週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

「投手・大谷翔平」の現在地をデータで解析 「どんな質の球を投げるのか?」復帰後の目指す姿が見えてきた

丹羽政善

大谷が目指すボールの軌道とは?

アプリでわかった大谷翔平のボールの球質とは? 【Photo by Brandon Sloter/Getty Images】

こちらがそのときのデータである。

※SmartScoutで計測した数値をスクリーンショットしたもの 【筆者提供】

 変化量の単位をセンチに直し、今年のメジャーリーグ平均、2023年の大谷の平均と比較してみた(表2)。

表2:軌道データの比較 【参照:Baseball Savant】

 もちろん、1球のサンプルでは、参考程度かもしれないが、回転効率が上がっており、これはキャンプ中に計測したときも同様だった。伴って縦の変化量が大きくなり、メジャーリーグ平均をも上回っている。大谷は、回転効率と縦の変化量を上げることを意識してきたので、狙い通りと言える。

 ちなみに、2021年以降の回転効率と縦横の変化量の推移は、以下の通り(表3)。

表3:大谷の回転効率、変化量の変化(2021〜) 【参照:Baseball Savant】

 縦の変化量の変化は、2023年に比べて9.3センチ大きくなっている。ボール1個分以上なので、相手にしてみれば、以前対戦したときのイメージで大谷の4シームを捉えにいった場合、ボールが“浮く”と錯覚するのではないか。横の変化量が倍近いので、その意味でも、相手の予測を裏切る。

 もちろん、打者と対戦するようになって球質がさらに変化する可能性があるが、現時点では大谷が目指す方向に軌道が改善されている。

 ところでSmartScoutは、軌道データの計測において画期的なデバイスだ。これまで、正確な計測にはそれなりの初期投資が必要で、専門のトレーンング施設などへ行く必要もあったが、もはやスマホでビデオ撮影するのと同じ感覚。学生が気軽に利用し、データへの理解も深まるなら、野球界全体の底上げも期待できる。

 こんなデータがあるのか。ならば、こんな利用の仕方もあるのではないか。広く浸透するということは、異なる発想からのアプローチも期待できる。“データでまだ出ていない”の先もまた、見えてくるのかもしれない。

 なお、ノーウェアによると、アプリが一般に公開されるのは、今年夏ごろになるそうだ。

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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