツは14.9得点、9.3リバウンド、2.3アシストを記録。特に3月19日の横浜ビー・コルセアーズ戦では、自己最多の15アシストを含むトリプルダブルを達成した。
2018-19シーズン以来のリーグ制覇に突き進むアルバルク東京をリードするロシター選手は自身とチームの状況を見ているのだろうか。早速インタビューをお届けしよう。
フォア・ザ・チームの結果が勝利と好スタッツに結びつく
率直にうれしく思います。ただもちろん自分の受賞なのですが、自分は個人の価値よりも、チームを優先していつもプレーをしています。今回、チームが8勝2敗という好成績を残せて、かつ自分のパフォーマンスで勝利に貢献できたことは非常に喜ばしいです。3月はチームとしても本当に重要な時期でしたので、そのタイミングで8勝2敗という数字を残せたことは非常に良かったと思います。
――確かにチームの調子も良かったのですが、ロシター選手個人の成績を振り返ると、チームトップの平均14.9得点に加え、平均9.3リバウンドはこれもチームトップでした。自身のパフォーマンスについてはいかがですか。
皆さんも自分のプレースタイルをよくご存知だと思いますが、自身のスタッツをあまり気にしません。試合では得点、アシスト、リバウンドといった様々なスタッツがつきますが、3月は得点が通常より伸びた印象がありました。多分、この時期はチームから点を取ることを求められていたのでしょう。ただ、個人のことよりも、レギュラーシーズンで大事な終盤戦を戦っていくために、良いチームパフォーマンスを発揮して、チャンピオンシップ(以下CS)に向けてチームを調整していきたいと思っていました。
――ロシター選手がセルフィッシュではなく、常にチームのことを考えてプレーしているのは知っているのですが、自身のパフォーマンスのことをもう少し聞かせてください。3月19日の横浜ビー・コルセアーズ戦ではBリーグで自己最多となる15アシストを含むトリプルダブルを今シーズン初めて達成しました。そのパフォーマンスについて覚えていることはありますか。
あの試合は自分たちにとってとても重要なゲームでした。3月15日の天皇杯決勝で琉球(ゴールデンキングス)に敗れた直後、チームとしてちょっとしょんぼりしている雰囲気の中で、この試合を迎えたのかもしれません。そこで負けてしまうと引きずることもあったかもしれませんが、そこでチームを何が何でも勝つ方向に向けたいと思っていたことを覚えています。あの試合では横浜BCのディフェンスが自分に寄ってきたので、それを見てしっかりとキックアウトのパスを送る選手を探せました。いいパスが出せて、それをしっかりと沈めてくれたので15本ものアシストになったと思います。
――そもそも15本ものアシストができたということはチームメートの協力があってこそです。天皇杯決勝で敗れたことで、チーム全体としてこの試合へのモチベーションアップが図られ、それで各選手のパフォーマンスが上がったのではないですか。
あのゲームは、個々の選手たちが自信を失っていても不思議ではなかったと思います。ただチームメートは信頼関係をバラつかせることなく、しっかりとステップアップして試合に臨めていたと思います。そういうことも考えつつ消極的にならず、むしろ積極的に攻めてシュートを決めてくれました。いい形で勝利できたと思いました。
一つの試合をピックアップできませんが、この時期は終盤戦に向かう非常に大事なときで、そこでしっかりと勝ち星を重ねる、貯金を増やすことで、CS出場の切符を手に入れられます。それができたからこそ、4月13日に出場を決められました。これからは他のチームの順位や動向を気にせず、自分たちのCSの準備を進められるのですが、3月にしっかり勝てたことが実を結んだからと言えます。
――ただ、3月の2敗というのはファイティングイーグルス名古屋のみに敗れたものです。率直に聞きますが、苦手意識があるのですか?
FE名古屋は手強い相手で、上位のどのチームにも勝てる力を持っています。我々として分が悪く、マッチアップの面でも相性も良くないのかもしれませんが、自分たちはもう今シーズンは対戦しないので、ホッとしている部分はあります(笑)。
最良のコンディションで試合に臨ませてくれるスタッフのサポートに感謝
本当にコンディションは非常にいいです。ただし、日程が密になると疲労もたまりますし、ケガにもこれまで以上の注意が必要になってくると思います。
――ロシター選手のプレーぶりを見ていると、勝つことへのこだわりが非常に大きなほうだと思います。モチベーションを含めて、熱を持ってプレーできることはコンディションの良さに関係しますか?
はい、やはり体のコンディションが良いからこそ、高いモチベーションが生まれると思います。良いコンディションを保てられなければ、メンタルの部分がプラスアルファとなって出てこないですね。自分たちは週もしくは月のスケジュールから逆算して、ウェイトトレーニングやシューティング、チーム練習、ビデオミーティングなどをすべてこなしています。逆算しながら進めていくルーティンを持っていますが、確かに疲れてしまって気分が乗らない日もありますけど、それをやりきっているからこその自分だと思いますし、それをコンスタントに続けることで、それが結果につながると思っています。
――それは若いころからできましたか? 年齢を重ねて、試合経験が豊富になったから、メンタルを安定させることができるのでしょうか?
経験というか、長年における自分の体とのつき合い方もありますから、やれば必ず答えがついてくると思っています。やるべきことをさぼってしまうとツケが回ってくることもわかっているので、疲労が溜まっているときでもやるべきことをやりきれれば、仮に試合に負けたとしてもそこは仕方がないので切り替えられます。逆にサボって負けてしまうと悔しさが募りますので、昔からこのペースでやってきています。
チームのためにたくさんのことをしてくれるスタッフがいます。その中でも、やはりトレーナーの貢献は大きいですね。五十嵐清メディカルトレーナーと佐藤寛輝アスレティックトレーナーがリハビリやゲーム前後で自分の体のケアをしてくれていますので、非常に感謝しています。また、鈴木理惠子マネージャー、武田有人マネージャー、李載勲通訳もいますが、彼らは自分たちが試合に集中しやすいようにしてくれますし、マウスピースやドリンクのセット、常にタオルを定位置に置いてくれるなどの整理整頓をしてくれています。ファンの皆さんの目の届かないところでの仕事がとても大事で、ありがたく思いますね。